
ジュネーヴ:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は26日、ハマスが10月7日に実行したイスラエルへの攻撃に複数の職員が関与した疑いがあるとして調査に着手し、これらの職員を解雇したと発表した。
「イスラエル当局から、複数のUNRWA職員が10月7日のおぞましい攻撃に関与した疑いがあるとの情報提供を受けた」と、UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は述べた。
「当機関の人道支援提供の機能を守るため、私は即座に当該職員との契約を解消する決定を下し、滞りなく真実を明らかにするために調査に着手した」
ラザリーニ氏は、攻撃に関与したとされる職員の人数や、どのような形での関与の疑いがあるのかを明かさなかった。ただし同氏は、「テロ行為に関与したUNRWA職員は例外なく」、刑事訴追という形を含め行為の責任を負うとした。
UNRWAの報道官は、この件についてこれ以上の情報を公表していない。
イスラエル政府のエイロン・レビー報道官は、国際司法裁判所がイスラエルに対し、パレスチナ人へのジェノサイド行為の防止とガザ地区における民間人救援の努力を命じたことに世界の注目が集まっているタイミングで、UNRWAがこの件を発表したことを批判した。
「ほかの日であれば、この件は大きく報道されたでしょう。イスラエルは国連職員がハマスと共謀した証拠を提出したのです」と、レビー氏はXに投稿した。
国連事務総長が「震撼」
アントニオ・グテーレス国連事務総長はUNRWA職員の容疑について報告を受けたと、報道官は述べた。
「事務総長はこの知らせに震撼しています」と、ステファン・ドゥジャリク報道官は述べた。
ドゥジャリク氏はさらに、事務総長はラザリーニ氏に対し、10月7日の攻撃への関与あるいは幇助が判明したUNRWA職員全員を即座に解雇し、刑事訴追を担当する当局に引き渡すよう要請したと述べた。
ドゥジャリク氏は、「緊急かつ包括的なUNRWAの独立監査をおこなう予定」であることを明かした。
UNRWAの2022年の主要支援国は米国、ドイツ、EUなどであり、同機関は繰り返し、ガザの人々に人道支援を届ける能力が崩壊寸前にあると訴えてきた。
米国務省は容疑に対する深刻な懸念を表明するとともに、これらは12人のUNRWA職員に関するものだとした。米国は問題の追及が進むまでUNRWAへの資金拠出を停止するとしている。
「国務省はUNRWAへの追加の資金提供を一時的に停止しており、これらの容疑について精査し、国連が適切な対応を取るのを待つ予定です」と、マシュー・ミラー報道官は述べた。
EUで外交政策を担当するジョセップ・ボレル上級代表は、「完全かつ包括的な調査の結果に基づいて、今後の対応を検討する」と述べた。
1949年の第1次中東戦争のあとに設立されたUNRWAは、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区、ヨルダン、シリア、レバノンに居住するパレスチナ人に学校教育、基礎医療、人道支援を提供している。
イスラエル当局はベンヤミン・ネタニヤフ首相を筆頭に、反イスラエル感情を煽っているとしてUNRWAを非難するが、同機関は否定している。
UNRWAは、イスラエルの空爆と地上攻撃から逃れてきた人々に支援の手を差し伸べ、施設に避難民を受け入れてきた。イスラエルは10月7日の奇襲攻撃で1200人が殺害され、240人が人質に取られて以降、攻勢を続けている。
イスラエルの攻撃により、人口稠密なガザ地区は荒廃し、ガザ保健省によれば2万6000人以上が死亡した。
ロイター