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「戦場の街」と化したハーン・ユーニス、激しい戦闘続く

イスラエルの地上作戦によりハーン・ユーニスを追われ、車でラファに到着したパレスチナ人たち。2024年1月26日。(Reuters)
イスラエルの地上作戦によりハーン・ユーニスを追われ、車でラファに到着したパレスチナ人たち。2024年1月26日。(Reuters)
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28 Jan 2024 12:01:16 GMT9
28 Jan 2024 12:01:16 GMT9
  • 現在、ハーン・ユーニスはイスラエル軍とハマスの衝突の主戦場となっている

パレスチナ領ガザ地区:27日、ガザ地区のハーン・ユーニスの街で激しい戦闘が繰り広げられた。この街は現在、イスラエル軍が武装勢力ハマスを標的に続けている攻撃の主な舞台となっている。

国連国際司法裁判所の暫定措置の翌日も、戦闘が止む気配は見られなかった。ハーグの同裁判所は、イスラエルに紛争におけるジェノサイド行為を避けるよう命じたが、停戦の呼びかけには至らなかった。

イスラエルと国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の間には緊張が走っている。UNRWAの複数の職員が10月7日のハマスによる襲撃に関与したとイスラエルが告発したことを受け、主要な資金提供国のいくつかがUNRWAへの支援を停止した。

イスラエル・カッツ外相は27日、ガザ紛争史上もっとも多くの死傷者を出すこととなった今回の衝突のあと、イスラエルはガザ地区に数万人の職員を抱えるUNRWAが支援活動に「参加しない」ことを望むと表明した。

ハーン・ユーニスの市民が置かれた危機への懸念は高まる一方だ。ガザ地区南部のこの街は、ハマスのガザ地区最高幹部で、10月7日の攻撃の首謀者とされるヤヒヤ・シンワルの根拠地でもある。

目撃者たちは27日の激しい市街戦について語る。ハマスが支配するガザ地区の保健省は、「夜を徹して実行された虐殺により、135人の殉教者が病院に収容された」と発表した。

ハマス政府の報道官は、難民キャンプとナセル病院を標的とした「戦車による大規模砲撃が朝から続いている」と述べた。

ガザ地区市民防衛隊のマフムード・バサル報道官は、子どもたちを含む数万人が降り続く冷たい雨のなか夜をしのいでいると語った。

悪天候により「感染症の拡大」のおそれがあり、これにより「ガザ地区の200万人の避難民が陥っている人道危機はさらに悪化」しつつあると、彼は述べた。

避難民女性のひとりであるスハイラ・アスフルさんは、豪雨のために一家はみな眠れなかったと話し、「今夜をどう乗り切るか、どこで眠るかもわかりません」と語った。

国際司法裁判所は、大いに注目されていた26日の司法判断のなかでイスラエルに対し、ガザ地区におけるジェノサイド行為を回避し、同地区への人道支援物資の輸送を認めるよう命じた。ガザ地区は約4カ月にわたり包囲され、容赦ない攻撃にさらされている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訴訟を「言語道断」と拒絶する一方、ガザ地区のハマス幹部はこれを歓迎し、「イスラエルを孤立させ、ガザ地区での犯罪を暴くことに資する」ものであるとした。

今回の暫定措置は、長年にわたりパレスチナの主張を支持してきた南アフリカによる緊急提訴に基づくものであり、ジェノサイドが実行されたかどうかの総合的判断には数年を要する可能性がある。

42歳のガザ地区の避難民女性、マハ・ヤシンさんは、「イスラエルが一線を越えたことを世界が指摘するのは、これが初めてです」と語った。

「この4カ月、イスラエルがガザ地区のわたしたちにしてきた行為は、歴史上類を見ないものです」

イスラエルは、10月7日にハマスが未曾有の越境攻撃を実行したあと、即座に軍事作戦を開始した。イスラエル政府のデータをAFPが集計したものによると、同日のハマスの攻撃では約1140人が死亡し、犠牲者のほとんどは民間人だった。

ハマス戦闘員はさらに約250人の人質を拉致し、イスラエルによれば、このうち約132人がまだガザ地区に残されている。このなかには少なくとも28人の人質の遺体も含まれる。

ハマス壊滅を掲げるイスラエル軍の攻撃により、ガザ保健省によれば少なくとも2万6257人が死亡し、犠牲者の約70%は女性と子どもだった。

イスラエル軍によると、ガザ地区の地上作戦の開始以来、少なくとも220人の兵士が死亡した。

人道危機が拡大するなか、国連の推定によれば170万人のパレスチナ人が戦争により避難を強いられ、南部エジプト国境の街ラファに身を寄せる。

ナセル病院は包囲されたハーン・ユーニスの街で最大の病院だが、国境なき医師団によれば、手術設備は「ないに等しい」という。

国境なき医師団は、同病院の医療サービスは「崩壊」しており、わずかに残った職員らは「きわめて乏しい医療物資での処置を強いられており、大量の負傷者が搬送される事態にはとても対応できない」という。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長によれば、周辺地区で戦闘が続くナセル病院には350人の患者と5000人の避難民が残されている。

パレスチナ赤新月社は、ハーン・ユーニスで稼働を続けている数少ない別の医療施設であるアルアマル病院がイスラエルの戦車による砲撃を受け、また「激しい銃撃戦により包囲されている」と述べた。

「ガザにはもはや医療システムが存在しない」と、国境なき医師団は訴えた。

ナセル病院に残された300〜500人の患者たちは、「開放創、爆発による裂傷、骨折、熱傷などの戦争関連のけが」を負っている。

イスラエル軍は、ハマスがガザ地区の病院の地下にトンネルを掘り、医療施設を司令中枢として利用していると非難する。

今週、イスラエルのメイライ・エイロン・シャハール在ジュネーヴ国連大使は、WHOはイスラエルが提示したハマスがガザ地区の病院を「軍事利用」していることを示す証拠を無視することで、ハマスと共謀していると非難した。

テドロス事務局長はイスラエルの主張を否定し、こうした批判は「脅かされている人々を命がけで支援する職員たちを危険にさらす」ものだとした。

イスラエルとUNRWAの関係はますます険悪なものになっている。UNRWAによれば、イスラエルは24日にハーン・ユーニスにある避難所のひとつを戦車で砲撃し、この攻撃で13人が死亡した。

UNRWAは26日、イスラエルの告発により10月7日の攻撃に関与したとされた複数の職員を解雇した。

この告発により、米国、カナダ、オーストラリア、イタリアがUNRWAへの資金提供の一時停止に踏み切った。

イスラエルは27日、戦後のガザでのUNRWAの活動を認めない方針を示した。ハマスは国連や国際機関に対し、イスラエルの「脅しに屈しない」よう呼びかけた。

救援物資輸送の拡大と停戦を求める外交努力は続いている。これまでの成果は、昨年11月の1週間の休戦と、ハマスによる数十人の人質解放、イスラエルによるパレスチナ人捕虜の解放だ。

治安当局によれば、CIAのウィリアム・バーンズ長官が数日中にパリを訪れ、イスラエルとエジプトの情報局長、およびカタール首相と会談し、停戦に向けた議論をおこなう予定だ。

国連安保理は31日に緊急会合を開催し、国際司法裁判所の暫定措置について議論する。

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