


ロンドン:西側の援助国が、ガザ地区内の国連主要援助提供機関に対する資金提供を再開しなければ、このパレスチナの飛び地における人道支援は2月末までに「崩壊」する可能性があると、当局者は警告している。
ドイツ、英国、米国をはじめとする、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の主要援助国数か国は、ハマス主導の10月7日の攻撃に参加した疑いで同機関職員12人に対する内部調査が開始されたことを受け、資金提供を一時停止した。
さらに悪いことに、ハマスがガザ地区に入る援助物資を積んだトラックの半分以上を乗っ取っているとのイスラエル情報機関の報告を受けて、イスラエル戦時内閣は、ガザ地区への搬入が許される援助物資のさらなる削減を検討していると伝えられている。
これに加えて、人質となっている複数のイスラエル人の家族が、イスラエルとガザ地区の間にあるケレム・シャロム国境検問所で毎日抗議活動を行っており、親族が拘束され続ける限り、ガザ地区への援助物資の搬入は許すなと要求している。
元英国議会議員で保守中東評議会のシャーロット・レスリー議長は、UNRWAへの資金提供停止を非難し、そのような決定について「非常に深刻な懸念」を抱いていると述べた。
「10月7日のテロ攻撃へのUNRWA職員の関与について、証拠に基づく重大な疑惑がある場合、それは適切に調査され、適切な措置を講じなければならない」とレスリー議長はアラブニュースに話し、次のように続けた。
「しかし、それは、UNRWAだけが提供できる基本的な人道的ケアを、何千人もの絶望の淵にある罪のないガザ地区の人々から奪うことを正当化するものではない。」
UNRWAへの資金提供の停止は「人道的大惨事」をもたらすだけだというレスリー議長の懸念に同調し、アクションエイドの広報担当者はアラブニュースに対し、西側諸国の動きは「見境がなく」、ガザ地区の200万人以上の避難民に対する事実上の「死刑宣告」であると語った。
オックスファムの広報担当者は、資金提供の「突然かつ恣意的な停止」により、ガザ地区への主要な援助ライフラインが断たれたとアラブニュースに語った。
この広報担当者は、「告発に対する適切な調査が行われる前に、ガザ地区にいる職員1万3,000人のうちの個人12人に対する疑惑に基づいて機関全体に制裁を加えるのは、極めて無謀で無責任だ」と述べた。
「私たちが必要としているのは、ガザ地区における人道支援の拡大であり、子どもたちが飢え、病人に薬が届かないこの危機的な時期に、命をつなぐ支援を縮小することではない。」
UNRWAにとってこれまでで最大の単独資金援助国である米国は、2022年を通じて同救済機関の活動に約3億4,300万ドルを注ぎ込んだ。ドイツは同期間で米国に次に多い2億200万ドルを拠出した。これに対し、英国の寄付は2,100万ポンドであった。
米国はUNRWAへのさらなる支払いを停止しているものの、国務省はUNRWAが活動を継続することを望んでいると述べた。それでもなお、国務省のマシュー・ミラー報道官は、UNRWAへの最大の援助国である米国としては、国連には「この問題を真剣に受け止めて、調査を行い、悪事に関与したことが判明した者には責任を確実にとらせる」ようにしてもらいたいと話した。
UNRWAは、10月7日の攻撃に関与した疑いのある職員9人を解雇するとともに、イスラエルから証拠を受け取った後に調査を開始したと発表した。
この証拠はUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長に提出された。同日、国連の最高司法機関である国際司法裁判所(ICJ)は、ジェノサイドを防ぐための一連の措置の一環として、ガザ地区への搬入を認める援助物資の量を増やすようイスラエルに命じた。
その後、イスラエルは6人のUNRWA職員が10月7日にイスラエルに侵入したハマス主導の作戦に参加し、うち4人がイスラエル人の誘拐に関与したと主張している。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、UNRWA職員が関与した疑いについて、その行為を「忌まわしい」と述べつつも、援助国に対し同機関への資金提供の「継続を保証する」よう訴え、少数の職員の行為に基づいて「UNRWAのために働く数万人」に罰を与えないよう求めた。
米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使は、疑惑に対する調査を歓迎すると同時に、米国政府は「根本的な変化」を確認してから資金提供を再開する必要があると語った。
UNRWAの報道官は、2大援助国からの資金提供が直ちに再開されなければ、同機関の運営は2月以降継続できなくなると警告した。
今回の疑惑は、UNRWAの信用を失墜させようとする長い歴史の中で、一番直近のものとなる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナ難民が自身の難民認定を子どもたちに引き継ぐことを許可し、それによって「帰還の権利」を永続させているUNRWAのやり方を終わらせることに特に熱心である。イスラエル当局者らは、このやり方によってパレスチナ難民が新たなコミュニティーに完全に溶け込むのを妨げることになり、紛争を存続させていると主張する。
ネタニヤフ首相は内部調査の効果に疑問を投げかけ、UNRWAについては、ハマスに「穴をあけられた」機関というレッテルを貼った。
「国際社会と国連自体が、UNRWAの使命を終えなければならないことを理解する時期が来たと思う」と同首相は水曜日に国連大使の代表団に語った。
「UNRWAには完全にハマスが入り込んでいる。UNRWAはハマスのために尽くしており、学校をはじめ、その他多くのことで力になってきた。私がこのようなことを非常に遺憾に思うのは、援助を提供する客観的かつ建設的な機関が存在することを我々は期待していたからだ。」
「いま、ガザではそのような機関が必要だ。しかし、それはUNRWAではない。UNRWAは援助を行う別の組織に取って代わられる必要がある。」
テルアビブ国家安全保障研究所とミスガフ国家安全保障研究所の上級研究員であるコビ・マイケル教授はアラブニュースに対し、UNRWAへの資金提供の停止は好ましい兆しであり、「正しい方法で援助が行われれば」、ガザの民間人が苦しむことはないだろうと述べた。
「いま、世界はUNRWAがハマスの出先機関にも劣らないことを理解し、認め始めている」と同教授は語った。
マイケル教授は、UNRWA職員の10%がハマスのメンバーであるとする、外国政府と共有されたイスラエル情報機関の報告書に言及し、「UNRWA職員の関与に関する数字に何の疑問も抱いていない」と話した。
そして、「テロに直接的および間接的に関与した職員やスタッフの数ははるかに多い。UNRWAは閉鎖されるべきだ」と付け加えた。
ヨルダン人アナリストのオサマ・アル・シャリフ氏は、イスラエルが国連に証拠を提出したタイミングを考えると、これはUNRWAを閉鎖させようとするネタニヤフ首相のキャンペーンの継続に他ならないと述べた。
同氏はアラブニュースに対し、これは国際社会に「そうだと思い込ませる」ためのイスラエル政府の取り組みの表れでもあると語った。
「UNRWAをめぐる疑惑は新しいものではなく、これまでにも使われてきた手であるが、今回はガザ地区でイスラエルが行っているジェノサイドの信ぴょう性を認めた、歴史的なICJの裁定から注意をそらすために利用されている」とアル・シャリフ氏は話した。
「そして、UNRWA廃止論の背後にある主な目的は、イスラエルが常に拒否してきたパレスチナ難民の帰還権を葬ることである。」
国際コミュニティー機構のガーション・バスキン中東局長は、戦後UNRWAに取って代わる米国とイスラエルの共同計画の噂を否定しなかった一方で、英国、米国、その他国々が二国家解決の下でパレスチナ国家を認める必要性についてますます声を上げていることから、そのような計画は無意味に終わる可能性があると述べた。
同局長はアラブニュースに対し、パレスチナ国家が西側主要国によって認められれば、専門の難民機関は不要になるだろうと語った。
「パレスチナ国家内でパレスチナ難民になることはできないので、パレスチナ国家が認められれば、パレスチナ自体が公的サービスとUNRWAが現在引き受けているすべての職務に対して、政府としての責任を引き継がなければならないだろう」と同局長は述べた。
「その時点で、UNRWAはイスラエル国家とパレスチナ国家の間の交渉の争点となる。」
バスキン局長は、10月の紛争勃発以降、ハマスが援助物資を盗んでいるとの疑惑に対するイスラエルの懸念を認識しつつも、それでもイスラエルがICJの仮決定に基づく義務を果たし、ガザ地区への援助物資搬入の拡大を促進することは道理にかなっていると話した。
そして、「イスラエル軍がガザ地区に援助物資を持ち込み、物資が横取りされないように、イスラエル軍が保護しながら届ければいいというのが私自身の提案だ」と語った。
「そしてその援助は、イスラエルが人々に安全地帯であると告げている地域に届けられるべきだ。イスラエルでもこの可能性について話題になり始めているので、もしかしたら実現するかもしれない。」