
ハーン・ユーニス:2階建ての自宅の瓦礫の中で、11歳のモハメッド少年は壊れたバケツに屋根の破片を集め、それを砂利にたたきつける。
「私たちは家を建てるためではなく、墓石や墓を作るために瓦礫を集めている。不幸からまた不幸へと」と、4月にイスラエル軍の空爆で被害を受けた南部の都市ハーン・ユーニスにある自宅から回収した金属を切り刻みながら、父親で元建設作業員のジハード・シャマリさん(42)は言う。
仕事はきつく、時には悲惨だ。3月には、家事をしていた際に殺されたシャマリさんの息子の一人、イスマイル君の墓を家族で建てた。
しかし、それはイスラエル軍の軍事作戦で残された瓦礫に対処するための取り組みが形になり始めた、ほんの小さな一部である。
国連の推定では、残骸の量は4200万トンを超え、その中には、粉々になった建造物や倒壊した建物も含まれる。
これは、2008年から1年前の戦争開始までにガザ地区に蓄積された瓦礫の量の14倍、2016年から17年のイラクのモスルでの戦闘で残された瓦礫の量の5倍以上であると国連は述べた。
積み上げると、エジプト最大のギザの大ピラミッドの11倍の量になる。そして、瓦礫は日々増え続けている。
国連は、ガザ当局が瓦礫の処理方法を検討しているため、支援しようとしていると、国連高官3人が述べた。
国連主導の瓦礫管理作業部会は、今月から道路脇の瓦礫撤去を開始するため、パレスチナ当局とハーン・ユーニスおよびガザ中部の都市デイル・エル・バラでパイロットプロジェクトを計画している。
「課題は非常に大きい」と、作業部会の共同議長を務める国連開発計画(UNDP)のガザ事務所代表のアレッサンドロ・ムラキック氏は述べた。「大規模な作業になるだろうが、同時に今すぐに始めることが重要だ」
イスラエル軍は、ハマスの戦闘員が民間人に紛れており、民間人に被害を与えないよう努めつつ、彼らがどこに現れても攻撃すると述べた。
ガザ地区の瓦礫について尋ねられたイスラエル軍のCOGATは、廃棄物処理の改善を目指しており、国連と協力してその取り組みを拡大していくと述べた。ムラキック氏は、イスラエルとの調整は良好だが、今後の計画に関する詳細な議論はまだ行われていないと述べた。
廃墟の中のテント
イスラエルは、ハマス武装勢力が昨年10月7日にイスラエルに侵入し、約1,200人のイスラエル人を殺害し、250人以上の人質を取ったことを受け、攻撃を開始した。
パレスチナ保健当局によると、紛争の1年で、約4万2,000人のパレスチナ人が死亡した。
現場では、かつては交通量の多い道路であった埃っぽい狭い小道を歩行者やロバの荷車が通るそのすぐ脇に、瓦礫が山積みになっている。
「誰がここに来て瓦礫を片付けてくれるというのか? 誰も来てくれない。だから自分たちでやるしかない」と、タクシー運転手のユスリー・アブ・シャバブ氏は、ハーン・ユーニスの自宅からテントを張るのに十分な瓦礫を片付けた後で語った。
国連の衛星データによると、ガザ地区の戦前の建造物の3分の2以上、16万3000棟以上が損傷または全壊した。そのうちの3分の1ほどが高層ビルであった。
2014年のガザ地区での7週間にわたる戦争の後、UNDPとそのパートナーは、現在全体の7%にあたる300万トンの瓦礫を撤去した。ムラキック氏は、1000万トンの瓦礫撤去には2億8000万ドルの費用がかかるという未発表の予備見積もりを引用し、戦争が今終われば、約12億ドルになると示唆した。
4月の国連の推定では、瓦礫の撤去には14年を要するだろうとされている。
隠された遺体
瓦礫の中には回収されていない遺体や、パレスチナ保健省によると1万体にも及ぶ遺体、そして不発弾が含まれているとムラキック氏は言う。
赤十字国際委員会は、その脅威は「広範囲に及ぶ」と述べ、国連当局者は瓦礫の一部が大きな危険をもたらしていると述べている。
ハーン・ユーニス在住のニザール・ズラブさんは、不安定な角度で傾いた屋根だけが残った家に息子と住んでいる。
国連環境計画は、ガザ地区の8つの難民キャンプの評価を引用し、推定230万トンの瓦礫が汚染されている可能性があると述べた。
アスベスト繊維は、吸引すると喉頭がん、卵巣がん、肺がんを引き起こす可能性がある。
世界保健機関(WHO)は、ガザ地区で過去1年間に急性呼吸器感染症が約100万件発生したことを記録しているが、そのうちどれだけが粉塵に関連しているのかについては言及していない。
WHOのビスマ・アクバル報道官は、粉塵は「重大な懸念事項」であり、水や土壌を汚染し、肺疾患を引き起こす可能性があると述べた。
医師たちは、今後数十年間に金属の漏出による癌や先天性欠損症の増加を懸念している。国連環境計画(UNEP)の報道官は、砂蠅やヘビやサソリの咬傷、皮膚感染症が懸念されると述べた。
土地と設備の不足
ガザ地区の瓦礫は、以前は港湾建設に役立てられた。国連は現在、その一部を道路網や海岸線の強化に再利用することを望んでいる。
ガザ地区は、戦前の人口230万人が長さ45キロメートル、幅10キロメートルの地域に密集しており、国連開発計画(UNDP)によると、瓦礫の処理に必要なスペースが不足している。
埋立地は現在イスラエル軍の管轄区域にある。イスラエルのCOGATは、そこは制限区域ではあるが、立ち入りは許可されると述べた。
ムラキック氏によると、リサイクルの増加は、産業用粉砕機などの設備への資金調達を増やすことを意味する。彼らはイスラエルが管理する通過地点から入らなければならない。
政府当局者は、イスラエルの規制のよる、燃料と機械の不足により、瓦礫撤去作業が遅れていると報告している。UNEPの広報担当者は、承認プロセスが長引いていることが「大きな障害」となっていると述べた。
イスラエルは、機械の使用を制限しているという非難について、特にコメントしなかった。
UNEPは、瓦礫の撤去には所有者の許可が必要だと述べているが、破壊の規模は所有権の境界を曖昧にし、一部の財産記録は戦争中に失われている。
ムラキック氏によると、8月12日にヨルダン川西岸地区でパレスチナ政府が主催した会議以降、複数の寄付者が支援に興味を示しているという。氏名は明かさなかった。
国連関係者は、現在進行中の取り組みを損なわないよう匿名を条件に、「政治的な解決策がなければ、ガザの再建に投資すべきかどうか、誰もが懸念している」と述べた。
ロイター