
アンマン:土曜日、エルサレムの聖墳墓教会で伝統的な儀式「聖火の奇跡」が執り行われた。参加する信徒は毎年数千人を数えるが、今年、その姿は見られなかった。
復活の主日(Easter Sunday)前日の土曜日に行われるこの儀式を、正教会の信徒は「奇跡」と呼んでいる。
今年はギリシャ正教会とアルメニア正教会の総主教が4人の聖職者を伴い出席したほか、コプト正教会とシリア正教会の大主教らも参加していた。また教会には2人のイスラエル警官の姿もあった。
パレスチナ大統領直下高等評議会で教会事務を担当するイッサ・カシシーエ駐バチカン大使は、Arab Newsの取材に応じ、「コロナウイルスによる都市封鎖で困難な状況となっている中、儀式が滞りなく進行するようありとあらゆる努力を尽くした。我々パレスチナ高等評議会は、典礼と伝統を遵守することを望み、全ての行事を信徒の参加無しで進めなければならなかった。しかし、パレスチナTVを始めとする各報道機関の映像中継を通じ、皆が儀式を視聴出来たのは喜ばしいことだ」と述べた。
また、「エルサレム旧市街の石畳通りは閑散としており、人々はパンデミックによる自宅待機の指示を守って玄関を閉ざしている。とても悲しい光景だ」と付け加えた。
聖墳墓教会の内部にある神殿は、十字架に架けられた後、イエスが埋葬され蘇ったとされる場所に建っている。儀式では、その中に入った聖職者らが、神のメッセージだと信じられている火をろうそくに灯して出て来る。この火は他のろうそくやランタンに移され、世界中の信徒の下に届けられる。
サバスティーヤ教区のアタッラー・ハナ―大主教はArab Newsの取材に対し、「ほんのわずかな聖職者のグループしか儀式に参加できなかったのは悲しいことだ」と述べ、「この聖なる日に、聖墳墓教会ががらんとしているのを見て残念に思います。キリスト教徒にとって、復活祭はとても大きな祭日なのです。しかし今年の復活祭は、信徒不在の悲しみと、主の復活を祝う喜びとが入り混じったものになっています」と話した。
聖火は午後2時ごろ教会を出発し、警官の護衛を受けた司祭がベン・グリオン空港に届けた。
空港には、旅客を乗せておらず、聖火運搬のために用意された複数の飛行機が到着し、聖火を乗せて10か国に向けて出発した。
取材に応じたヨルダン総主教座下のクリストフォロス・アッタラー主教は、自ら聖火を受け取りに行くと話した。
「エルサレムから聖火を携え帰ってきた司祭に会うため、キング・フセイン橋に向かっています」。聖火を欲しがるシリアとレバノンの信徒から助けを求められたが、ヨルダンで外出禁止令が出ている中、行動に制限があり望みを叶えられなかったという。この信徒らは、キプロス経由で聖火を受け取ることに決めたそうだ。
カシシーエ大使によれば、ラマッラーとベツレヘムの教会に聖火を届ける役目は、正教会のボーイスカウトたちに託されたという。