
ナージヤー・フサリー
【ベイルート】レバノンのムハンマド・ファフミー内相は、金曜礼拝に向けてイスラム教のモスク、日曜ミサに向けてキリスト教教会の再開を許可した。
ただし、各モスク・教会の収容人数の30%を超過しない数に限るとし、さらに衛生状態と予防措置の遵守も求められる。モスクと教会は3月15日に閉鎖されていた。
新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行を封じ込めるためにレバノン政府が講じた巣ごもり政策を緩和する施策の一環となる。が、レバノンでは今も、最近になって帰国した者から新たな感染者が出ており、また、感染者と接触したとして隔離された者からも新たな感染者が出ている。
保健省によれば新たに9人の感染者が報告されており、うち7人は国外からウイルスをもたらした。さらに同省は、ナイジェリア発ベイルート行きの航空便の旅客から25人の感染者が確認されたとし、レバノンの新型コロナ感染者総数は775人となった。
ミシェル・アウン大統領は語る。「新型コロナによりレバノン経済の動脈はいくつもストップした。また、生産経済を顧みなかった数々の政策の結果、目下われわれの窮している景気の減速にも拍車がかかった。
「またこのウイルスのため、失業率・貧困率は増大、物価はいちじるしく高騰、レバノンポンドの為替レートも下落した。税収も落ち込み、社会福祉も荒廃してしまった」
レバノンは、深刻な経済危機から抜け出すため国際通貨基金(IMF)の支援を仰いでいるところだ。
危機的状況にあることは以下のありさまを見れば疑うべくもない。およそ13%の経済規模の縮小。50%を超えた物価上昇率の増大。レバノンポンドの為替レート下落。麻痺状態にある銀行セクター。国民の45%超といういちじるしい貧困率の増大。失業率は35%超。財政赤字・持続不可能な債務も増える一方だ。
6日には大統領宮殿でアウン氏の招請により各党および議会会派の代表をまじえた会議が開かれ、政府の改革案が議論された。なお、会派「未来運動」と「レバノン・カターイブ」は招聘を拒否した。進歩社会党のワリード・ジュンブラート党首とマラダ運動のスライマーン・フランジーヤ党首も参加しなかった。
レバノン軍団のサミール・ジャアジャア党首は、ヒズボラ会派も一堂に会したこの会合に参加した。ジャアジャア氏は、「われわれが野党会派から離脱することはない。が、党によりことへ臨むやり方は違うということだ」と力説した。会議終了後、同党首は「政府がわが国のゴミを一掃することに誠意を示さぬかぎり、わが党の議員が改革案に賛同することはない」とも語った。
6日、レバノン司法当局は偽造・収賄にからむ捜査の一環として発覚した、レバノン電力公社(EDL)が利得目当てで燃料資源に異物を混入させ輸入した疑いで、元エネルギー相のムハンマド・フナイシュ氏、ナダー・ブスターニー氏の両名およびEDL総裁のカマール・アル=ハーイク氏と技師のヤフヤー・マウルード氏の取り調べに着手した。
ブスターニー元エネルギー相は取り調べ後、着任中に燃料に異物が混入したとする解析結果は受け取っていない、とした。フナイシュ元エネルギー相は、「問題は私の後任のエネルギー相6人も更新を認めた燃料輸入元企業と交わされた契約なのではない。異物の混入した燃料が問題なのだ。契約条件に違反した者の責任が問われるべきだ」とした。
司法当局は輸入企業 Sonatrach の代表および石油管理企業の重役、PST社従業員の4名に逮捕令状を発行した。今後取り調べの対象となるとみられているのは、石油施設の管理者、ZRエネルギー社の社主・CEOおよび入札担当者だ。関係者はほぼ、政府部局の内外で特定の政治勢力と結託している。
政府案では危機からの脱却に5年を見込んでいる。政府案の発表にあたりガーズィー・ワズニー財務相は、「次段階では、漸進的かつ入念に柔軟な為替レート政策を採る所存だ」とした。
同財務相は、「改革案では、2019年のGDP比11.3%の財政赤字を2020年には5.3%、2024年には0.7%にまで減らす構えだ。これは、電力改革・年金改革・経常支出の見直しなどといった公共支出の削減、および、無駄を廃し収税を改善し付加価値税を導入し脱税に目を光らせるなど歳入を増やすことで実現する」と語った。
ハッサーン・ディヤーブ首相は別の会合で政府財政案についてアラブ諸国およびその他の国の大使らに概要を説明した。エリザベス・チア米国大使は、「改革案にはまだ再検討の余地がある」とした。詳細については明かさなかった。
サウジアラビア、クウェート、UAEの大使らは会合に参加しなかった。