
イスタンブール:元日産会長カルロス・ゴーンの日本からの劇的な脱出に関与したとして公判中のトルコのジェット機運用会社幹部が、金曜日、ベイルートへの飛行中にゴーンが自身の逃亡劇のハリウッドでの映画化について話していたと法廷で語った。
かつて世界の自動車産業の指導者的立場にあったゴーンは、給与の過少申告と企業資金の私的流用の容疑で2018年終わりに逮捕されたが、本人は否認している。
ルノー・日産・三菱自動車アライアンスの会長職を失脚したゴーンは日本で自宅軟禁下で裁判を待っていたが、昨年12月、幼少期を過ごしたベイルートにイスタンブール経由で脱出した。
トルコのプライベートジェット運用会社MNGの幹部1人と4人のパイロットは、ゴーン逃亡直後の今年1月初めに、移民密輸容疑で拘束されている。同容疑の量刑は最長懲役8年となっている。
容疑者らはコロナウイルス対策の白いオーバーオールの防護服、マスク、手袋を着用し、被告側答弁のために、イスタンブールの裁判所に出廷した。犯罪行為の通報を行わなかった容疑で起訴されている2人の客室乗務員も同法廷に姿を見せた。犯罪看過の量刑は最長1年である。
7人の被告全員がそれぞれの容疑に対して無罪を主張した。
MNGジェットの運営マネージャーで7人の被告の1人であるオカン・コースマンが、ゴーン搭乗の航空機が大阪で離陸する以前から、ゴーンがベイルート行きに乗り換えを行う予定であったことを知っていたと検察は起訴状で述べた。
金曜日の裁判所でのコースマンの答弁は、航空機がイスタンブールに向かって飛行開始後にゴーンが搭乗している旨を電話で知らされただけであり、自身の家族に危害が加えられ得るとの懸念から無理に協力させられたのだというものだった。
コースマンは、フライトの手配を行ったレバノン人ブローカーがベイルートから日産元会長のゴーンが搭乗していることを電話で告げられたと述べた。また、電話でのその会話の背後で「喜びの叫び」が上がるのを聞いたと付け加えた。
「そのブローカーを罵りました。激怒していました」と彼は法廷で述べた。
その後、イスタンブールの空港に到着した航空機を出迎え、ゴーンをベイルート行きに搭乗するよう案内したとコースマンは答弁した。「カルロス(ゴーン)は航空機のコストについて尋ね、それからがこの逃亡劇を映画にしたがっているハリウッドのプロデューサーたちについて語りました」と彼は言った。
ゴーンの弁護士はコメントの求めに未だ応じていない。
金曜日の閉廷時、裁判所は法的手続きを一旦保留し、今まで拘束されてきたコースマンと4人のパイロットの釈放を命じた。
「これまで拘置されていた時間を勘案すると、釈放の決定はもっと早くに下されてもいても良かったはずです。裁判所は釈放の求めに今日ようやく応じました。私たちの依頼人たちの無実を確信しています」とコースマンの弁護人レベント・イルディズはロイターに語った。
自動車業界に衝撃を与えた逃亡劇
検察は、大阪・イスタンブール間のフライト中とその前後、コースマンはパイロットたちとの連絡にWhatsAppというアプリを用いており、「手荷物」や「委託品」といった用語でゴーンについて語っていたと述べた。コースマンは、法廷で、「手荷物」とは日本から取り寄せようとしていた日本酒のことを意味していたと答弁した。
起訴状によれば、コースマンは検察に、レバノン人ブローカーとの間でフライトの料金は175,000米ドルとの合意があり、その金額はMNGジェットの銀行口座に振り込まれたと供述していた。
1月、MNGジェットはコースマンが同社への報告なしに行動に至っており、同社は同社の機材の違法使用について刑事告訴を行ったと述べている。MNGはこの件についてコメントを差し控えている。
パイロットたちは、人数確認のみが求められていたのであり乗客の身元の確認は求められていなかったと供述していることが起訴状に述べられている。
日本政府は、アメリカ合衆国政府に対して、ゴーンの逃亡に加担したとして告訴されている元グリーンベレー隊員とその息子の合計2人のアメリカ市民の引渡しを正式に求めている。
この2人はマサチューセッツで5月に逮捕されている。
ゴーンの逃亡劇は世界の自動車産業に衝撃を与え、ゴーンが主導していたルノー・日産アライアンスを一時的に危うくし、日本の司法制度による監視の強化を促した。
ルノーと日産は共にゴーン後の収益性の回復に苦闘している。ゴーンは、在任中、売り上げの増加と市場シェアの拡大に注力し過ぎていたとルノー、日産両社は述べている。
ロイター