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大惨事から1週間、レバノンはベイルートの犠牲者を追悼する

ベイルートの湾港地区を襲った先週の爆発の間に、死亡した10人の消防士のうちの1人、ラミ・カーキさんの妻は、8月11日のベイルートの消防本部での葬儀で、夫の棺に手を伸ばそうとしている。(AP通信)
ベイルートの湾港地区を襲った先週の爆発の間に、死亡した10人の消防士のうちの1人、ラミ・カーキさんの妻は、8月11日のベイルートの消防本部での葬儀で、夫の棺に手を伸ばそうとしている。(AP通信)
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12 Aug 2020 01:08:10 GMT9
12 Aug 2020 01:08:10 GMT9

ナジア・アルフサリ

ベイルート:レバノンの人々は8月11日、1分間の黙とうを捧げ、1週間前にベイルートの湾港地区を破壊した大規模爆発の犠牲者を悼んだ。黙とうは、レバノンが8月4日に最大の爆発で揺れた時刻、午後6時8分に開始された。

ボランティア、活動家、被害を受けた地域の住民、犠牲者の家族たちはまた、この悲劇に対して、悲しみと怒りを表明して、ベイルートの湾港地区まで行進もした。この悲劇により、多数の人々が死亡し、数千人が負傷した。

とりわけ40人がまだ行方不明となっているベイルートの湾港地区で、被害を受けたり、破壊されたりした建物から、瓦礫を取り除く作業が続いているため、さらに多くの遺体が回収された後、正式な死亡者数は171人にまで増加している。こうした死亡者数には、レバノン軍関係者、市民防衛総局の職員、消防士、サイロ労働者の数も含まれていた。

 

2014年以来、この港の倉庫に保管されていた2,750トンの硝酸アンモニウムが、先週引火し、破裂したことで、この爆発は生じた。この爆発の直前に、溶接工がその倉庫で作業を行っていたことが報じられている。

レバノンの高等救助委員会の事務局長、モハマド・ハイル少将は、この爆発により70,000軒以上の家が破壊されたか、被害を受けたと推定できると述べた。

被害を受けた地区では、救援活動と支援が続いている。多数の非政府組織がベイルートの中心地、殉教者広場で活動している。この災害でホームレスになった人々に、非政府組織は食糧や水を配っている。レバノン中からベイルートにやって来た数百人のボランティアは、ショベルや箒を携え、後片付けの作業を手伝っている。住宅や店舗の破損したガラス片、瓦礫、廃材を取り除いている途中に、怪我をする人々を介抱するために、野外病院が設けられている。

8月11日ベイルートの消防本部で、葬儀中に、消防士たちが同僚のラミ・カーキさんの棺を運んでいる。カーキさんは、ベイルートの湾港地区を襲った先週の爆発で死亡した10人の消防士のうちの1人だ。(AP通信)

「この爆発の2日後からずっと、私たちはここにいて、家が破壊されたり、家具や台所用器具が破損したり、洋服が引き裂かれたりした人々を支援しています。こうしたものは、この人たちの思い出同然のものです」と、ボランティアで、スカウト協会のメンバーでもあるラミさんは語った。「その上、まだまだ先は長いです」

もう1人のボランティア、マフムード・センノさんは次のように語った。「ベイルートが受けた傷を癒すために、私ははるばるバルハから来ました。住民の皆さんが言い続けてくれることがあります。それは、自分たちの様子を見ようとして、やって来る役人は1人もいないが、こんな悲惨な状況の中であっても、若いボランティアたちがいてくれることで、暖かい気分になり、助けられていると感じるということです」

現在のところ、政府や議会のメンバーは1人として、この被災地を敢えて訪れていないが、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)のジョン・バルサ副長官は、爆発により壊滅的になったこの湾港地区とその他の地区を視察するために、初めてレバノンを訪れた。USAIDは人々のニーズを把握するために、この湾港地区の近くにキャンプを設営した。そして、バルサ副長官は短い間だったが、瓦礫や割れたガラス片を取り除く作業を手伝った。レバノンのドロシー・シェー米国大使に伴われ、バルサ副長官は被害を受けた住宅や店舗の所有者とも会った。

党派間の亀裂がある中での政権樹立は、これまで非常に困難を極めてきた。今や国民の不満が高まり、経済危機が壊滅的となり、積極的に首相になろうとする者を見つけることは困難かもしれない。

爆発の1週間後、30人から40人までの行方不明者の捜索活動が続く中、ベイルートの住民はばらばらになったかけらを拾い、困難な事態を修復している。

「私たちの家は破壊され、私たちは誰の助けもなく孤立してしまっています」と、ハリル・ハダッドさんは語った。「ちょうど今、私たちはできる限り家を修理しようとしています。ええと、上手くいけば支援が得られるでしょう。そして、最も重要なことは、上手くいけば、真実が明らかになるだろうということです」

「私たちは(指導者たちの)絞首刑台が設置されるまで、忘れるつもりはありません」と、ある男性はスクリーンに表示された犠牲者の名前をいくつか読み上げた後、8月11日のデモで主張した。

自らの内閣を総辞職すると発表したディアブ首相は、この爆発を地域独特の腐敗のせいにした。この爆発はベイルート史上最大規模のものであり、通貨を暴落させ、金融制度を麻痺させ、物価を急騰させた手が付けられない経済危機を悪化させていた。

「私はこの国のあらゆる局面で、腐敗が根付いていると以前に言いましたが、腐敗はこの国を凌駕していることに気づきました」と、ディアブ首相は述べ、改革を阻止したことで政治エリート層を非難した。

8月11日に開かれた、ベイルートの大規模爆発で亡くなった犠牲者たちの通夜。(ロイター通信)

「アメリカ国民は、レバノンの人々に寄り添います。そして、アメリカ政府はレバノンへの災害支援に1,700万ドルを送ることを約束します」と、バルサ副長官は述べた。レバノンの政府関係者とは誰とも一切会わず、現地のパートナーを通じて、アメリカの支援は国民に直接届けると言って、バルサ副長官はレバノン国民を安心させた。

他の開発においては、この港を修復する取り組みが始まっていた。前任者であるハッサン・コレイテム港湾局長が逮捕された翌日、新たな湾港局長に、バッサム・アルカイシ氏が指名されていたからだ。

国際連合人道問題調整事務所は、湾岸地区のサイロが爆発で破壊されたために、不足した備蓄分を補うために、国際連合世界食糧計画が、50,000トンの小麦をベイルートに送ると発表した。

人々は8月11日、事故現場で犠牲者たちの冥福を祈って集まり、大規模爆発の瞬間を巨大スクリーンで眺めている。(AP通信)

国際連合教育科学文化機関のベイルート事務所は、この爆発により、「70校以上の公立学校、50校以上の私立学校が一部損傷または全壊」したと述べ、このことは、新学期を混乱させ、こうした学校に在籍するレバノン人とレバノン人以外の生徒たち、55,000人以上から、教育の権利を奪うことになるかもしれないと警告した。

ハッサン・ディアブ首相の与党政権は、8月10日に首相が辞職を発表した後、暫定政権となった。11日には、レバノンが直面しているあらゆる課題と危機に、対処することができる新しい効果的な政権の樹立に関して、民意に一致した政治主導力を求める声が高まった。

大統領官邸の情報筋は、次のように述べた。「ミシェル・アウン大統領は、政権の樹立を出来るだけ早く要請していて、新たな首相を指名する目的で、議会で協議する日程を設定するために、側近たちとの協議が進行中です」

2020年8月11日、レバノンのベイルート湾港地区の爆発現場近くでのデモで、参加者たちはレバノンの旗を振っている。(ロイター通信)

この爆発の直後、支援を提供するためにレバノンを訪れた多くのアラブ諸国と諸外国の政府関係者たちの中で、エジプトのサーミフ・シュクリー外務大臣と、ヨルダンのアイマン・アルサファディ外務大臣が、11日にベイルートに到着した。ドイツのハイコ・マース外務大臣は、この爆発で死亡したドイツ大使館の職員の葬儀のために、12日にベイルートに着くはずだ。

10日のディアブ政権の総辞職の後、フランスの外務大臣が「最優先事項は、新政権の樹立です」と、そして「改革しなれば、レバノンは崩壊へと向かうことになるでしょう」と述べた。

10日の夜、レバノンに関する安全保障理事会の委員会で、アントニオ・グテーレス事務総長は、課題に直面しているレバノンを放置しておかないと述べたが、経済改革を達成する必要性も強調した。

ベイルートの湾港地区を襲った先週の爆発の間に、死亡した10人の消防士のうちの1人、ラミ・カーキさんの妻は、8月11日のベイルートの消防本部での葬儀で、夫の棺に手を伸ばそうとしている。(AP通信)

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