
ナージヤー・アル=フサリー
【ベイルート】レバノンでは、新型コロナウイルス感染症患者の急増を受け、ウイルス抑制のため2週間国内をロックダウンすべきとの勧奨が出された。これに対し同国保健相は、レバノンはウイルス禍によりどん底に瀕していると警告した。
17日の1日だけでレバノン国内では新たに500人以上の新規感染者を記録した。同国のハマド・ハサン保健相は、この数字に加え、「診断を受けていない感染者数がさらに2,500人ないし5,000人」いるということだ、と語った。
レバノンの新型コロナ感染者数は、2月21日に初感染者が発見されて以来、累計で9,000人超と飛躍的に増加している。死者数も104人以上を数える。
「レバノンはもはやどん底に近い。(全国民に)予防措置の遵守を求めたい」とハサン保健相は語った。
同省の感染症モニタリングによると、感染源の特定できない感染者数は1,684人に跳ね上がっている。2週間前にはこうした患者数はごく稀だったため、感染源の特定は困難をきたし、管理もしがたくなっているとのことだ。
保健省の医療科学委員会では、新型コロナの感染拡大に対処するため、2週間国内をロックダウンすることを勧奨している。
新規感染者の多くは、8月4日のベイルート港大規模爆発による負傷者数千名の移送にともなう接触の結果だ、とハサン氏は言う。爆発から10日以上経ってから、負傷者や救護隊員らの間で症例が出はじめているという。
今月初め、2,700トン以上の硝酸アンモニウムが同港の積荷保管施設で爆発、この結果家屋やオフィスが多数破壊され、死者・負傷者はすくなくともそれぞれ170人、6,000人を数える。
ベイルート市内にある政府系および民間の病院にある集中治療ベッドは満床となっている、とハサン氏はしている。その一部は先の大規模爆発の負傷者を収容したためだ。ベイルートで非常事態宣言が出されたことを受け、同氏は軍に支援を求め、これまで新型コロナ患者の受け入れをしてこなかった民間病院に対してもこうした患者の受け入れをするよう働きかけてほしいとしている。
どの地域であれ人と人との交わりの機会は少なくない以上、マスクの着用は義務だ、と同氏は力説している。また、「痛ましい爆発事故」の結果、感染症拡大に直接の影響が出てしまったとし、「危機的な問題だ」ともしている。
レバノンでは、医療機関や病院のスタッフらの間で新型コロナの感染者が多数出ていることから、国内の医療サービスの維持も懸念されている。保健省のデータによると、医療従事者の感染者数は407人を超えている。
多くの病院が医師・看護師不足に直面している。隔離中のため勤務に就けない者の代わりを務めようとする未感染の医師・看護師らの存在もこれに加味している。
住民に感染者が出たことから感染拡大を制限する目的で、多くの地方自治体では、ベイルート近郊および南レバノン県、山岳レバノン県、北レバノン県の町村を隔離する決定を出している。
北レバノン県のラムジー・ヌフラー知事はトリポリおよびアル=ミーナーの両市で健康緊急事態宣言を発出した。感染拡大を受け、公共サービス機関では公務に就く者の数を減少させる目的で交代制の勤務態勢としている。
もはや罰金を払うか払わないかなどといった次元を越え、事態は「生きるか死ぬか」の状況だ、とハサン氏は言う。
「もはや事態を軽々にとらえる余地などない。われわれは何も、できないことを国民に求めているわけではない。2週間ロックダウンをおこなえば、医療チームとしても感染者やその接触者を追跡できる。その上で適切にこれらの人々を取り扱い、感染者数の軽減につながれば、各病院でも感染者の収容にゆとりができるというものだ」
空港閉鎖もロックダウンに含まれるのか、と問われたハサン氏は次のように答えている。
「国外入国者の感染者数は千人あたり2人にまで減っており脅威とは言えない。とはいえ、PCR検査で陰性反応が出た者も含め入国者全員に対し1週間の隔離措置を義務づけることが決定した」