
Rawaa Talass
ドバイ:コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの危険性について、シリアに住む人々を啓蒙(もう)するための大規模なキャンペーンの先頭に立っている工学部の学生がいる。
オマール・ボゾ(Omar Bozo)さん24歳は、3月中旬にダマスカスでウイルスについての意識を高め、感染拡大を防ぐために立ち上げられたアクムハ(消毒しよう)活動の原動力となっている。
学生、ボランティア、医師の献身的なチームが24時間体制で活動し、重要な衛生サービスを提供しており、グループのFacebookページ単体で24万人のフォロワーを集めている。
ボゾさんは2014年にサウジアラビアからシリアに移り住み、現在は首都ダマスカスから32キロ離れたアラブ国際大学で情報工学を学んでいる。
ボゾさんが人々を助けようと思ったのは、3月14日にシリア当局が学校や大学、職場の閉鎖を発表したことがきっかけだった。
ボゾさんは「私たちは、コロナウイルスとコロナウイルスが他の国々に与える影響を見て恐れていました。友人と私は授業も他の活動もなく、代わりに自由な時間があったので、何かできることはないかと話していました」と振り返った。
シリアは、2011年に勃発した内戦の影響で経済的に深刻なストレスを受けており、とりわけ困難な状況下でパンデミックが起こった。
ボゾさんは、ダマスカスの医療システムがCOVID-19に対応しておらず、すでに患者でいっぱいの病院にさらなる負担をかけている状況を指摘した。また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の不足により、感染者数が不正確になっているという。
世界保健機関(WHO)によると、8月16日現在、シリアでCOVID-19の感染が確認されたのは1,593例で、関連死は60例となっている。しかし、アナリストはこの数はもっと多いと考えている。
3月から5月にかけて行われたアクムハグループの最初の野外活動の1つは、路上、特にバス停のような混雑した場所に赴き、乗客や通行人に手指消毒剤を配布したり、数か所の公共の飲み水用噴水に石けんを置いて使用方法を説明したり、グループが選んだ地域の狭い通りを消毒したりした。
家庭の消毒に加えて、同グループは最近、ダマスカス大学での消毒プログラムを開始した。新学年が始まる9月に備えて、学校でのCOVID-19の蔓(まん)延を抑えるためのキャンペーンも計画されている。
また、ボゾさんたちのもう1つの目標は、大いに必要とされる呼吸補助用の大型酸素タンクの提供だったが、国内での供給不足やインフレの懸念から、この目標は依然として課題となっている。
しかし、個人や団体からの寄付のおかげで、400本以上の詰め替え可能な酸素タンクを確保できた。
また、病院の医師約20名で構成される医療チームも結成されており、日々ボランティアで緊急電話の対応や往診、医療支援を必要とする人の無料相談などを行っている。
ダマスカスでアラビア式の古い中庭付き住居の中にある質素な本部を拠点に活動しているアクムハの献身的なチームは、多くの支援要請にたびたび圧倒されながらもシリア全土にサービスを提供し続けている。
時が経つにつれ、アクムハグループはソーシャルメディアで人気を博し、同グループのFacebookグループとページには現在24万人以上のフォロワーがいる。Facebookページでは、COVID-19の予防措置のアドバイスや現地チームの日々の活動に関する情報が定期的に更新されている。
ボゾさんは、シリア社会はCOVID-19の悲惨な結果を受け止めつつあり、人々はより責任感と警戒心を持つようになってきている、と述べた。
ボゾさんは「当初は否定や陰謀論がありましたが、いまでは状況は完全に変わりました。ウイルスを嘲笑していた人たちがウイルスを恐れるようになり、マスクをあざ笑っていた人たちがマスクをつけるようになりました」と言い、
「主な理由は、人々が自分の家や他人の家でもこの危険を目の当たりにしたからです」と付け加えた。