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いずれカタールはイスラエルと国交正常化 米高官が見通し語る

ティモシー・レンダーキング氏は、米国務省近東局ペルシャ湾問題担当次官補代理。(画像はYouTubeより)
ティモシー・レンダーキング氏は、米国務省近東局ペルシャ湾問題担当次官補代理。(画像はYouTubeより)
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19 Sep 2020 09:09:14 GMT9
19 Sep 2020 09:09:14 GMT9
  • レンダーキング氏が示唆 国交正常化に公然と批判のトルコよりも、カタールのほうが前向きの役割果たした
  • レンダーキング氏が自説を展開 UAEおよびバーレーンがイスラエルと国交正常化の場合、湾岸協力理事国とカタールの不和も解消か

レイ・ハナニア

【シカゴ】イスラエル・アラブ首長国連邦(UAE)・バーレーンが交わした「アブラハム合意」をカタールは強く難じているものの、いずれはイスラエルとの国交正常化にいたる。ただし、時期は明言できない。米国務省筋がそうした見通しを語っている。

米国務省でペルシャ湾問題を担当するティモシー・レンダーキング次官補代理は17日午前、リモート会議で報告をおこなった。その中で同氏は、湾岸諸国の中で最初に首都にイスラエルの事務所開設を認めたのは、ドーハをイスラエルに開いたカタールだ、と改めて紹介した。

レンダーキング氏は、カタールの果たした役割は、国交正常化を公然と非難しているトルコより前向きなものだったと示唆した。とはいえここ数日のカタール当局の発表では、イスラエルによるパレスチナ問題の解決の前に国交を正常化することはない、ともしている。

「カタールもイスラエルには関与している。それも公然とだ。多年にわたりこうしたことを間歇的に続けているのだ。2週間前にハマスとイスラエルの停戦に向けた決意表明をカタールがしたことも指摘しておきたい。これこそカタール一流の『ブティーク外交』の最たるものだ。自国の影響力を行使してよりよき状況をもたらす、というものだ」。レンダーキング氏はそのように語っている。

「当該案件へのカタールの取り組みに接してきた立場から言えば、カタールはイスラエルとのそうした面での関わりについて何ら隠し立てはしていない。イスラエルの関連当局と前向きの関係を築いてきているし、そこを足がかりにさらに関係を深めることも可能とわれわれはみている。正常化に向けては国により歩みに差はあるものだ。国ごとの判断基準というものもむろん加味される。とはいえわれわれとしては遅いよりは早い歩みを望みたい。該当地域における平和と安定がより強固となる礎がさらにしっかりとしたものとなるからだ」

カタール国営メディアによる今回の合意への批判は手厳しいものだ。また昨年は、カタールがテロ組織と結び付きがあることについて華々しく耳目を集めるような報道姿勢も取っている。カタール側の資金供与により米国人がテロの犠牲となったとされる件もその一例だ。

レンダーキング氏はカタールとテロ組織の結び付きが取り沙汰されている点については、これらをすべて一蹴した。イスラエル国内で10人もの米国人が攻撃を受け死亡したり負傷したりした件について資金を供与した疑いでカタール首長一族が名指しで告発されている訴件も複数ある。

ボストンでの訴件では、カタールのタミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー首長の兄弟であるハーリド・アール・サーニー氏(シャイフ・ハーリド)に対し、6人の原告らが米国およびバーレーンで同氏と競合関係にある人物らの代理殺人を命じられたとして同氏を訴えている。

この訴件はもともと2019年6月にフロリダで起こされた。のち2020年1月に改めてボストンで訴えを起こしたものだ。原告らの主張では、シャイフ・ハーリドはインド国籍の人物を殺害、原告全員に対しシャイフと競合関係にある人物の殺害をおこなわなければ殺すと脅迫、さらに米国・バーレーンでシャイフのレーシングカー業界での競合関係者らのPCをハックする計画を指示したという。

2020年6月10日に提訴された別の訴件は、ハマスの暴力行為へカタール首長一族が資金供与したとする告発内容だ。この事件では米国人10人が殺害され重傷を負わされている。

ニューヨーク市の訴件は、カタール・チャリティ(前カタール慈善協会)やカタール国立銀行などのカタール国内の機関がイスラエル国内の米国人に対する暴力行為へ資金供与したという告発内容だ。これら米国人の多くは、米国・イスラエルの二重国籍者となる。

両訴件とも米連邦裁判制度のもとで公判に移されている。

レンダーキング氏はしかし、こうした訴訟の数々やその他議論を呼んでいる件については触れていない。そればかりか、イスラエルとの国交正常化をおこなわないとするカタールの立場の擁護に及んでいる。

「ひとり湾岸諸国にとどまらず、中東の全国家がイスラエルとの国交正常化にいたることはわれわれの大いに希望とするところであるとともに思いをいたすところでもある」と同氏は語っている。

「カタールがテロに甘い、という点についてはなすところ大であったかと思う。もっと正確に言えば次のようなことだ。テロについてはカタールときわめて盛んに連携を取っており、これはまあここ2、3年で強化に強化を重ねてきたと言ってよいかと考える。一部は禁輸措置を取ったためでもあるし、また、以前のカタールの体制では弱点となりえた枢要な領域に対して米国が集中的に強く関与したということもある。むろんまだまだ改善の余地はあると承知している。われわれとしては、来年中には絶え間なき改善の成果も見られるものと自負しているところだ」

カタールはパレスチナ紛争の解決と結びつけて批判しているのであって、これは多くのその他アラブ諸国と選ぶところがない、ともレンダーキング氏は言う。

「国交正常化に向けた取り組みにパレスチナ側が示している反応については、むろん知らないわけではない。われわれとしては、パレスチナ側には、今回の件で元気をなくすことなくむしろチャンスととらえ交渉の席へ再び着くためわれわれとともに取り組んでいただきたい、こうした望みを大いにもっている。米国としても優先課題であることに変わりはないからだ」

サウジアラビア、UAE、バーレーンなどの湾岸協力理事会(GCC)加盟国やエジプトは、2017年6月5日にカタールとの全面的な断交に踏み切った。同時にカタールの航空機および船舶に対してもGCC諸国の空域や海路を使用禁止とした。

UAEとバーレーンがイスラエルと国交正常化を成立させた場合、こうしたGCC諸国とカタールの間の不和も解消される可能性がある、とレンダーキング氏はしている。

「われわれの見立てでは将来展望はかなり明るい。イランという脅威はいまだ消えていない。したがって私としては、すなわち、湾岸諸国が一致団結し湾岸諸国同士の不和を終わらせるとともに共通の課題、共通の脅威に対してさらに集中する……といった必要があるのではないかと」とレンダーキング氏。米側がカタールに対しイスラエルとの国交正常化を強要することはない、とも付け加えた。

「われわれがUAEに対しイスラエルとの国交正常化を強いた事実はない。われわれがバーレーンに対しイスラエルとの国交正常化を強いた事実もない。両国とも、自国の利益に鑑みて、自国の意思で行動したにすぎない」とレンダーキング氏は言う。

「近いうちに他国もこれに続くことをわれわれとしては強く期待しているし希望もしている。アブラハム合意で、新たな外交の可能性やパートナーシップといったものが勢いづく素地が示されたからだ」

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