
Ahmed Gabr
ドバイ:パンデミックは世界中の様々な分野の企業に深刻な打撃を与え、誰も予想していなかった方法でその被害を拡大し続けており、最も強い経済圏の一部を不況に追い込んでいる。
同時に、一部のビジネスモデル、特にテクノロジー業界では恩恵を受けており、過去数か月間に前例のない成長を遂げている。
その中でも幸運なのはフィンテック市場で、大幅な成長となっている。パンデミックの影響で実店舗は長期に渡って閉鎖され、店舗が再開しても懸念を抱いた消費者は従来のショッピングを避け、リモート決済やキャッシュレス決済というソリューションへの道を切り開いた。deVere Groupの調査によると、欧州ではパンデミックが発生してからわずか1週間でフィンテックアプリの利用が72%増加した。
同様の傾向は中東・北アフリカ(MENA)圏でも見られ、同地域のフィンテック市場は2022年までに25億ドルに達すると予測されている。
「最近のパンデミックの結果、オンラインショッピングは世界的に55%急増した。これは、人々が非接触型のやり取りに移行し、感染のリスクを避けるために受け取り所や配送サービスを利用するようになったためだ」とFawry Banking and Payment Technology ServicesのCEO、Ashraf Sabry氏は述べた。
デジタル決済とフィンテックのプラットフォームを提供するFawryは最近、エジプト初のユニコーン企業となった。パンデミックの間に同社の市場価値は4倍に上昇し、200億エジプト・ポンド(13億ドル)に達した。
この地域のフィンテック部門が成長していることを考えると、パンデミックは、地域のベンチャー企業が新たな問題を解決し、警戒心の強い顧客に自社製品の価値を証明する機会でもあった。
この地域の企業は、買い物客が決済を行う方法に革命を起こすために努力してきた。とりわけ、これらの企業の努力により、分割払いの概念が再び一般的になり、消費者と企業の両方にとってより身近なものになった。
「エジプト政府や中央銀行と協力し、フィンテック企業は顧客の間で現金の代わりにクレジットを使うことへの意識を高め、この種の取引は安全性が高く、詐欺行為を排除し、現金よりも多くのメリットがあることをより強調することに貢献してきた」とSabry氏はエジプトの状況について語った。
同氏の会社は現在、政府サービス、公共料金、大学の授業料、小売店、さらには寄付金などのキャッシュレス決済を可能にする様々なサービスを運営している。Fawryによる支払いは、オンライン決済ゲートウェイのFawryPayに加えて、エジプト全土にある16万5,000以上の販売店のネットワークで利用できる。
どちらのプラットフォームでもクレジットカードを持っていれば、用意された3か月・6か月・9か月・12か月のプランに基づいて取引を均等額の分割払いに分けることができる。この支払い方法により、銀行との取引の複雑さや追加コストの多くが解消され、顧客は「今買って支払いは後で」をより利用しやすくなる。
2019年に立ち上げられたTabbyは、UAE発のフィンテック企業で、銀行取引やクレジットカードすら必要としない遅延支払いオプションを企業が買い物客に提供することをやはり可能にしている。
消費者は、商品到着14日後に無利息で支払うか、数か月に渡って分割で支払うことができる。パンデミックがこの地域を襲った3か月後、TabbyはRaed Venturesが主導する資金調達ラウンドで700万ドルを確保した。同社は、成長とサウジアラビアへの進出のための資金を必要としている。
TabbyのCEO、Hosam Arab氏はEntrepreneur Middle East誌に、COVID-19のパンデミックを受けて、この地域でこういったシンプルなクレジット決済による支払い方法が重要になった理由を説明し、「消費者の需要の鈍化に対応するソリューションの重要性がより明らかになった」と述べた。
この地域ではフィンテックが減速する兆しはない。エジプトのビジョン2030では、成長目標を達成し、世界経済におけるエジプトの地位を高めるための戦略目的として、完全なデジタルトランスフォーメーションを目標としている。
「エジプトは、年齢が15~40歳の若い世代の人口が42%で、早期に科学技術を受け入れる人々がいる魅力的な成長市場となっている」とSabry氏は述べている。
他のMENA諸国も同様の人口動態と成長目標を示している。スマートフォンの普及率は40~50%と推定されており、この地域はあと数年でフィンテックサービスの金鉱になる可能性を秘めている。
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*この記事は、アラブ地域の地位を変える可能性を探るために、UAEの首相でありドバイの統治者でもあるモハメド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム氏のビジョンを反映して、モハメド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム・グローバル・イニシアチブが立ち上げた「Middle East Exchange」のパートナーとして、アラブニュースが発行している。