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希望が打ち砕かれた多くのレバノン人は、2021年に何が訪れるかが怖いと言う

レバノン首都・ブリス通りのベイルート・アメリカン大学入口の外で行われたデモで、国旗に身を包んだ反対デモ参加者が警察に立ち向かう。(AFP)
レバノン首都・ブリス通りのベイルート・アメリカン大学入口の外で行われたデモで、国旗に身を包んだ反対デモ参加者が警察に立ち向かう。(AFP)
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01 Jan 2021 01:01:20 GMT9
01 Jan 2021 01:01:20 GMT9
  • 「もはやレバノンに何が残っていますか?未来が恐ろしいです」

ナジャ・フーサリ

ベイルート:財政的、政治的、社会的混乱に満ちた1年を経た今、危機に見舞われたレバノンの状況が今後12カ月間で改善すると信じる人は少なく、ますます多くの人がこの苦境が劇的に悪化することを恐れている。

「私たちの国は壊れています」と、銀行業界で働くリマ・アル=カティブは、父親が亡くなった際に全国的な閉鎖措置がとられ家族でモスクで祈ることもできなかった一年を振り返って言う。

アル=カティブは、自身が「今年起こったすべての出来事について否認状態に陥っている」とアラブニュースに語った。

「あまりに辛いので、振り返りたくもありません」と彼女は言う。

この数週間、大学や保健関連の研究では若年層・老年層の両方において危険な水準のうつや不安状態が示されており、新年に向けて夢どころか期待すら抱く人が少ないことは明らかだ。

ある心の健康の調査では、18~24歳の最大16パーセントが重度のうつに苦しみ、女性の41パーセントが今もベイルート港の爆発事件によるPTSDに苦しんでいると結論付けている。

一方、別の研究では、コロナウイルス拡大に歯止めをかけるために施行された閉鎖措置により参加者の41パーセントの精神衛生が影響を受けたとし、さらなる研究では人口の9.5パーセントがレバノンの悲惨な経済状況によりうつになるリスクを負っているとしている。

アル=カティブは、港での爆発が起きた日のことを決して忘れないと言う。

「車を運転中、目の前に建物のバルコニーが落ちてきたんです」と彼女は語る。「何が起きたのかわかりませんでした。私の友人はかろうじて命拾いし、爆発で職場の同僚2人が亡くなり、遺された2人の子どもたちは孤児になってしまいました」

アル=カティブは、国が「テロリスト組織に人質にとられた」と多くのレバノン人が考えていると言う。

「私たちの給料は価値を失いました。私はもうニュースも聞いていません。政府がユーロ債の返済を行わずすべてをめちゃくちゃにしてしまってからは、聞く気にもなりません。今では食料品も銀行のドル為替レートに基づいて価格が設定されています。もし中央銀行のドルがなくなったら、私たちの生活はどうなってしまうのでしょう?」と彼女は言う。

「レバノンは地域での立場を失いました。取り戻せるかどうか、わかりません」

市場で商売を行うマジド・バイトムーニは、過去1年で「経済的にも精神的にも、自分が40年前に引き戻された」思いだと言う。

「政府は災難しかもたらさず、コロナウイルスで状況はさらに悪化しました。販売者が家賃をドルで払いたがるので私はベイルートに所有するカバン店を閉店せざるを得ず、商品を返品してとどめの打撃を受けました。お金もほとんど残っておらず、地元で野菜や果物を売るくらいしかできません。妻と子どもたちが助けてくれましたが、利益は出ず、負債が増えました」

バイトモーニはもう政治家は信用できないと言う。「私たちの暮らしを脅かす存在です。私たちを破滅に追い込みました」

鉄工場を所有するアブドゥラ・スルタンは、新しい年に状況は悪化すると考えている。

「私にとっての優先事項は、子どもたちがこの国を出ていくことです。私の祖母は、きっと状況はすぐによくなるよと言ったものでした。私は同じことを言いたくありません。問題は国と国民の土台にあるんです―ここは変えようがありません」とスルタンは言う。

事務員として働くアッシマ・ラマダンは、2020年は孤立状態に陥ったと言い、新たな年にはさらにひどくなるのではないかと懸念する。

「夫と私はお金の価値が崩壊したとき、銀行に預けていた全財産を失いました。老後も誇りを失わずに生きたいと願っていましたが、もう病気や先行きを恐れるほかありません。コロナのせいで外を歩くのも怖くなってしまいました。無力感と苛立ちがつのり、そんな感情をどうすればなくせるのかわかりません」

大学教授のアレフ・アル=アブドは、この1年はレバノンにとって「とどめの一撃」となったと言い、「家族と一緒に尊厳のある暮らしを営むために、何ができるでしょう?」と加えた。

経済と政治の劣化が安全保障の劣化につながる、と彼は言う。

「もはやレバノンに何が残っていますか?銀行に病院、大学まで攻撃され、宗教の共存も攻撃対象となる懸念があります。ベイルート港で起きた出来事は恐ろしいです」

企業法を専門とする若い弁護士、サラ・ファクリーはレバノンの「腐敗した統治権力」に反対するデモを支持してきたと語る。

「でも、状況はさらに悪化しました。ベイルート港の爆発事件で私の怖れはさらに増大しました。国家は犠牲者について責任を取りませんでした」

大企業を含むファクリーの顧客の企業は、いまや閉鎖の危機に瀕している。

「人々は銀行に対して訴訟を起こしていますが、司法当局を信用していません」と彼女は言う。「移民申請を再度行っている人がいますが、私もその一人です。かつてフランスに住んでいましたが、外国での暮らしは厳しく、5年前にレバノンに帰国しました。でも、もう振り返りません。レバノンの未来は暗く、私はその一部になりたくありません」

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