• 「新型コロナに国籍や法的地位など関係ない」と専門家がアラブニュースに語る

メネクス・トキアイ

アンカラ： トルコでは新型コロナワクチン接種プログラムが1月13日からスタートしているが、認定の有無を問わず難民たちが予防接種を受けられるか否かに関する公式発表は出ていない。

トルコ政府はこれまでに300万回分のワクチンを入手しており、約200万人の住民が接種を受けている。

しかし、十分な数のワクチンが確保できないとみられ、可能な限り早期にどれくらいの住民が接種を受けられるかは不透明だ。

今後難民にもワクチンの接種を認めるか否かについて公式発表がないのは、シリア難民に対する否定的なトルコの国民感情を考慮し、反発を避けるためという可能性もある。

しかし、自国民の安全のみならず公衆衛生上の観点から、トルコ政府には保護下にある難民たちにもワクチン接種を受けさせる責任があると、専門家たちは警鐘を鳴らしている。

トルコ国内には約400万人が難民認定を受け暮らしているが、未認定難民の数を特定するのは非常に困難だ。昨年トルコで身柄を拘束された不法難民の数は約12万2000人だったが、2019年には45万4000人が拘束されている。加えて数十万人の難民が、マスクの購入など、コロナウイルス感染予防策をとれない不安定な状況下で暮らしているのは確実とみられる。

以前トルコの国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）で報道官を務めていた、アンカラ難民調査センター（IGAM）のメティン・コラバティル所長は、近隣諸国との海上や陸の国境線が長いため、何千人もの不法移民がトルコに流入し続けていると述べた。

「トルコが近年ビザ免除協定に調印した国の国民も一部、就労を含めた短期滞在ビザの有効期限が切れた後、いまだに国内に不法滞在しています」とコラバティル所長はアラブニュースに語った。

コラバティル所長によると、EU加盟国の一部は、今後数か月の感染拡大を防ぐため、ワクチン接種プログラムに難民を含めるプロジェクトをすでに開始済みという。

「バスで近くに座っている人が不法移民であるかどうかは判別不能です。したがって、不法滞在者も含めた徹底的な予防接種プログラムを実施しなければなりません」とコラバティル所長は述べた。

貧困ライン付近かそれ以下の状態でトルコに暮らす難民たちは、コロナ禍により大きな打撃を受けている。

難民たちは主に社会保障を受けられない「非公式経済部門」で働いており、常に経済的な打撃を受けやすくなっている。ロックダウン・移動制限・複数の分野での深刻な不況が、難民たちの苦境に追い打ちをかけている。

アンカラに本拠を置くシンクタンク「TEPAV」で難民政策アナリストを務めるオマール・カドコイ氏は、トルコ国内で難民をワクチン接種の対象外とすれば、ウイルスの蔓延を抑える上で逆効果になると考えている。

「新型コロナに国籍や法的地位などは関係ありません。誰もがウイルスに感染するリスクがあり、新型コロナウイルスを拡散する可能性があります」とカドコイ氏はアラブニュースに述べた。

カドコイ氏によると、認定の有無を問わず難民がワクチン接種計画の対象外となっているのは間違いないという。

「政府は難民たちを優先してワクチン接種を受けさせるグループに含めなければなりません。未認定難民の場合、基本的な医療サービスを受ける権利がそもそもないということですから」とカドコイ氏は述べた。

カドコイ氏によると、当面は政府が一時滞在許可証を発行し、滞在資格のない外国人が予防接種を受けられるようにする必要があるという。

「その後この一時滞在許可証を利用して、正式な滞在許可を出すか判断することも可能でしょう。そうすることで、トルコ政府は自国民の権利と難民の人権のバランスをとることになります」と述べた。

177カ所の難民保健センターで3400人以上の医療従事者が働いており、難民のコロナ感染防止に尽力している。

医療制度を利用する際の制限も、コロナ禍に暮らす難民たちにとって深刻な問題となっているようだ。

「トルコの病院では緊急事態の場合、不法移民を受け入れる義務が発生します。しかし、未認定難民の側は治療を受けたら医療制度を利用した旨を病院側が政府に通知することを重々承知しています。したがって、すぐに入国管理センターに連行されてしまいます」とコラバティル所長は述べた。

ワクチン接種プログラムから難民たちを除外するとコロナウイルスに感染しても病院に行かなくなるという深刻なリスクがある、と専門家たちは警告している。