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レバノンでは経済危機と政情不安が深刻化する中「医療上の重大な危機」が迫る

北部の港湾都市タラーブルスのアル=ヌール広場の建物の壁に描かれた落書きの前を通り過ぎる男性。(AFP)
北部の港湾都市タラーブルスのアル=ヌール広場の建物の壁に描かれた落書きの前を通り過ぎる男性。(AFP)
09 Nov 2019 05:11:22 GMT9
  • 抗議活動は23日目に入ったが、新政権の立ち上げに向けたプロセスを開始する政治的な動きの兆候は見られない

ナジア・フッサーリ

ベイルート:レバノンでは病院で患者の受け入れができず、医薬品や医療機器の蓄えが1ヶ月で底をつくと予測されており、専門家らは金曜日に同国には「医療上の重大な危機」が迫っていると警告した。

この警告が出された前日には、信用格付け会社のムーディーズがレバノンの最大手3銀行を格下げしたことによって、危機的状況であるレバノン経済への信用が国際的に低下したばかりだ。

レバノンでは反政府抗議活動は23日目に入ったが、新政権の立ち上げに向けたプロセスを開始する政治的な動きの兆候は見られず、この知らせを受けて負債まみれのレバノン経済は崩壊により一層近づいた形だ。

金曜日にレバノンの病院、医師、及び医療機器ディーラーの団体は共同で「保証機関からの支払いの遅れによって金融流動性が不足したため、病院ではもはや患者の受け入れができない状況になっています」との声明を発表した。

「現時点での医薬品と医療機器の蓄えは1ヶ月で底をつきます。ディーラー用に資金を米ドルに換金する支援を行なって状況を直ちに改善しない限り、医療上の重大な危機が訪れる可能性があります。1週間以内に、病院では急患以外の患者受け入れができなくなります」と声明では付け加えられている。

木曜日『ロイター通信』によって公表されたムーディーズによる報告によると、レバノンの「信用力の低下」に鑑み、Audi、Bloom、及びByblos銀行をより高いリスク水準を示すCaa2まで格下げする決断を行なったとのことだ。

エコノミストのイッサム・ジュルディ氏は『Arab News』に対し、「レバノンは病んで苦しんでいる状態です。国庫にも資金がなく、予算もありません。レバノン銀行(レバノンの中央銀行)は自由準備金を使い果たしています。リラ(レバノン・ポンド)を支えたり、燃料、炭水化物、医療機器、及び小麦などの戦略的に重要な品目に出資することもできなくなっています」と語った。

ムーディーズによって格下げされたことによって、レバノンは対外債権をこれまで通りの金利では取得できないことにもなると、同氏は説明する。

このタイミングで抗議活動参加者はレバノン全土でデモを続け、政治の腐敗と新たな税の導入に対して反対の声を上げている。

レバノンのフアード・シニオラ元首相とヌハド・マシュヌク前内務大臣もデモ参加者に矛先を向けられ、抗議活動は内務省が入るビル前と、ナダ・ブスタニ暫定エネルギー大臣の自宅前でも展開された。また、進歩社会党(PSP)のワリド・ジュンブラット党首の自宅前と、与党政治家の1人の自宅前にもデモの人だかりができた。

先日レバノンではサード・ハリーリー首相が辞任したが、暫定政権を立ち上げる努力は政治の行き詰まりによって阻まれている。

開発の専門家であるナーセル・ヤシン博士は「経済状態を救うための計画を練り上げることができるであろう信用ある人物を通して信頼を回復できるような暫定政権がレバノンには必要です」と述べた。

ジュルディ氏は次のように語った。「中央銀行は、レバノン市場で流通している米ドルを全て吸い上げ、同銀行の自由準備金であるかのように扱っています。しかし実際にはそれは、レバノン人の預金なのです。

「何が危険かというと、国からの金銭給付と預金には年度に紐づけられているものがあります。もし預金者が満期日に自身の米ドルを引き出そうと思えば、銀行からは米ドルを市場から確保するか預金を米ドルに換金して口座内に留め置くよう言われることになります。つまり20日前に、レバノンはバウンド経済に突入したわけです。

「この危機の原因は、国際収支が170億ドルの赤字になっていること、そしてレバノンのGDPの25%を占めると見られている貿易用の口座で貿易赤字が発生していることです。予算も2019年には7.6%の赤字とみられており、現在の危機が原因で2020年度の赤字額はさらに上昇するでしょう。とりわけ、レバノンでは2020年の予算を憲法で定められた期日までに確保できなかったわけですから」と同氏は付け加える。

「1970年代と1980年代の内戦中は、外国から戦闘用の資金提供があったので、レバノンでは財政黒字の状態でした。しかし今やレバノンは、湾岸諸国と国際社会に頼る他ありません。

「経済では奇跡は起きないので祈るほかありませんが、政治では奇跡は起きうるものです。国内外で救済策を練る必要があります」

ジュルディ氏は、現在のレバノンの危機は「人々の裏をかいて革命を起こさせないようにするための策」であると主張する。

ヤシン博士は、「現在の危機が始まった当初、人々は国への信頼をなくし、銀行から預金を引き出しました。引き出された総額は約10億ドルだったと見られています。政治家たちがまだ権力を求めて交渉している今、レバノンに10セントすら投資しようとする人などいません」と語った。

同氏はまた、レバノンの抗議活動参加者は「これまでの政治家が戻ってきてもそれを受け入れることはないでしょうし、またこれまでの国の動かし方が戻ってきてもそれを受け入れることはないでしょう。信頼を取り戻すには早急に対策を進める必要があります。時間の余裕などないのです」と付け加えた。

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