
ドバイ:数ヶ月にわたり、アラブのニュースメディアは探査機ホープの火星への旅を熱心に追ってきた。UAEでは、建国50周年のお祝いの一環として、無人探査機(アラビア語ではアル・アマル)を描いた広告掲示板が高速道路沿いに設置されてきた。
火曜日には、地球上で最も高いドバイのブルジュ・ハリファを含め、全アラブ世界のランドマークが赤く染まり、探査機が火星に到着したことを示した。
日本の種子島宇宙センターからの打ち上げから7ヶ月が経ち、探査機は4億9500万キロの旅を終え、アラブ世界初の惑星間ミッションの大成功の中で、この惑星の周回軌道に投入された。
ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター(MBRSC)の地上管制官は、探査機ホープが火星を周回し始めたというニュースが伝えられると、立ち上がって、拍手した。探査機は火星で、この惑星の大気に関するデータを採取する予定だ。
アラブ首長国連邦火星ミッション(EMM)のプロジェクトマネージャー、オムラン・シャラフは、次のように発表した:「UAEの人々、そしてイスラム諸国とアラブ諸国の人々に対し、我々はアラブ首長国連邦が赤い惑星の軌道に無事(到達した)ことを発表します。我々は神に感謝します」。
探査機は、火星の高い軌道に向かって方向を変え、アメリカ船3機、ヨーロッパ船2機、インド船1機の、既にこの惑星の周りで運用されている6つの宇宙船に加わった。宇宙飛行管制官らは、一連の繊細な旋回と出力調整を上手く行い、探査船を所定の位置へと操縦しなければならなかった。
「ほんのわずかでも不適切なことがあれば、宇宙船を失うことになります」と、先端科学大臣でUEA宇宙庁代表のサラ・アル=アミリが語った。
彼女は、ミッションの成功を「歴史的な発展であり、裏で働いていた200人のエンジニアや科学者の夢の実現」と表現した。
ホープの到達により、UAEは歴史上、実際に機能する火星ミッションを成功させたわずか5つの宇宙機関の仲間入りを果たした。アメリカと中国の2つの無人宇宙船が、そのすぐ後ろを追っており、数日以内に火星に到達する予定だ。
3つのミッションは全て、地球と火星が接近するのを利用するために、昨年7月に打ち上げられた。
NASAの科学ミッション本部副本部長であるトーマス・ズルブチェン氏は、火曜日に首長国の人々に宛てた祝福のツイートの中で次のように述べた:「赤い惑星を探索するというみなさんの大胆な努力により、他の多くの人々が感銘を受け、星を目指して手を伸ばそうとするでしょう。我々もパーサヴィアランスで、すぐにみなさんと一緒に火星に加われることを願っています」と述べた。
アラブニュースに対して、ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター科学技術担当統括官補佐のサレム・アル・マリは、次のように述べた:「(火星軌道への挿入が完了したことは)多くのことを意味します:15年以内に、衛星を作り、宇宙飛行士を打ち上げ、このような火星へのミッションを作る能力をセンターに構築することです」。
「国にとって、また私たちにとって、これがまず意味することは、このような技術を構築する能力が我々にはあるということです。2つ目は、我々が世界的な影響力のあるミッションを今抱えているということです。その重要性は世界的なレベルのものなので、このミッションで得られるデータは、火星をより良く理解したいと思い、この惑星の大気を研究しているあらゆる人たちにとって、有益なものになるでしょう」。
「このようなミッションは、誰にとっても大きな意味があると思います」。
これまでに、宇宙センターのEMMのデータ解析・管理の科学担当主任であるヘッサ・アル・マトローシがこう述べていた:「地球と、約20億年前の火星の状態の間には、多くの類似点があります。データからは、20億年前の赤い惑星に水の痕跡があったことがわかっています。私たちは、火星には非常に厚い大気があり、水や液体があったと考えています」。
「今の火星を見ると、多くのことが起こっています。大気は非常に薄く、水蒸気や氷でない限り、水の痕跡は見つかりません。問題は、なぜこのような劇的な変化が起きたのかということです。これを通して、同じような結果につながりかねない、地球で起こっている要因を理解でき、結果それを防ぐことができるのです」。
探査機ホープは、コロラド州ボルダーで組み立てられた後、三菱重工のH2Aロケットで打ち上げるため、日本へと送られた。
このミッションの2億ドルのコストは、同様のプログラムと比較すると世界最低だと考えられていると、UAEの内閣総務大臣のムハンマド・アル・ゲルガウィが昨年ツイートの中で語った。
しかし、この価格には火星での運用コストは含まれていない。中国やアメリカの探査は、さらに複雑で、コストが高い。ローバー探査装置があるからだ。NASAのパーサヴィアランスのミッションには、30億ドルのコストがかかりそうだ。
とはいえ、このミッションの成功は、UAEの宇宙への野望を大きく後押しするものだ。これは、UAE建国の父である故シェイク・ザーイド・ビン=スルターン・アール=ナヒヤーンが1970年代に掲げた壮大なビジョンを達成するために、何十年にもわたって準備と作業を続けてきたことの結果だ。彼が宇宙に興味を持ったきっかけは、アポロ計画で何度も月へと飛んだNASAの宇宙飛行士と1976年に会ったことだった。
アメリカのリチャード・ニクソン大統領は、1972年のアポロ17号ミッションの際にタウルス=リットロウ谷から採取した月の石をシェイク・ザーイドにプレゼントした。その後すぐに、シェイク・ザーイドは、首長国の宇宙開発への野心には限界がないという明確なメッセージを国民や世界に送った。こうして、UAEの宇宙への旅が始まったのだ。
2006年、UAEは、いつか火星に宇宙船を送ることを目標に、知識移転プログラムを構築するため、世界中の大学や宇宙機関と緊密な連携を始めた。しかし、UAEの宇宙開発計画に世界が本当に注目し始めたのは、2014年にUAE宇宙庁が作られてからのことだった。
2017年、首長国軍のパイロットであるハザ・アル・マンスーリは、宇宙庁初の宇宙飛行士隊に、4000人の応募の中から選ばれて入隊した2人のうちの1人となった。厳しい精神的・肉体的テストを経て、ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センターとロシアの宇宙機関ロスコスモスとの協定の一環で、ロシアで訓練を受けた。
UAE初の宇宙飛行士は、国際宇宙ステーションに向けて2019年9月25日に打ち上げられた宇宙船ソユーズMS-15の乗組員に加わった。アル・マンスーリの8日間にわたるミッションは、10月2日に無事にカザフスタンに着陸して終了し、その後、「シェイク・ザーイドの宇宙ミッションを達成して」帰還したことを誇らしげに語った。
アラブの宇宙探査の将来を見据えて、MBRSCのアル・マリは次のように語った:「我々は既に10年計画を立てており、複数のチームが複数のミッションに取り組んでいます。首長国連邦火星ミッションの次のステップについて具体的に言うと、数週間後には科学的な目標に焦点を当て始める予定です」。
「しかし、MBRCの次のステップは、もう1つの10年計画です。次のミッションは、アラブ世界の歴史上初めて月面着陸を行うミッションを立ち上げることなのです。そこで、我々はラーシド・ローバーという探査車を送ります。今こうしている間も、我々はこれを作っているのです」。
ツイッター:@jumanaaltamimi