
チャーリー・ピーターズ (Charlie Peters)
ロンドン : サウジアラビアにおけるフーシ派のテロ攻撃は、今回のものは王国のアブハー空港へのドローンによる攻撃であることが明らかとなり、中東におけるイランの武力作戦範囲の詳細が新たに浮かび上がった。
フーシ派は、水曜日の攻撃でドローン四機を用いていた。そして、イランの支援を受けるテロ組織からの攻撃が日増しに増大する日々となった。この間、地域におけるイランの支援を受ける市民軍が、その大きさ、規模、そして致死率において増大していることが、トニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所 (TBI) からの新しい報告で警告されている。
『テヘランからの眺め : イラン市民軍の教義』という表題の論文によって、政権の支援を受ける暴力組織の広大なネットワークが明らかとなる。
論文は、新たな証拠と広範な分析に基づき、イランのイスラム革命防衛隊 (IRGC) の支援を受ける市民軍について詳述する。IRGC は、中東におけるイランの支援を受ける代理テロ組織のうち、最速で拡大する組織である。
そして、IRGC の支援、訓練そして供給を受ける市民軍が、地域の安定性に最大級の脅威をもたらす、という議論が続く。
IRGC の支援を受ける市民軍は、中東に独特の危険を引き起こす、と報告書の共同執筆者の一人、サイード・ゴルカー (Saeid Golkar) 教授は話した。彼は、TBI のシニア・フェロー、そしてチャタヌーガにあるテネシー大学の政治科学・公共サービス学部の助教授でもある。
戦術的、そして物質的利害の共有が限定的な、テヘランと草の根の市民軍の関係とは異なり、IRGC と代理組織のつながりは、急進的で、共有された世界観に根差している。これら組織は、ヴェラーヤテ・アル=ファギーフというテヘランのイデオロギーを完全に導入している。これは、イランの最高指導者が、シーア派イスラム教徒に対して絶対的権威を持つとみなすイデオロギーである。
この熱狂的で、観念的宗教的な協力関係が意味するもの、それは、テヘランは、IRGC と協働する集団が、今後もずっと致命的原因となり続けることを期待できる、ということだ。
このつながりを確固たるものとするため、テヘランは IRGC を利用して、過激派の急進化、洗脳に多額の投資を行い、外交、人道主義、教育そして文化分野における、政権のいわゆるソフトパワー機関から資源と支援を集めている。
イエメンにおいては、イランの支援を受けるフーシ派が、国際的に認知された政府に反対する戦争を行っており、事実、IRGC のゴドス軍が、イエメンのシーア派イスラム教徒にその世界観を植え付けるべく訓練を行っている証拠がある。ゴドス軍は、不正規戦争、心理作戦および軍事諜報を行う IRGC の支部である。
2014 年、ゴドス軍はアドバイザーを配置した。そのほとんどはレバノンやイラクの過激派グループの出身であったが、これは、権力統合におけるフーシ派の取り組みを強化するためである。テヘランは、隊に対してその権限や教義を持ち込もうと奮闘してきたが、その努力を減らすことにはつながらなかった。
フーシ派は、ヴェラーヤテ・アル=ファギーフに関するイランの解釈を未だ取り入れてはいないかもしれない。それでも彼らは、レバノンのヒズボラやイラクのアサイド・アル=ハックのような、テヘラン最強のテロ資産の一部を生み出すことにつながるものと同じ情報ルートに従っている。
イランはフーシ派部族出身の数百人のイエメン人学生を、アルムスタファー国際大学のようなテヘランの「ソフトパワー」の機関で勉強させている、とカスラ・アラビ (Kasra Aarabi) はアラブニュースに話した。彼は、TBI のアナリストの一人であり、この新たな報告書の共同執筆者でもある。
この報告書によれば、イランの最高指導者、アリー・ハーメネイーに対する忠誠心をはっきりと示す学生も何人かいる。
この悩ましい傾向は、IRGC の影響力がイエメンのシーア派イスラム教徒に対して大きくなっていることを示すものかもしれず、問題を抱える国で、さらにテロ行為が起きることとなるかもしれない、とアラビはアラブニュースに話した。
「制裁の緩和は、IRGC に協調する集団を止めるのには十分ではない。集団の戦士は急進的となっており、物質的な見返りが手に入るか否かに関わらず戦うだろう。スンニ派イスラム過激派に対する際には、私たちは同じ方法で反撃する必要がある」、と彼は警告した。
「対テロ活動戦略に全力で取り組むこと」のみが、この市民軍を解決することだろう、とアラビは加えた。軍事的解決は十分ではなく、政府も彼らの背後にあるイデオロギーに立ち向かう必要がある、と彼は指摘した。
「彼らに適切な制約をかけるために、この取り組みを採用する必要がある。問題の根源から始め、暴力に駆り立てる考えを退けるのだ」、と彼は話した。
ゴルカーは、同僚の報告書著者と見解を等しくし、IRGC の支援する反抗集団に対する西側の主要な取り組みは不十分であったことを指摘した。
「イランには有名なジョークがあるのです」、とゴルカーはアラブニュースに話した。「夫婦が家で眠っています。アパートで物音がしました。妻が夫に、何が起きているのか確かめるよう言います。しかし、夫は見に行くことを怖がります。そして、『すべては神の思し召し、単なる猫だ。眠りなおそう。』IRGC に対応する西側の政策立案者の主要な取り組みは、こんな調子でした。」
「彼らは起きていることをただ怖がり、『猫だ』とだけ言うのです。IRGC は単なる従来の軍隊です。けれど、彼らは間違っています。私たちに必要なのは、分かる範囲の現実を認め、IRGC、ゴドス軍、そして市民軍に対応する取り組みです」、と彼は加えた。
IRGC の影響範囲を理解することへの認識が西洋で変化した、とゴルカーは話した。「現実を理解することが不可欠です。起きていることを否定するのであれば、それに対応することはできません」、と彼は話した。「第二の取り組みは、戦略的対応です。私たちは、こうした市民軍が、どのようにテヘランと協調しているのか、そしてどの程度政権に従っているのかについて知る必要があります。」
「市民軍の教義は、テヘランの政権が生きながらえるために設計されています。たとえ、イスラム共和国が崩壊したとしても、IRGC は地域にわたる基盤を構築しており、この市民軍の教義は、完全な反政府活動状態となることが可能です。これにより、イスラム共和国は生きながらえることができます。政策立案者が、問題を食い止めるための戦略を設計するのであれば、これを考慮する必要があります」、とアラビは話した。
イランの悪との結びつきの度合いは甚大だ。TBI は、1979 年以来の 5 大陸、51 ヵ国における 194 の IRGC の活動を特定した。IRGC の世界的な足跡について、初めて対話式に追跡することで、アナリストは初めて、テヘランの広範囲に及ぶ暴力活動の全貌を目の当たりにすることができる。
ゴルカーとアラビは、テヘランは、抑止力として、こうした集団を支援するに過ぎないという見解に挑戦した。「米国との関係が改善し、制裁が解除された場合、政権は脅威が少なくなったと感じ、こうした集団への支援を減少させるだろう、という論点があります」、とアラビは話した。
「しかし、私たちの研究は、この見解とはまったく異なります。こうした市民軍の多くは IRGC のイデオロギーを擁護しています。彼らは、イランの領土的境界にすら気が付いていません。」
「これらは、イランという国家を守護する従来の軍隊ではありません。彼らは、イスラム教徒の土地と、異教徒の土地に跨る世界を分割するためにあるのです」、と彼は加えた。
「制裁を緩めることでは解決につながらないでしょう。核協定に署名したわずか 13 日後に、ハーメネイーは、あらゆる物的褒賞を用いて、地域における市民軍へのイランの支援を絶つ、という考えを否定しました。制裁が緩和されたために、市民軍と IRGC 集団の組織化が急増するのを、私たちは目の当たりにしました。」