



ドバイ:米国新政権が最初に取った措置の一つとして、国務省によるイエメンのフーシ派民兵組織の外国テロ組織指定を撤回した。
ジョー・バイデン大統領の顧問や多くの援助機関の主張は、フーシ派(アンサール・アッラー)を「テロリスト」と呼ぶのをやめることが、イエメンへの人道援助の流れを促進するだろうというものだ。
問題は、米国政府による呼称にかかわらず、イランから支援を受けシーア派の一派であるフーシ派民兵は、国連による支援が貧困層に届くことを長い間妨げてきたことだ。
米国はフーシ派に対しテロ組織のような行動をやめるよう懇願しているが、多くの人はこの対処を甘すぎる、そして遅すぎると見ている。バイデン政権からの支持を熱望する政権(イラン)のサポートを受けるフーシ派は、恐らく、勝利中と自認しているはずだ。そのため、今は行動を減らすのではなく更に強化すべきでないか。
サウジアラビアの民間施設に対するほぼ毎日のドローンやミサイルによる攻撃は、上記メンタリティの十分な証拠だ。ただ、王国の強力な防空によって死傷者は最小限に抑えられている。
彼らが2014年と2015年の初めに国連公認政府に対して攻撃を開始し、首都サナアとイエメン北部の他地域を支配して以来、フーシ派は禁止されている対人地雷を使用し、イエメンの都市に無差別に砲撃し、サウジアラビアにも弾道ミサイルを発射した。
水曜の王国南西部のアブハ空港へのドローン攻撃が、国連のマーティン・グリフィス・イエメン担当特使がテヘランを訪問した数日後であったことを指摘し、政治アナリストのハムダン・アルシェリは「テヘランが解決策を全く模索していない」ことでフーシ派の攻撃を促進していると述べた。
「過去3週間に渡りフーシ派側からサウジアラビアやイエメン国内に向けて多くの攻撃があった。バイデン政権がフーシ派をテロ組織リストから除外するのは非常に奇妙だ」と彼はアラブニュースに語った。
確かに、フーシ派による人口密集地への攻撃の急増には、紛れもなく最も純粋な形のテロリズムを構成する行動パターンを見出すことができる。
フーシ派民兵の、援助の許可を遅らせることで援助を受取人を人質に取るという、よく知られた戦術について考えてみてほしい。
APの報告によれば、2020年の初めに、フーシ派は国連によるイエメンでの援助提供プログラムの半分を阻止した。「この強引な戦術によって大規模な援助キャンペーンに対する影響力を国連から奪い取り、同時に諸外国からの数十億ドル分の支援を無に帰した」
経済が急速に悪化する中、国連からの援助はイエメンにとって大きな外貨源だ。2019年、国連は本キャンペーンのために約30億ドルの国際寄付を受け取った。
AP通信によると、フーシ派は、誰が援助を受けるかについてより大きな影響力を手に入れられるような条件に応じた場合のみ、彼らの管理下にある地域へのアクセスを許可している。
フーシ派による予算の2パーセントに対する要求に応じた場合、6000万から8000万ドルがフーシ派が援助調整機関と称するSCMCHAの財源となっていただろう。「援助隊員によれば、フーシ派による嫌がらせ、脅迫、横領の疑いは何年にも渡るという。更に、反政府勢力である彼らが2018年の初めに同援助調整機関を設立して以来それは悪化した」とAPは報告した。
2020年の終わりにかけてヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が出した、イエメンで活動する人道支援団体に多くの障害をもたらしたとしてフーシ派の民兵をとりわけ非難した「Deadly Consequences」というタイトルのレポートで、改めて批判された。
「COVID-19の蔓延を防ぎ、イエメンにおける他の緊急の健康課題に対応するための努力は、フーシ派などの組織が国際援助機関や人道組織に課す煩わしい制限や障害によってひどく妨げられてきた」とHRWは述べた。
「5月以来、フーシ派は世界保健機関の所有するホデイダ港で262のコンテナを、そしてCOVID-19対応のための個人用保護具(PPE)の大量配送をブロックした。
フーシ派は、他の援助障害物の撤去に関する交渉材料として配送を一部使用しようとし、8月下旬または9月上旬に118個のコンテナを解放することに合意した」
HRWは歯に衣着せず次のように述べている。「フーシ派は、援助の一部をフーシ派幹部や支持者、兵士に転用するために、援助を必要とする民間人に援助機関が到達するのを妨害したという、特にひどい過去を持つ。2019年と2020年には、援助機関によるプロジェクト終了時に車、ラップトップ・パソコン、携帯電話などの資産をフーシ派に引き渡すようフーシ派幹部が主張し、援助隊員はそれに反抗しなければいけなかった」
HRWのレポートが出てから4か月後の1月10日、米国務長官のマイク・ポンペオがフーシ派を世界的なテロ組織に指定したことを発表すると、米国財務省の外国資産管理局はその判断による人道的および商業的影響を軽減することを目的としたいくつかの包括許可や輸出免税を発行した。
イエメンは食糧の90%を輸入に依存しており、2900万人の人口のうち80%が援助を必要としているため、これは重要な判断だった。
しかし、イエメンの人口のほとんどが住んでおり、援助の必要性が最も高いエリアはフーシ派の管理下であるため、援助機関にとっての課題は依然として困難だ。
WFPは、イエメン全土の3,000を超える保健センターで170万人の母子に援助を届けることを目指す。イエメンでは、紛争が進むにつれ、毎年栄養失調率が高まっている。 (WFPによる写真)
HRWの「Deadly Consequences」が指摘するように、「フーシ派当局の正当性のない厄介な官僚的援助要件は、何百万人ものイエメン人の救命援助を妨げてた。イエメンの公認政府ではない、それでもフーシ派は彼らが支配する領土内のすべての人々の人権を保護するために行動すべきだ。」
過去にフーシ派は、ビザや機器や備品の輸入許可を差し押さえ、国連のミッションが彼らの管理下の地域を移動するための許可の発行を拒否した。
国連幹部によるフーシ派の一部の要求に譲歩する姿勢は全て、フーシ派指導者たちの要求の増加に繋がった。今回バイデン政権が無条件にフーシ派民兵を米国のテロ組織リストから削除されたことで、彼らは間違いなく遠慮せず戦う気になっているだろう。
イエメン国境から約12km北にあるアブハ空港への攻撃に関して、イエメンのアシャルク・アルアウサト新聞の編集者、バドル・アルカタニは「要するに、イランがフーシ派民兵の判断を支配しており、フーシ派と米国とには何の関係も持ってほしくないという、イランから米国に対するメッセージだと私は思う」とアラブニュースに語った。
推定1600万人のイエメン人が飢餓状態で、今年の6月までには約5万人が飢饉に見舞われると予測される。(WFPによる写真)
「ワシントンがフーシ派に向けて前向きな一歩を踏み出したとして、それに対してフーシ派が前向きに返答したいと思っても、彼らには意思決定の権限がないため、そうすることはできない。
アルカタニによれば、イランは、米国を交渉テーブルに戻すことができたらイエメンを議題に含めたがっているそうだ。「国連特使(グリフィス)と米国特使(ティモシー・レンダーキング)は、2つの問題を分離しようとするでしょう」と彼はアラブニュースに語った。「2900万人のイエメン人が戦争、紛争、危機の主な犠牲者である限り、彼らの行末を無視することはできない。一方で、彼らの行末は多数のファイルの内の単なる一ファイルとして埋もれている」
アルカタニは、「私たちが今目撃している(実際の)衝突とは、いわばファイル同士の競合だと私は思う」と付け加えた。その裏で、推定1600万人のイエメン人が飢餓状態に陥り、今年6月までに約5万人が飢饉に見舞われると予測されている。