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有能な外国人や投資家に市民権を与えることは、湾岸協力会議のゲームチェンジャーになり得るか?

UAEは、世界で最も先進的な国の一つに急速になりつつあり、外国人にとって魅力的な選択肢となっている。(AFP通信)
UAEは、世界で最も先進的な国の一つに急速になりつつあり、外国人にとって魅力的な選択肢となっている。(AFP通信)
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23 Feb 2021 07:02:22 GMT9
23 Feb 2021 07:02:22 GMT9
  • 当局は最近、いくつかの基準に基づき選ばれた外国人に市民権を与える計画を発表した
  • 専門家らは、この決定はより幅広い経済に恩恵をもたらし、外国人がこの国の将来に本当の意味で利害関係を持つことになると言う

レベッカ・アン・プロクター

ドバイ:UAEの7つの首長国では、外国からの移民労働者が人口の90%近くを占めており、民族的、文化的に世界で最も多様性のある国の一つとなっている。しかし、外国人にはこれまで市民権を申請する機会が与えられたことはなく、市民権取得への道筋も示されたことはなかった。

今、UAEの政権が採用し、この長年の慣行を覆す法改正が、この国の将来に変革的発展をもたらし得るものとして、歓迎されている。

アラブ湾岸諸国の政策開発プロセスが類似していることを考慮すると、UAEの動きは、経済の多様化を図り、同じ人口問題に取り組んでいる他のGCC諸国の先例になり得るだろうかと考える専門家もいる。クウェートの投資家でアドバイザーでもあるアリー・アル・サーリムはツイートの中で、首長国の市民権提供は「湾岸諸国のゲームチェンジャー」だと述べた。

UAEがこの新しいアプローチのリスクと恩恵をどのように管理するかに注目が集まることは間違いないだろう。いずれにしても、同国に居住する選りすぐりの外国人グループのみが、首長国の国籍を取得する資格を得ることになると見込まれる。議員らは、投資家や、才能のある革新的な人たちに市民権を与えることは、より幅広い経済に恩恵をもたらし、外国人がこの国の将来に本当の意味で利害関係を持つことになると考えている。

「我々は、投資家、科学者、医師、エンジニア、芸術家、作家とその家族を含む専門人材や専門職にUAEの市民権を付与することを可能にする法改正を採択しました」と、ドバイの支配者であるムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム首長が1月30日のツイートで述べた。「新しい指令は、我々の発展の旅に貢献する才能ある人材を呼び込むことを目的としています」。”

何十年もの間、外国からの移民労働者は、サービス業から高度専門職に至るまで、UAE経済の頼みの綱となってきた。その大部分は南アジアや東南アジアの労働者で、賃金を母国に仕送りしている。

しかし、このような人口階層の居住権は、就労ビザに大きく左右されたままだ。UAEで外国人の両親との間に生まれた子どもにさえも、首長国の市民権は与えられない。

新しい法律の下では、内閣、執行評議会、現地の裁判所が、厳しく定められた基準に従い、市民権を取得する資格がある者の指名を開始する。国営のエミレーツ通信社が発表した声明によると、投資家、医師、科学者、クリエイティブな産業に携わる人々が最初に検討される対象となる。

「アラブ首長国連邦は、多民族、多宗教、多文化な国家になるまさに只中にあり、その実現のためにあらゆる段階を確実に踏んで行っています」と、レバノンの政治家・経済学者で、以前には経済産業大臣を務めたナーサル・サイディがアラブニュースに語った。

「新しい市民権法は、まさにこれと同じ方向性となっています。以前は、形式はどうであれ、単なる訪問者でしかなかったのです。雇用され、投資をしても、この国に対する長期的な利害関係はありませんでした。外国人に対してUAEの市民権を与えるということは、この国に長期的な利害関係を持つことになるということを意味します」。

この湾岸国家の機能は、大規模な国際労働力(右)に依存しているが、市民権取得への道はこれまで、簡単ではなかった。(AFP通信)

ここで、迫りくる湾岸地域の人口問題がある。ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金提供したワシントン大学シアトル校健康指標科学部のある研究は昨年、2050年までに151カ国で人口を維持するのに十分な数の赤ちゃんが生まれなくなると予想した。

出生率の低下は、湾岸諸国では既に問題となっている。2017年の世界の出生率は2.37だったが、GCC6カ国ではわずか平均1.84となった。カタール、バーレーン、オマーンでは人口を維持できなくなる寸前だが、サウジアラビア、クウェート、UAEでは既に着実に減少している。

2100年までには、これらの国々の状況はさらに悪化し、出生率はサウジアラビアでは1.32から1.39、UAEでは1.23から1.27に低下すると予測されている。

GCC諸国には、また更に別の問題もある。経済の多様化を目指すと同時に、重要な役割を担う外国人労働者を自国民に置き換えようとしているのだ。

過去に遡って、職場や社会全体での男女平等の進展を取り消すことは不可能だ。同様に、女性の意思に反してより多くの子どもを産むよう説得しようとするのは、現実的な解決策ではない。

国内の人口が減少している高所得国に関しては、ワシントン大学の研究者らは、出口は1つしかないと見ている。「経済成長、財政の安定、地政学的安全保障のための最適な戦略は、これらの社会への効果的な社会統合を伴う自由な移民です」。

しかし今のところ、UAEのパスポート取得を目指すことができるのは、選ばれた外国人と専門職だけだ。声明によると、市民権を求める投資家は、UAEに資産を所有するか、UAE経済省からの推薦状に加えて、同省または他の信用のある国際機関が承認した特許を1つ以上取得していなければならない。

医師は特色ある科学分野を専門とするか、UAEで需要の高い分野を専門としなければならず、科学者は大学や研究センター、民間部門にて、同じ分野で10年以上の実務経験を持つ現役の研究者であることが求められる。

一方、知識人や芸術家は、その分野の先駆者とみなされ、1つ以上の国際的な賞を受賞していることが理想だ。また、関連する政府機関からの推薦状も必須だ。

この政策の特に魅力的な側面の一つは、UAEの新規パスポート申請者が既存の市民権も維持できるということだ。

「母国の市民権は維持できます。これは多くの人にとって非常に重要なことです」と、サイディは語った。「この観点からは大きな利点があります。重要なのは、経済の観点からこれが本当に言わんとしていることは、この国のリーダーになれるということです。人的資本を呼び込み、維持できることになるでしょう」。

市民権法の改正が発表される前、企業が首長国国籍の株主を据える必要性をなくすことで、投資家をさらに歓迎する国を作るため、UAEは外国人持株比率に関する法律を改正するための様々な施策を発表した。

新しい法律の下では、内閣、執行評議会、現地の裁判所が、厳しく定められた基準に従い、市民権を取得する資格がある者の指名を開始する。(AFP通信)

2019年、UAEは裕福な不動産投資家や起業家、「専門人材および研究者」に延長ビザを付与する計画を発表した。2020年後半、政府は「ゴールデン」ビザプログラムを拡大し、一定の所得レベル以上の人に5年間の退職ビザを提供し始めた。その後、海外で雇用されている人には、最低給与要件を満たすことを条件に、1年間の滞在を認めるリモートワーカービザを導入した。

「第1の利点は、他の国籍の新しい人々に触れることで、より多様な技能を持った労働力を生み出すことです」とサイディは、自由化されたUAEの居住規則に触れながら語った。

「第2に、この考え方が、『作れば、人はやって来る』というUAEの過去の経済モデルから、知識や技術志向の産業発展により基づいたモデルへの脱却であるということです。第4は、人材を維持すること、第5は、国内への外国直接投資を増やすことです」。

専門家らは、UAEのビザ政策の変更の多くは、経済成長の鈍化、原油価格の低迷、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした経済的打撃への対応策として見ている。

「2015年以降、原油価格の浮き沈みがありましたが、これは、多様性のないモデルを継続することが、特に世界中の国々が二酸化炭素排出量の削減に動いている気候変動の時代には、ますますリスクの高い判断になるということです」とサイディは話した。

「各国がエネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの更なる利用にシフトしていく中で、石油の市場は時の経過とともに小さくなってきています。化石燃料資産のリスク回避を考えるなら、サウジアラビアがアラムコで行ったようなことをすることになるでしょう。今は誰もがリスクを回避したいと考えていますが、それは、多様化をさらに進め、エネルギーを多く消費する活動からの脱却を意味します。これは、この3、4年の間に行われてきたことです」。

多様化するために、UAEの議員らは、熟練労働者や大口投資家を誘致することが、将来の石油ショックから経済を守ることになり、カーボンニュートラルな世界に備えることになることを期待している。その過程で、UAEが積極的な多民族社会へと進化していくことも期待されている。

「ビジネスの観点から見れば、ここに安全で長期的に住める家があると思えることほど、人々に我が国で現金を惜しみなく使うことを促すものはありません」と、首長国の実業家で、カヌーグループ副会長のミシャル・カヌーがアラブニュースに語った。

「このアイデアは、世界中からその分野で最も優れた優秀な人材がここに来て住み、経済に貢献することを促すということで、これは経済だけでなく、成長と発展のための新しいアイデアにも変化をもたらすでしょう」。

首長国の有識者らは、変化は一朝一夕には起こらないと考えており、成熟した市民がわずか100万人の若い国では、多少の不安があると考えている。

「法律は発表されましたが、発表されてから実施に至るまでは、様々なことを確認し、再検証する必要があるでしょう」とカヌーは述べた。

「どのような変化も不安の源となります。どんな恐怖にも打ち勝つための最善の方法は、足を突っ込んで、どうなるか確認することです」。

ツイッター:@rebeccaaproctor

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