
ナジア・ハウサリ
ベイルート―レバノンは1日、新型コロナウイルスのワクチン接種キャンペーンの3週目に入った。これに合わせて、店舗やショッピングモールが、1月21日の閉鎖以降初めて営業を再開している。
しかし、この営業再開については、国内の医療専門家から警告が発せられている。ハリリ国立大学病院のディレクターのフィラス・アル・アビヤド博士は、「我々は自分たちをごまかしている。現実は異なるからだ」と述べた。
レバノン保健省が公開した統計では、一日平均の感染者数は3000人超を維持しており、平均死亡者数も40人超で推移している。27日現在の新型コロナウイルスの感染者数は合計37万2792人で、この間の死者数は4652人となっている。
医療専門家はこれまで、ワクチン接種キャンペーンが、“亀の歩みのようにのろのろと”進行していると主張してきた。病院でのワクチン接種プロセスに沿わない形で、11人の国会議員への接種が行われたことは新たな違反行為であり、これも国民の怒りを買った。
保健省のアドバイザーであるモハメド・ハイダル氏は、次のように述べた。「接種プロセスが遅くなっている原因は、毎週、少しずつしかワクチンが到着せず、それをすべての病院に配布する必要があることだ。これまでに約10万回分のファイザー製ワクチンがレバノンに到着した一方、30万回分のアストラゼネカ製ワクチンが今月中に届くと見込まれている」
レバノンは、世界銀行から資金を借り入れて220万回分のワクチンを確保した。うち2万080回分が最初の週に、3万1590回分が2週目に、4万1300回分が27日に到着した。
保健相は、次のように明かした。「モデルナ社は少し前、レバノンに対し、同社製品を供給するためのいかなる契約も締結できないと通知してきた。なぜなら、同社は、5ヵ国のみで製品を販売するという約束を事前に交わしていたからだ。それでも同社は、2022年1月以降に発効する契約を交わす用意がある」
同省は、これまでに予約した273万回分のワクチンは、レバノン国民の20%に接種するのに十分な量になると確信している。国の計画によると、今年第1四半期中に24万9000回分を使用し、残った分を3回に分けて今年第2~3四半期に使用する見込みだ。
しかし、この国家計画に基づき、最初の2週間にワクチン接種を受けた人数、つまり医療・看護スタッフと75歳以上の高齢者の人数は、接種対象集団全体の3%未満となっている。
ベイルート・アメリカン大学のコロナウイルス研究所によると、毎日、2858回分のワクチンが供給された一方、ワクチンセンターの一日当たりの接種対応能力は1万4000回となっている。
国会議事堂で国会議員にワクチン接種を行ったというスキャンダルの後、コロナウイルスワクチン国家管理委員会の委員長を務めるアブドゥル・ラフマン・ビズリ博士は、辞任しないことを決めた。同博士は、ワクチン接種プロセスがこれからも進行することを確認し、「国民の命でギャンブルをするようなことは容認されない。そうではなく、我々は一切の自由裁量による例外なく、ワクチン接種における絶対的な透明性と公正さを確保しつつ、ワクチン接種プロセスの継続を重視すべきだ」と述べた。
また、同博士は「私は、ウイルスに最も晒され、ワクチン接種もまだ受けていない医療従事者、看護スタッフ、救急医療隊員からの声を理解している」と述べるとともに、「すべての人がパンデミックの感染拡大の危険に晒されているが、問題は、ワクチンの数量が足りないということだ。我々は、より大きな量のワクチンが到着し、望ましいワクチン接種プロセスを進めるまで、今後新たに数週間待たなければならない」と付言した。
フィラス・アル・アビヤド博士は、次のように訴えた。「国民からの信頼を回復し、社会全体で安全対策をより良く実行することだ。人々に計画を説明する適切な周知キャンペーンの不足、計画における人々の役割、計画の失敗の影響により、国民のふるまいが変わるかどうかを知るのが困難になるからだ」