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フランシスコ教皇の訪問で、イラクのクルディスタンにある安全な避難先の現状に焦点が絞られる

エルビルのキリスト教徒多数派地域、アンカワに位置するMar Elia カルデアカトリック教会で説教を行うNashwan Hanna氏。(Kareem Botane氏)
エルビルのキリスト教徒多数派地域、アンカワに位置するMar Elia カルデアカトリック教会で説教を行うNashwan Hanna氏。(Kareem Botane氏)
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07 Mar 2021 06:03:28 GMT9
07 Mar 2021 06:03:28 GMT9
  • 比較的安全で安定している事により、北部の自治区は宗教的少数派や反体制派の聖域となっている。
  • ISILによる2014年の襲来がシリア人難民と共にキリスト教徒、ヤジディ教徒、シャバク人、その他の少数派達をクルディスタン地域に追いやった。

Kareem Botane Meethak Al-Khatib と Robert Edwards

エルビル / メキシコシティ:少し前の朝、そっと聖書のページを捲りながら、Sahar Ayoub氏はISILの過激派が約7年前にニネヴェ行政区域北部の町、カラコシュを占拠した際に家族が経験したトラウマに考えを巡らせた。

その過激派グループが2014年にイラクの民族宗教的少数派に対して根絶運動を始めた際、彼女とその夫であるAmeer Bahnam氏は三人の子供達と避難せざるを得なかった。

50歳のAyoub氏は、エルビルにあるキリスト教徒多数派地域のアンカワにある自宅リビングに座りながら、日曜日のフランシスコ教皇によるイラクのクルディスタン主要都市への訪問で、長らくしかるべきと感じていた彼女達に対する認知がなされる事への希望を表した。

「イラク内のキリスト教徒達は、以前は他のイラク人達と全く変わり無く尊重され、配慮ある扱いを受けていました、」と彼女はアラブニュースに語った。「でもそれは2003年から新政府が国内でイスラム教徒とキリスト教徒、そしてシーア派とスンニ派間で宗派間の分裂を生んだ時に変わったのです」

「イラクでは、キリスト教徒としての私達に自由はありません。行う儀式や着ている物で判断されます。イラクでは私達に宗教の自由は存在しません」

エルビルのキリスト教徒多数派地域、アンカワに位置するMar Elia カルデアカトリック教会で説教を行うNashwan Hanna氏。(Kareem Botane氏)

57歳のBahnam氏は、彼の家族はいずれ欧州へ発つつもりでクルディスタンの半自治区に移ったと語った。だが状況を把握するべくアンカワに収まった後、そこで彼らは長らく望んできた物を見つけた — それは受容であった。

「私はここクルディスタンでは対等で安全だと感じています、」とBahnam氏は言う。「キリスト教徒として宗教の自由が存在しているのです」

「イラクのキリスト教徒達には十分な権利がありません。抑圧に直面し、私達の儀式を自由に行うことに抵抗を感じます。でもクルディスタンではそうではありません。イラクの他の地域では私達は部外者のように感じますし、何かが欠けているのです」

イラクのシーア派宗教指導者の大アヤトラ、アリ・シスターニ師と土曜日にナジャフで会合後、フランシス教皇はクルディスタン地域へ向かう北部へ移動する予定であった。イラクの宗教的少数派、言論の自由の提唱者、政治的反体制派達は長い間、故郷での迫害と暴力を受けてここに聖域を求めてきた。

フランシス教皇は日曜の夜に、ソーシャルディスタンスを考慮して会場の収容可能数以下に人数が制限されたエルビルのフランソ・ハリーリー・スタジアムにて、10,000人を前にミサを開催する予定であった。フランシス教皇は安全上の理由で全訪問期間中にこの1度のみ、一般の人々と会することとなっている。

クルド人はイラクの4,000万人の人口の内、かなりの割合を占めている。しかし最近の国勢調査データが存在しない為、緑豊かな山岳地帯を構成するエルビル、スレイマニヤ、ダフーク、ハラブジャ等の北部地方にいるクルド人の正確な数を確認するのは困難だ。

エルビルとバグダッドの関係は長い間不安定で、クルド人が独立に関する拘束力のない住民投票を開催した2017年後半にそれが顕在化したが、クルド語はアラビア語に次いでイラクで2番目の公用語として認識されており、2003年以降のイラクの首相3名全員もクルド人である。

反逆を試みるクルド人に対するサダム・フセインからの厳しい復讐を防ぐため、湾岸戦争の終わりに介入した米国主導の連合による支援と上空援護の下で、クルド人達は1991年に自己管理地域を作り上げた。

1988年のサダムによるアンファール作戦と、ハラブジャへの悪名高い化学攻撃の残酷さで既に苦しんでいたクルド人は、西洋側が気を向けなければ、サダムが彼らを一掃するつもりであった事に疑いの余地はなかった。

独自の議会と大統領、百戦錬磨のペシュメルガ治安部隊、そして寛容の文化を持つクルディスタンの政治生活を汚職と部族主義が損ない続けてはいるものの、固有の宗派間での暴力と混乱で荒廃している連邦制国家のイラクと比べても引けは取らない。

2014年の夏にISILがイラク北部を襲撃してモスルを占拠した際、虐殺に触発された人々が迫害されたニネヴェ平原地帯の少数派達に対して容易に扉を開いたのは、恐らく意外な事ではなかった。

安全を求めて近隣シリアからの難民数千人と共に数十万人のキリスト教徒、ヤジディ教徒、シャバク人、カカイ教徒、その他少数民族達がペシュメルガの検問所を通り抜けた。

人道援助機関が追放者達の受け入れの為に乱れる難民施設に素早く到着する中、多くのキリスト教徒達はアンカワへ向かった。手段を持つ人々は欧州や、その先へと移動を続けた。

Ameer Habib Bahnam氏と彼の妻、Sahar Ayoub氏はクルディスタンでは自身達の信仰の教えに安心して従えると述べた。(Kareem Botane氏)

「フランスに移り住む為ビザを申請しましたが、コロナウイルスにより発生している事態のせいで、これまでに進展はありません。」とAmeer氏は語った。「子供たちがカラコシュにある自宅に戻るのを恐がっているので、フランスに行きたかったのです。子供達はISILが来た時に起きた事でトラウマを抱えています」

トラウマ的な体験について詳しく述べながら、Sahar氏は「ISILが私達の家にあった物を燃やして盗みました。私達はカラコシュが開放された後に家を確かめに行ったのです。それ以来私達は戻りたくありません。あそこは今、安全ではないのです」と語った。

「もし教皇に会ったなら、イラクのキリスト教徒達の為に彼は解決策を見つけなければならないと伝えるでしょう。ここでは一切の権利もないので、彼に国外へ連れ出してほしいと頼むでしょう。ここに居たくはありません。それかもしくは、私の街を安全にして権利を保障するのでも良いのです」

Sahar氏 とAmeer氏だけではない。多くのキリスト教徒家族達がイラクで安全に生活を送る事を単に諦めたのだ。

「イラクのキリスト教徒にとって人生とは、未来も無く、戦争の中で生きる事を意味します、」と28歳のJuliana Nusrat氏がアラブニュースに述べた。

「教皇に会って私達が体験している事を伝えられる事を望んでいます。彼にはイラクから私を連れ出してほしいと伝えたいです。イラクでは希望を失いました。イラクでこれ以上子供を増やしたくはありません。ここに未来は無いのです。私の娘にはイラクの外で未来を歩んでほしい」

ISILによって2014年に殺害されたイラクのキリスト教徒達を追悼する、エルビルのアンカワにあるMar Elia カルデアカトリック教会の外に建てられた追悼碑。(Robert Edwards氏)

彼女と彼女の夫、39歳のGazwan Zuhair氏もISILによるモスル征服を逃れて2014年にアンカワに来た。「家と何もかもを置いて、身分証明書だけを持って私達は自宅を後にしました、」とGazwan氏は語った。「終戦した時にモスルの自宅を見に行きました。持ち物全てが無くなっていました」

Gazwan氏はCOVID-19の流行で職を失った。二人とその娘は生きるのに苦労しているが、クルディスタン地域でささやかな穏やかさを見つけた。

「クルディスタンでは居心地が良いです。ここでは職は見つかりませんが、安全です」と彼は言う。

「クルディスタンとクルド人達はキリスト教徒達を大事にしてくれますし、私達も安全だと感じています。ですが国のその他の地域、特にキリスト教徒達が脅かされ脅迫されたモスルでは虐げられています」

「キリスト教徒として、私は国を去りたいです。イラクは私に権利や仕事をもたらしてはくれません。なら居続ける必要はあるでしょうか?もしかしたら別の国での人生のほうが良いかもしれません」

COVID-19の流行が始まり職を失ったGazwan Zuhair氏は、彼と彼の家族はクルディスタンで穏やかさを感じているという。(Kareem Botane氏)

イラクのキリスト教徒達による西洋への逃亡は東方典礼カトリック教会、シリアの正教会、アルメニア正教会、そしてカルデアも同じく、全宗派の教会指導者達にとって大きな懸念である。

2003年の米国主導の侵略以来、イラクのキリスト教徒達の人口は約150万人から2014年に350,000-450,000人あたりまで下落した。現在多くの人が海外への亡命を選択しており、その数はさらに減少している。

「教会として、海外に移住する為に国と教会から去る事を私達はキリスト教徒達に勧めていません、」と53歳のNashwan Hanna神父、アンカワのMar Eliaカルデアカトリック教会の司祭がアラブニュースに語った。

「私たちはクルディスタンとイラクにとって必要不可欠な要素です。これが私達の故郷です。私たちは私達の国で平和に、他を尊重しつつ尊重されながら暮らしたいのです」

「教皇がイラク中を巡る今回の訪問が、私達にここに留まる事を勧めています。私達のルーツはこの土地に根付いており、今回の訪問は私達に留まるよう促しているのです」

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