
チャーリー・ピーターズ
ロンドン:シリアで激しい紛争が始まってから10年経ち、シリア人の一世代全体が失われている。大手慈善団体の新たな報告書の中で、暴力のさなかに育ち、より安全な国へ逃がれた子供たちは、祖国に戻りたくないと語った。
「セーブ・ザ・チルドレン」は、『シリア以外のどこかで』と題された同団体の研究で、難民の子供たちの多くが近い将来自分たちが帰国するのを望んでいないという結果を確認した。
2020年11月から12月の間、この慈善団体はシリア(バシャール・アサド政権の支配地域)、トルコ、レバノン、ヨルダン、オランダで13歳から17歳までの1,900人以上のシリアの子供たちと対話をした。
結果は衝撃的だった。子供たちの約79%が、2年後、シリア以外の場所にいることを望むと述べたのだ。
オランダと近隣諸国の難民の子供たちのうち、わずか14パーセントがシリアへの帰還を望んだ。これらの国のインタビュー対象者の約64%は、現在の居住国への統合を望んだ。
シリア国内では、調査結果は明らかだった:子供たちは自国に留まりたくないのだ。調査した他の国々よりも、2年後に自国で暮らしたいと述べる傾向が大幅に低かった。
シリアでは悲観論が蔓延しており、子供たちは自分たちが望む場所で将来暮らすことができると信じる傾向が低い。
国内避難民のシリアの子供たちのわずか42%が、自分たちの願いが実現可能だと思うと答えた。これは他のどの国の子供たちよりもはるかに少ない。
約150万人のシリア難民を受け入れているレバノンでも、国内が最悪の景気後退により大きな圧力にさらされており、同様に悲惨な状況である。
「セーブ・ザ・チルドレン」のレバノン事務所の政策提言およびコミュニケーションディレクターであるナナ・ンデダ博士は、アラブニュースに次のように語った。「レバノンはシリア難民に明確な見地を示す。私たちは現在、全国民が基本的サービスへのアクセスの急激な低下や脆弱性の高まりに陥っているさなか、難民の窮状を非常に懸念している状況だ。
「レバノンは最悪の経済危機を経験中で、暴力と食料や医薬品、その他の基本的物資の不足事態が高まっている。これは難民の状態をさらに悪化させる。ここ数週間で貧困レベルが上昇し、状況は急速に悪化している。」
ンデダ氏はさらに、「レバノンの難民は現在、1年前の2倍の貧困状態にある。コロナウイルス大流行はそれを全く緩和しなかった。教育サービスが1年以上中断され、児童婚、その他の虐待、児童就労などの保護の問題増加につながっている。」
「多くの子供たちにとって、家庭の困難が、予定より早く就労する動機となっている。」
「セーブ・ザ・チルドレン」は、「表現の自由」と「将来子供たちが発言権を持つこと」がこのインタビューで持ち上がった重要なテーマであると報告した。
インタビューを受けた子供たちの多くは、家庭の外や社会で自分の声を聞いて欲しいと思っていた。チームは、レバノンの子供たちが、変化にプラスの影響を与えるための共同作業の価値を伝えることに特に熱心であることに気づいた。
「セーブ・ザ・チルドレン・トルコ」の政府関係顧問であるオーベン・コバン氏はアラブニュースに次のように語った。「シリアに戻るかまたはこのまま残るかという、子供たちの選択に関わらず、私たちは彼らに安全な未来を選ぶ安心感を持たせたいと思う。将来発言権を持つ子どもたちに将来が見えていないと私たちは強く確信している」と語った。」
レバノンと同様に、トルコはシリア難民の子供たちのために独自の課題を生み出した。 コバン氏は次のように述べた。「この10年間は、これらの子供たちにとって非常に残酷だった。彼らは家を離れ、新たな文化と国、そして新たな言語で定住しなければならなかった。
「トルコはレバノンやヨルダンとは異なる。ここでは、完全に異なる。350万人以上のシリア人が避難し、受入国コミュニティとの統合は困難だった。」
しかし、これらの文化的バリアと言語の違いにもかかわらず、シリアの子供たちは緊急にトルコを離れる意欲を示していない。オーベン氏は、「トルコの子供たちのうち、帰国を望んでいるのはわずか3%であり、非常に少ない。88%はトルコに残りたい。わずか9%が他国に行きたがっている。」と述べた。
シリア難民にとってトルコの経験は、いくつかのポジティブな面をもたらした。「女子は他の多くの受入国よりも就学の可能性が高く、言語の違いは、私たちの予想に反して、トルコでの子供たちに「よそ者」と感じさせなかった。子供たちからの最も重要な要求は、トルコの社会に溶け込み、文化を理解したいということだ。」
オランダ、北ヨーロッパ、そして想像し得る限りシリアの生活からは遠く離れた場所でも、同様の結果が見られ、子供たちは受入国に留まりたいという希望を表明した。
「セーブ・ザ・チルドレン・オランダ」のロビー活動および擁護責任者であるジュリエット・バーホーベン氏は、アラブニュースに次のように語った。「多くの子供たちが、オランダに住むことを自分たちの生活の中で何か前向きなものだと感じていた。オランダにいるシリアの子供たちの90%以上がここに残りたいと思っている。約5%は、別の第三国に行くかもしれないと言った。それは本当に際立っていた。
難民の受け入れに関して調査を受けたオランダと他受入国の間には、かなりの違いがある。トルコでは、難民という資格が取得できるか定かでない上、定期的に更新する必要がある。
言語的および文化的障壁がある上、難民は、シリア難民に対しては定期的に変更されるトルコの融通の効かない政府規制にも立ち向かわなければならない。
対照的に、バーホーベン氏は、オランダでは「シリアに送還されることはない。オランダ政府によって安全でない国とラベル付けされているため、当人がすでに別のEU加盟国に登録されていない限り、すべての難民が資格を取得する。難民の資格を取得すると、5年間の許可がおりる。5年後に市民権を取得する可能性が高くなるのだ。」
シリアからの子供たちの難民は、多くの点で、両親よりも早く受入国に適応している。オランダのすべての難民には言語を学ぶ機会が与えられているが、シリアの子供たちは文化に触れて成長するので、両親よりもはるかに早く言語を学ぶ。
バーホーベン氏は、これが「シリアの子供たちと両親との間の知識のギャップの一因である」と述べた。子供達は皆、両親とは溶け込む過程のペースが異なり、シリア社会よりもオランダ社会とのつながりを感じていると述べた。
トルコ、レバノン、オランダでのこのような様々な体験を踏まえ、シリア避難民の子供たちの間で一貫して一連の似通った考えや感情が見られる。彼らの最優先事項は、暴力を止めたいという普遍的な願いである。
報告書の研究者によると、彼らは、停戦が続き、ある種の政治的解決がシリアで始まるまで、自分たちの日常生活が決してもどらないことを知っている。しかし、この地域の政治的および軍事的関係者が定期的に変化しており、その時期がいつ来るかは不明である。
それが実現するまで、シリアの失われた世代は、自分たちが築いている安全で離れた家に留まりたがっていると予想される。
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