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イスラエルの選挙結果は近隣アラブ諸国の人々やパレスチナ人にどのような影響を与えるのか?

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23 Mar 2021 12:03:05 GMT9
23 Mar 2021 12:03:05 GMT9

与えるのか?

  • 火曜日の総選挙は、これまでの3回の選挙よりも決定的な結果をもたらす保証はない
  • イスラエルの政治システムの本質的な不安定さは、アラブ地域全体に神経質な期待を生じさせる

ヨッシ・メケルベルグ

ロンドン:終わりのない選挙に慣れてきたのは、イスラエル人だけではない。今週でこの2年間で4度目だ。地域全体が、イスラエルの近隣諸国の人々、特にパレスチナ人に対する政策への影響を検討する必要に迫られている。

イスラエルの政治システムが本質的に不安定であるということは、選挙が行われるたびに、中東や北アフリカ全体に不安な期待感を生じさせるということだ。この緊張感はイスラエルの政策の揺れ動きから生じているものだが、この政策は、有権者を惹きつける必要性と、常に行われている、耐え難く、終わりのない連立の形成と解消という制約の両方から生じているものだ。

火曜日の総選挙が、それまでの3回の選挙よりも決定的な結果をもたらす保証はない。

一方、現職のベンジャミン・ネタニヤフ首相が、内政と外交を行っているのは、必ずしも国と国民の利益のためではなく、何よりもまず自分の在任期間を長くするためであり、現段階では主に贈収賄、詐欺、背任の3つの事件に関する汚職裁判の裁きを逃れるためでもある。

イスラエルの有権者にとっても、国際社会にとっても、ネタニヤフ首相の汚職と気ままな行動に関する調査が始まってから4年以上が経過した今、イスラエル政府のどの政策が真の戦略的展望によるもので、どれが単にネタニヤフの裁判を頓挫させ、有罪判決を回避するためのものなのか、見定めることはほとんど不可能になっている。

しかし、選挙後の様々な可能性を考えてみると、イスラエルの地域政策に関しては、ネタニヤフ首相が続投しようが辞任しようが、劇的な変化は予見できない。

イスラエルの選挙の主要候補者

* ベンジャミン・ネタニヤフ、リクード  

*ヤイール・ラピッド、イェシュ・アティッド  

*ナフタリ・ベネット、ヤミナ  

*ギドン・サール、新たな希望  

*アイマン・オーデ、ジョイントリスト  

*アヴィグドール・リーベルマン、イスラエル我が家 

非常に危険なのは、ネタニヤフ首相が留任した場合、司法の流れを逸らすために取られた決定の流れが続き、それが冒険主義や彼の右派層への迎合につながる可能性があることだ。

火曜日の選挙で彼の政治家人生が終了した場合、イスラエルは何らかの右派政権になる可能性が高い。より中道派を取り込んだ政権になる可能性もあるが、必ずしもそうというわけではない。

他の3人の首相候補、イェシュ・アティッドのヤイール・ラピッド、ヤミナのナフタリ・ベネット、新たな希望のギドン・サールのうち、タカ派的ではない外交政策とパレスチナ人に対する比較的融和的な政策を提示する可能性があるのはラピッドだけだ。

しかし、連立政権となるのが避けられず、これに参加する他のメンバーを考えると、彼が暗躍できる余地は非常に限られており、ポスト・ネタニヤフのリクードがその連立政権に参加することになれば、なおさらだ。

したがって、もし変化が起きるとすれば、あらゆる面でより微妙なものになるかもしれない。

2021年3月20日、3月23日に行われる選挙を前に、イスラエルの首相官邸前で行われた反政府デモで集まる抗議活動家ら。(AFP)

イスラエルの政治を外から観察している人は、パレスチナ問題が選挙の時の1番の問題ではないにしても、国民の関心が高い議題となることを期待するかもしれないが、実際にはそうではない。

この問題は、イスラエル社会にとっての重要性とは逆相関的に周辺化されており、左派の小政党かアラブリスト連合の政党に限られている。主要政党の中には、代替案を提示したり、パレスチナ人がヨルダン川西岸地区やガザ地区での生活を強いられている悲惨な状況を訴えたりする用意のある政党はない。

どの政党も、ヨルダン川西岸地区の継続的な占領と、同じく占領の一形態であるガザの封鎖の、道徳的な意味合いはおろか、現実的な意味合いとも対峙しようとはしていない。

パレスチナ側には平和のパートナーがいないというのが世間一般の通念、というよりむしろ、社会集団による否定であり、現状では、二国家解決と、パレスチナ難民の地位やエルサレムの将来を含むすべての未解決の問題の公正かつ正当な解決に基づいて、真の平和交渉に入る緊急性はない。

世論調査から判断して、また結果的に将来の連立政権の様々なシナリオから判断すると、昨年夏のアブラハム合意で阻止された脅威であるヨルダン川西岸地区の広大な土地の併合を求める人々は、次期政権に極めて大きな影響力を持つ可能性がある。

このような勢力は、ユダヤ人入植地の拡大を推し進め、イスラエル政府の目から見ても違法であるヨルダン川西岸の何十ヶ所もの前哨基地を合法化し、パレスチナ人の土地をさらに没収し、総じてパレスチナ人の生活を可能な限り不快にするかもしれない。

2021年3月17日、ハイファ近郊のカフルカラにあるゴラニ軍事基地で、同国の次の立法府選挙の期日前投票を行うイスラエル軍兵士。(AFP通信/資料写真)

クネセトの構成次第では、より現実的な政府が誕生する可能性もあるが、それでも少なくとも残念な現状を維持しなければならないという圧力の下での政府となるだろう。

次期政権の優先議題となるであろう主要問題は、イランと、それに密接に関連するシリアやレバノンとの関係だ。イスラエルにとって、特にネタニヤフ首相の下では、イラン政府とのJCPOA核合意は、当初から牛にとっての赤い布のようなものだった。核合意に反対し、イラン政府がその条件を守るとは一度も考えず、イランの核軍事能力の開発を阻止するのではなく、せいぜい遅らせる程度だと見ていたのだ。

イスラエル国内では、イランがイスラエルに対して存立を脅かす脅威とまではいかなくても、少なくとも非常に深刻な脅威であるという、幅広いコンセンサスが得られている。その当然の帰結は、外交的な形であれ、イランやシリアなど、イスラエルの標的に対抗してイラン政府が活動している地域における隠密・公然の活動を通じてであれ、イスラエルが積極的にアプローチするというものだ。

ネタニヤフ首相以外の政権では、より厳しい査察体制とイランの長距離ミサイル開発に対する制約を設けることを条件として、JCPOAへの参加を再び決意した場合に、バイデン政権との対立を避けるような、より繊細なアプローチができるかもしれない。

この文脈において、イスラエルの次期政権は、シリアにおけるイランの軍事的プレゼンスが強化されることに懸念を示し、レバノンのヒズボラに向かう武器護送船団への攻撃とともに、シリアにおけるイランの標的への空爆は続くことになるだろう。


2021年3月21日に撮影された写真には、イスラエルの沿岸都市テルアビブのハビマ広場に設置され、投票を促すことを目的とした、アーティストのソフィー・ハルブライヒによる90個の頭部を彫刻したインスタレーション「声を上げろ!」が写っている。(AFP通信)

膨大な数の精密誘導ミサイルの貯蔵を含む、イスラエルの北側国境にある後者の軍事力増強は、イスラエルの戦略家らが非常に深刻に受け止めている脅威である。

イランの核開発と同様に、抑止力、静かな外交、限定的な作戦運用がイスラエルが選択する政策となり続けるだろう。しかし、ヒズボラがある閾値を超えた場合には、あからさまな敵対行為が現実的な可能性として残る。

最後に、ネタニヤフ首相が近年成し遂げた珍しい成果の一つに、サウジアラビアとの既存の非公式な協力関係に加えて、UAE、バーレーン、モロッコ、スーダンとの国交正常化協定や、エジプト、ヨルダンとの和平協定がある。

この情勢を維持し、これを基にさらに築き上げて行くことが次期政権の課題である。しかし、パレスチナ紛争が解決の兆しを見せず続く限り、最近のイスラエルとヨルダンの緊張の高まりに見られるように、パレスチナ紛争がこれらの地域関係を台無しにする可能性は常にある。

今週のイスラエルの選挙を受けて、この地域に関しては変化よりも継続を目にすることになると言うのが無難だろう。しかし、次の連立政権の構成とその中の主要な勢力によっては、良くも悪くも何らかの変化の到来を告げる可能性はまだある。

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 *ヨッシ・メケルベルグは、リージェンツ大学ロンドン校の国際関係学の教授で、国際関係・社会科学プログラムの責任者を務める。また、チャタムハウスのMENAプログラムのアソシエイトフェローでもある。ツイッター:@YMekelberg

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