

ハジーム・バルーシャ
ガザ市:パレスチナの人々には、ラマダン期間に親族を訪ねるという伝統がある。特に、兄や弟や父親が姉や妹や娘を、また、結婚した息子が両親を訪ねたりする。
パレスチナの人々はラマダン中、日没後にとる食事イフタールの後、カタイフ等のパレスチナのデザートを食べたり、ハイビスカス、キャロブ、タマリンドといったジュースを飲んだりして、家族で一緒に時を過ごす。
しかし今年のラマダンは、新型コロナウイルスの影響で事情が異なる。ガザ地区のパレスチナ当局が、日没から日の出までの外出制限を課したため、多くの人々は親族を訪問することができなくなっている。
67歳のハリル・アル・アサリさんは、ガザ地区が置かれている状況に憤りを表明した。
外出制限のせいで、「親族を訪問することができません。私たちはほとんどの時間を家の中で過ごしています」とアル・アサリさんは述べた。
「私はもう何十年も、毎年ラマダンの2日目から、結婚した兄弟や姉妹や娘たちの元を訪れてきました」と彼は続ける。
「しかし、今年は誰のところにも行っていません。なんと言っても、みんな私の家から徒歩で行くことはできない離れた地域に住んでいますから」
ガザ地区では、第2波で感染拡大のピークを迎えている。
ハマスが支配する当局は、金曜と土曜は終日、残りの日も日没から夜明けまでの外出制限を課した。
ガザ地区では最初の感染発生以来、10万人以上のパレスチナ人の感染が記録されている。保健省の記録によれば、死者数は900人近くになる。
親族との親交を温めることは、パレスチナ人の間では文化やイスラム教と関連した習慣のひとつと見なされており、「シラート・アルラハム」と呼ばれる訪問は、イスラム教が積極的に推し進める習慣のひとつだ。
「私たちは、特定の日に関係なく定期的に親族を訪れます。しかし、ラマダンやイードといった特別な機会には、女性親族の家を訪れ、彼女らに祝いの言葉を述べ、贈り物を受け取らなくてはなりません」とアル・アサリさんは言った。
「これは私たちイスラム教徒の習慣となっており、女性たちは、父親や兄弟や叔父たちを訪問することを喜びとしています。私はそれを父から学び、息子たちにも教えました」と彼は付け加えた。
女性たちは、毎年ラマダンになると、照明や特別なポスターやランタンなどで家を飾り付け、聖なる月間を祝って来客を迎える準備をする。
パレスチナの人々は、ラマダンには集まってイフタールを共にし、その後は屋内や、春夏の季節であれば開けた公園などで、夜更かしをしながら時を過ごす。
44歳のダリーン・アル・スーシさんは、現状への不満を口にした。
今年のラマダンは、「私がこれまで経験してきたどのラマダンとも異なります」という。
アル・スーシさんは続けた。「毎年ラマダンには、父や母、結婚した兄弟たちや、叔父たち、夫の親戚など、毎日の来客を迎えるために、家にラマダンの飾りつけをしたりして準備します。でも、今年は誰も来ません」
「兄弟たちは、断食中である日中に、短い時間ですが会いに来てくれました。長く会話することはできませんでした。私の家族は、非常に困難な状況にあっても、姉妹を訪問することは欠かすことのできない重要なことだと考えているのです」
アル・スーシさんは、ガザ地区の他のパレスチナ人らと同様、感染対策措置が緩和され、人々が親族と時間を共に過ごして、聖なる月間に入ってから逃しているものを取り戻すことができるようになることを望んでいる。