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新型コロナと紛争:ガザの病院が2つの戦線で疲弊

イスラエル軍の空爆で負傷し、シファ病院で治療を受けるパレスチナ人たち。この空爆により、商業ビルの一部が破壊され、保健省やガザ市の診療所が被害を受けた。(AP通信)
イスラエル軍の空爆で負傷し、シファ病院で治療を受けるパレスチナ人たち。この空爆により、商業ビルの一部が破壊され、保健省やガザ市の診療所が被害を受けた。(AP通信)
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18 May 2021 04:05:46 GMT9
18 May 2021 04:05:46 GMT9
  • 保健省はガザ地区で、コロナウイルスと負傷者という2つの戦線で戦っている
  • ガザの主要病院であるシファ病院の外科部長は、必須医薬品と医療用消耗品が深刻な不足状態にあると述べた

ガザ:ガザの病院は、イスラエルとの紛争が先週に勃発する前から、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応に苦慮していた。現在、医療関係者によると、病院の状況はさらに逼迫しているという。

ガザの主要病院であるシファ病院のマルワン・アブ・サダ外科部長は、「保健省はガザ地区において、2つの戦線で戦っている。1つはコロナウイルスで、もう1つはさらに困難な負傷者への対応だ」と述べた。

戦闘が始まって1週間以上が経過し、パレスチナ人は昼夜を問わず空爆を受け、イスラエル人はサイレンが鳴り響く中でロケット弾から逃れるために奔走している。そんな中で、ガザの医師たちは事態に対応するために戦っている。

包領であるガザ地区にひしめき合って住む200万人に医療を提供する13の病院と54の診療所の中で最大の医療施設であるシファ病院では、紛争で負傷した人の数が増えたため、集中治療用のベッドの数を2倍の32床に増やした。

他の医療システムと同じく、750床を有するシファ病院は5月10日に戦闘が勃発する以前から医薬品や機材の不足に悩まされていた。原因は、イスラエルが主導し、ガザと国境を接するエジプトが支援する封鎖にあると医療関係者は考えている。

イスラエルは、この措置は武器が過激派に渡るのを防ぐためのものだとしている。

アブ・サダ外科部長は、「必須医薬品と医療用消耗品が深刻な不足状態にある」と述べた。

不足しているのは医薬品だけではない。ガザの病院に電力を供給するための発電機の燃料も底をつきかけている。また、主電源は停電が多すぎて当てにならない。

イスラエルは、封鎖の目的は医薬品やその他の人道的物資を止めることではなく、いかなる物資の不足もイスラム原理主義組織ハマスによる行動の結果だとしている。ハマスは封鎖が行われた2007年から、ガザを実効支配している。

イスラエル外務省は月曜日にTwitterで、「ハマスはガザでパレスチナ人の家の地下にテロ用のトンネルを張り巡らしており、パレスチナ人の健康と福祉のための資金を、ハマスのテロ組織を拡大するために使った」と述べた。

ハマスはこの非難を否定している。

パレスチナ人によると、戦闘が始まって以来、ガザでは201人が死亡した。また、破片による負傷や建物の倒壊による負傷を含め、さらに数百人が負傷した。

イスラエルの報告によると、ロケット弾の集中砲火によって10人が死亡した。また、負傷者はさらに多く、直接爆発の被害を受けた人や、安全を求めて走る間に負傷した人もいるという。負傷者の中には重体の人もいる。

ガザの北に位置し、繰り返しロケット弾による攻撃を受けた都市アシュケロンに住むイスラエル人のラチェリ・マルカさんは、「ここでは、とてもひどい状況になっています。この状況が早く終わることを願っています」と話した。

近くでは、ロケット弾の攻撃で穴が開いたユダヤ教会堂で、イスラエル人がユダヤ教の祭日シャブオットを祝った。

イスラエル軍の発表によると、ハマスをはじめとする過激派が、この1週間で約3150発のロケット弾を発射したという。イスラエル、米国、欧州連合はハマスをテロ組織とみなしている。

ガザにおける世界保健機関の責任者サシャ・ブースマ氏は、新型コロナウイルス感染症がガザの苦しむ医療システムに負担をかけていると述べた。

「新型コロナ以前からガザの医療システムは、非常に古い設備、古い建物、適切な訓練を受けた医療スタッフの不足、そしてもちろん必須医薬品の慢性的な不足により、脆弱なものだった」とブースマ氏は話した。

保健当局の発表のよると、ガザでは人口の約5.3%に相当する10万6000人が新型コロナウイルスに感染し、986人が死亡した。

イスラエルは世界で最も早いワクチン接種プログラムを展開し、人口930万人のうち約55%がワクチンの接種を完了した。一方、ガザの保健当局は、世界で最も人口密度の高い地域の1つであるこの地域で配布するために、ガザは約11万回分、つまり5万5千人分のワクチンを受け取ったと発表している。

シファ病院のある病棟には、依然として「コロナ隔離区画」と書かれているが、紛争で負傷した人々のための集中治療室に変えなければならなかった。

保健省のアシュラフ・アルキドラ報道官は、「国際機関や救援団体からのさらなる緊急支援が必要だ」と述べ、医薬品や救急車の提供を求めた。

シファ病院の近くに住んでいる人たちは、すでに疲労した神経を救急車の音にすり減らされている。

「サイレンが鳴っている間は、まだ終わっていないことを実感します」とカラム・バドルさん(57歳)は話した。

しかし、医療従事者たちは、ガタがきた医療施設を維持している。WHOのブースマ氏は、物資は不足しているがそれでも最も必要としている人々に届いていると述べた。

「医療システムの順応性には目を見張るものがある」とブースマ氏は話した。

ロイター通信

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