
ドバイ : 金曜日早朝、エジプトの仲介によってイスラエルとハマスの間の停戦が有効となった。もっとも、ガザ地区のパレスチナ人は再び放置され、11 日におよんだ空と大砲からの激しい爆撃による惨状を呈している。
アントニオ・グテーレス国際連合事務総長は「虐殺、恐怖、そして破壊が意味なく繰り返される」ことを嘆き、交戦によって、ガザの生活に不可欠な市民の社会基盤は深刻な被害を被った、と加えた。彼はこの状況を、子供が見れば「この世の地獄」だ、と表した。
たとえそうであったとしても、2 週間かからずに紛争に終止符が打たれ、直近の大部分の交戦が、ヨルダン川西岸地区には波及しなかったことには、安堵の念が広がっている。今回の紛争では、 232 人のパレスチナ人、そして 12 人のイスラエル人が死亡したが、2014 年の地上侵攻は 7 週間におよび、その間 2,000 人を超える死者が発生した。
ヨルダン川西岸地区とガザの双方で、政治および外交上の措置が行き詰まっている。4 月、 マフムード・アッバース大統領は、パレスチナ自治区における法で定められた大統領選を延期した。彼がそうしたのはハマスが勝利することを怖れてのことだ、とほとんどの観測筋が考えている。アッバース大統領は 2005 年に選出されたが、彼の任期が最終的に満了して以来 10 年以上、統治を行っている。
前回の 2006 年の選挙のすぐ後から、ガザ地区の統治はハマスが行っている。ハマスは、イスラエルが国家として存在する権利を承認することを、断固として拒否してきた。同組織の政治および軍事部門は共に、米国および欧州連合からテロ組織と分類されている。
「ピースキャンプは、ゼロから立て直す必要があります」、とシンクタンク『ニュー・アメリカ (New America)』の国際安全保障担当シニアフェロー、タウフィク・ラヒーム氏はアラブニュースに話した。「イスラエルの多く人たちが、実際には、パレスチナ人にとって不公平な状態が長い間続いているだけという状況にありながら、平穏であることが平和なのだ、と考えています。」
一方では、東エルサレムの立場も未解決のままであるし、1967 年にガザ地区が占領されたため、ヨルダン川西岸地区へのイスラエルの居住も続いている。
最も直近の暴力行為の勃発は、イスラエル人の居住者による扇動であったことは明らかだ、とアラブ社会科学評議会 (Arab Council for Social Sciences) 前議長のアブドゥルハレク・アブドゥラ氏は話す。暴力行為が始まったのは、東エルサレム近隣のジェイクジャラーだった。
「イスラエル政府はこれを統制したとしていますが、それは明らかに支援でした」、と彼はアラブニュースに話した。「これは、過去 7 年間の対立で目にしてきた、不当な攻撃パターンの繰り返しです。」
パレスチナ人の抗議と不満が、イスラエル内部のアラブの人々に伝播した、と強調する専門家もいた。戦闘は、ジャッファ、ラムラ、そしてロードといったイスラエルやアラブの都市で勃発した。そこでは、パレスチナとハマスの旗が掲げられ、シナゴーグや病院が攻撃を受けた。
ハイファ、ナザレ、アッコのような街には、相当数のアラブ人がいる。彼らは、1948 年イスラエル国家が建国された時の、いわゆるグリーンラインの内側にいた人々の子孫だ。その多くはイスラエル市民であり、イスラエルの選挙で投票する権利がある。
「この危機により生じたのは、発端にまで遡る紛争です。発端とはつまり、1948 年に難民を退去させたことです」、と王立国際問題研究所 (Chatham House) アソシエイト・フェロー、ナディム・シェハディ氏はアラブニュースに話した。「イスラエル内部でこの規模の抗議は、( これまで ) 目にしたことがありません。第二次インティファーダの時ですらです。」
2000 年から 2005 年、蜂起はガザ地区とヨルダン川西岸地区の広範囲にわたって起こった。この時、暴力事件は、これらの地域で散発的に発生しただけだった。2021 年、状況は一変した。
ベンヤミン・ネタニヤフ イスラエル首相は、ロードで緊急事態を宣言することを余儀なくされた。イスラエル メディアによれば、1966 年以降イスラエルの都市でこうした強権が発動されるのは初めてのことだ。
事態の複雑さを説明するとすれば、ある事件では、ガザの内部からハマスの発射したロケット弾が車を破壊した際、それに乗ってアラブ人男性とその子供が亡くなったということだ。これが衝突を引き起こした一因となっているように思われる。
パレスチナ自治区内で広く支持されるハマスは、いまだ戦闘態勢を崩していない。
「私たちの手には引き金がかけられていることを、そして私たちは、このレジスタンスの戦闘力をこれからも拡大し続けるつもりであることを、全世界の知らしめる必要があります」、とハマスの報道官は停戦の直前、ロイターに話した。
戦闘力の規模は、多くの人が驚くほどのものとなっている。アラブニュースに述べたアナリストは、組織は、ミサイルやドローンを明らかに大量に保有しており、そしておそらくは、イランの支援を得て大規模開発を手がける製造能力を保持している、と強調した。
今月の 11 日間におよぶ戦闘では、ハマスは 4,300 発を超えるミサイルを、イスラエルの南部および中心部に発射したと推定される。これは、2014 年の紛争よりも遥かに激しい集中砲火で、2006 年の戦争でヒズボラがレバノンから行った爆撃よりも激しい。
撃ち込まれた砲撃の 90 パーセントは、アイアンドーム防空システムにより阻止された。しかし、ハマスは未だ、さらに数千発のミサイル備蓄を保有しているものと思われる、とイスラエル当局者は話した。アイアンドーム システムは、2011 年に展開され、16 億ドルという米国の資金により維持されている。先の紛争で使用されたが、ハマスがこれほど多くのロケット弾を同時に発射したことは、これまでなかった。
ハマスの発射したミサイルは、7 発中 1 発が、ガザ内部に着弾した。そしてハマスは、ガザとイスラエル国内の民間人を無差別に標的にしている、と非難された、とイスラエル軍 (IDF) は発表した。
「( ハマスによる ) ガザの攻撃そのものから、予想を上回る準備が行われていたことが明らかになった。ミサイルの数と質という点、イスラエル領土内に深く飛び込む射程距離や性能という点、そしてドローンのような手持ち兵器の多様性という点においてです」、と UAE に拠点を置く防衛アナリスト、リアド・カフワジ氏はアラブニュースに話した。「こうしたことすべてが、今回の暴力行為に特有な点です。」
より長期的には、昨年 8 月にイスラエル、UAE、そして米国により署名された主要な協定である、アブラハム合意は、精査される可能性が高い。取り決めに署名がなされたすぐ後には、バーレーン、スーダン、そしてモロッコもイスラエルを正式に承認した。
UAE は、イスラエルとの一連の投資協定を署名するに至り、空の直行便を開通させた。イスラエルと UAE はそれぞれの国内に、大使館を開館している。
ハマス、そしてムスリム同胞団およびイランと同組織の関係に詳しい評論家は、ハマスはミサイル備蓄を増大させ、そして、とりわけアブラハム合意を害するための戦闘を開始した、と話す。アブラハム合意では、これらすべてを脅威と見なしている。アブラハム合意を害するため、ハマスは東エルサレムの地域の争いを利用しようとしていた、と人権活動家、バッセム・エイド氏は話した。
11 日間におよぶ戦闘が合意を試す時間であったということは、確かに否定の余地がない。
「合意への署名を取り巻く希望や誇示は、ガザからの煙と共に薄れてしまいました」、とアブダビの国防大学 で政治学が専門の元教授、アルバドル・アル=シャテリ博士は話す。「紛争は、イスラエル ( の強さ ) を再建することからは程遠く、むしろそのもろさを露呈しました。」
前進にむけて、米国、ヨーロッパ、そして湾岸諸国は、占領地区とイスラエル内のパレスチナ人の生活改善を支援できる、と彼は信じている。「仕事を提供するための投資を増やし、社会基盤を再建し、そしてとりわけ医療教育システムを改善することは、解決に向けた交渉への素地を作る一助となるでしょう」、と彼はアラブニュースに話した。
ニュー・アメリカのラヒム氏によると、イスラエルは、アラブ世界とより深い関係を発展させているものの、政治家、そしてより様々な人々の心情が目に見えて変化したことを考えると、米国の世論が決定的となる可能性が高い。
イスラエル、およびパレスチナ双方の新たな指導者層は、空白状態となっており、現在目に見えて活動しているのは、双方とも急進派のみとなっています。それが現状なのです、と彼はアラブニュースに話した。
「将来の可能性として、紛争よりは共存を思い描ける新たな指導者が、パレスチナにもイスラエルにも必要です。」
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Twitter: @CalineMalek