
リヤド:アメリカ合衆国は、中国およびロシアとの大国間競争へ注力するため、中東全域でその軍事的存在を縮小している。それは同時に、この動きによって湾岸地域周辺で生まれる溝を埋め、影響力を拡大するという機会を二国へ与える危険がある、と湾岸地域を担当する米軍最高司令官は日曜に述べた。
米国中央軍の司令官を務めるフランク・マッケンジー海兵隊将軍は、この1週間で中東を巡回している。その間に、会合した軍指揮官や政治指導者から繰り返し寄せられた質問へ対処した。米国は今でも、彼らの国と地域に関わる意思があるのか。そして彼らは、どういった支援を今後も期待することができるのか。
埃まみれのシリアの戦場からロケット弾の猛撃を受けているイラク、サウジアラビアの周辺地区まで、彼らは米国が、アジアへの戦略転換によって軍隊や船、航空機、その他の軍事援助を引き上げるのではと気を揉んでいる。イランが支援する武装集団が市民を襲っており、それと戦うために米国の援助が必要なのだ。
そして米国の対応が遅ければ、彼らは他国に助けを求めるかもしれない。
「中東は大規模に、大国間で激しい競争が起こっている場所です。我々がこの地域での態勢を調整するにつれ、ロシアと中国は付け込むことのできる隙間が開くかどうかを注意深く見守るようになるでしょう。」と、マッケンジー将軍は帯同していた記者へ語った。「米国が、世界の他の地域へ注意を向けるため、姿勢を変化させていることに彼らは気づいているのだと思います。そこに機会が生じる可能性を感じ取っているのでしょう。」
サウジ当局者との会合後にホテルの部屋で話したマッケンジー将軍は、モスクワと北京が利用し得るニーズの1つに兵器販売があることを指摘した。ロシアは可能ならばどこへでも防空システムやその他兵器を売ろうとし、中国は経済力を拡大して最終的に湾岸地域へ軍事基地を設立するという長期的目標を持っている、と将軍は述べた。
ジョー・バイデン大統領は、就任からわずか数ヶ月の間にアフガニスタンからの米軍の完全撤退を命じている。そしてイラク、シリア、世界中でのアメリカ軍駐留について見直しを開始した。米国国防省は、他の中東諸国から戦艦や軍隊、兵器システムを移動させている。
しかし同時に、バイデン大統領は今月になって湾岸地域へ政府高官を派遣した。ドナルド・トランプ前大統領が3年前に廃止した2015年の核合意について米国がイランとの対話を再開する中、緊張する同盟諸国を安心させるためだ。
イランとの話し合いを再開する取り組みは、中東諸国の多数に不安を引き起こしている。いずれの国もテヘランに対する圧力維持を米国に依存し、一帯で活動する武装グループへの資金提供と武器供給を米国の政策に頼っているためだ。
だが米国国防省で目下議論されているのは、勢力拡大中の中国に対抗するため、太平洋へさらなる軍事力を送り込むことについてだ。結果として、マッケンジー将軍を含む世界各地の米軍司令官は軍隊やリソースを失うことになるかもしれない。これには、現在ガルフ湾に配置されてアフガニスタンからの撤退に安全をもたらしている、航空母艦などの戦艦が含まれる可能性がある。
バイデン政権は、急速に拡大している中国の経済的影響力と軍事力を、アメリカの主な長期的安全保障課題と見做している。政府当局者は、台湾への脅威や南シナ海の人工島における中国の前哨基地開発に対し、米国がより強固な反撃準備を整えておく必要があると考えている。
軍司令官らは、北京がアフリカや南アメリカ、そして中東での足掛かりを積極的に探している点に言及し、強まる一方の中国の主張はアジアに限定されたものではないと警告する。
「中国が、向き合うべき拡大途中の脅威であることに全面的に同意します」と、AP通信およびABCニュースの記者との会見でマッケンジー将軍は述べた。「同時に、私たちは世界の大国です。世界的展望を持っている必要があります。それは、世界を全体として考察する能力があることを意味します。」
日曜の会合で、現在の米軍の態勢見直しについてサウジの指導者らは「大変憂慮していた」とマッケンジー将軍は述べた。王国は毎日のように、様々な弾道ミサイルや巡航ミサイル、小型ドローンを使ったフーシ反乱軍からの爆撃を受けている。
マッケンジー将軍は彼らに対し、軍隊と兵器の数は、米国とサウジ間で統合されて全国に配置されている防空・ミサイル防衛システムの全体的な機能ほど重要ではない、というメッセージを伝えたと語った。
さらに広く見れば、より少ない軍事的存在を活用して地域内でより多くを達成する戦略は、米国の抜けた隙間に中国やロシアが付け入ろうとするのを防ぐかもしれない、と彼は述べた。
「全てやり尽くされた状態で、それが実際に彼らにとって機会になるものか、私には分かりません」と彼は述べた。
同地域内で数十万人に上った5〜7年前と同じだけの兵士の駐留はなくなるかもしれないが、米国の存在は維持されることになる、と彼は述べた。
「手元のリソースを活用するために、極めてスマートな戦い方をすることになるでしょう。アメリカ合衆国こそが選ばれるパートナーです。その選択肢が存在しない場合にのみ、各国は防衛手段として他の機会を探すでしょう。」
AP