
アラブニュース
ロンドン:昨年1月にイラン革命防衛隊(IRGC)が起こしたウクライナ機撃墜事件の犠牲者家族に対し、イラン当局が一連の嫌がらせや虐待を行っていた。人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」が27日に公表した。
HRWは昨年10月から今年1月にかけて、犠牲者の家族31人や家族に対するイラン当局の扱いを直接知る人物に話を聞いた。
そして「イランの治安当局は犠牲者の家族を独断的に拘束・召喚し、暴力的な尋問や拷問、その他の不当な扱いを行った」と報告している。
当局はさらに、犠牲者の持ち物を家族に返還せず、葬儀や告別式の邪魔をしたとして非難されている。
HRWのマイケル・ペイジ中東副局長は以下のように述べている。「イランの革命防衛隊は176人の人々を殺害しておきながら説明責任をまったく果たしていません。そして今、イランの暴力的な治安当局が犠牲者の家族を不当に扱い、あらゆる正義の希望を粉砕しています」
「当局は透明性の高い調査と家族への償いによって人々の信頼を取り戻そうとする代わりに、再び説明の努力を怠っています」
イラン当局はまた、犠牲者の家族に圧力をかけたとHRWは述べている。犠牲者の親戚によると、当局は葬儀や告別式に干渉し、故人が「殉死」したというイラン政府の認定を受け入れるように家族に圧力をかけた。式典において、家族の許可なしに写真や映像が公開されたこともあったという。
イランの治安当局から外国メディアに話さないように脅されたり、告別式に出席した親戚や友人が尾行されたり呼び出されたりして、出席者が撮影されたという報告が少なくとも16人から上がっている。
中には何時間も尋問・拘束された家族もいる。また、イラン政府の説明責任の欠如を非難するソーシャルメディアの投稿を削除しないと「重大な事態を招く」と通告された者もいた。
ペイジ副局長はこう続ける。「イラン当局は、政府の誤った調査ついて公に発言したり説明を要求した人々に嫌がらせをして、圧力をかけ続けています」
「撃墜された752便の調査に関わるすべての政府は、犠牲者の家族の権利を確実に保護すべきです。また事件の責任者の刑事責任を問い、家族にしかるべき補償をするなど、真の責任を追求すべきです」
イラン当局は4月6日、ウクライナ国際航空752便の撃墜に関わった10人を訴追したと発表した。しかしながら、被告の身元や肩書、容疑の内容については明らかにされていない。
昨年1月3日、米軍がドローン攻撃でイランの「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害した。それを受けて8日にイランがミサイル攻撃を行い、国内の米軍基地を攻撃した。また、テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港付近でウクライナの旅客機が撃墜された。
当初、イラン軍の中央司令部は事件への関与を繰り返し否定していたが、IRGCが「誤って」旅客機を撃墜し、176人の乗客乗員全員を死亡させたことを最終的に認めた。
イランの航空事故調査委員会は事件に関する最終報告を提出し、発射装置のレーダー較正が105度ずれていたためにミサイルが旅客機に向けて発射されたと結論付けている。