
エルサレム:住民の大半がファイザーバイオンテック社製のワクチンを接種しているイスラエルでコロナウイルス感染者数が増加していることは、同ワクチンがデルタ株による軽症疾患の予防には効果が比較的低い可能性があるという「予備的兆候」だと、5日、あるトップエキスパートが語った。
しかし、イスラエルの新型コロナウイルスに関する国立専門家委員会委員長のラン・バリサー氏は、4月にインドで初めて確認され、世界中で急増している「変異株に対するワクチンの効果を正確に評価するには時期尚早」であると強調した。
イスラエル最大の健康維持機構(HMO)、クラリットの最高技術革新責任者でもあるバリサー氏は、AFP通信に対し、デルタ株が国内で「支配的な株」として登場していることで、「伝播の動態が大きく変化」することにつながったと述べた。
12月に始まったイスラエルのワクチン接種展開は、世界でも最速の部類だ。そのため、このユダヤ人国家は、大規模接種がパンデミック脱却の道を示すことになるのかどうか、大きな注目が集まるケーススタディとなっている。
ワクチン接種により、感染伝播は新規国内感染者が1日あたり約5人程度にまで減少したが、ここ数日は300人前後にまで増加し、デルタ株が猛威を振るっている。
1日の感染者数のうち、約半数は子どもで、半数は大半がワクチンを接種した大人だ。
「イスラエル人の大人の85%がワクチンを接種しているので、これはある程度は予測できたことです」と、バリサー氏は述べた。
「しかし、このようなブレイクスルー感染が見られる率からすると、中には、感染率が予想を超えていると考え、重症疾患ではなく軽症疾患に関しては、ワクチンの予防効果は低下していそうだと示唆する人もいます」。
ワクチンを接種したイスラエル人の重症患者数は、ここ数日、およそ2日に1人から1日5人にまで増加していると、バリサー氏は語った。
同氏は、デルタ株が引き起こす重症疾患に対してのワクチンの効果については、結論を出すには時期尚早であるとも述べた。
しかし、専門家らは、12月にイギリスで初めて確認された「アルファ株と同様に、重症化に対するワクチンの有効性が高いまま維持されていることに引き続き希望を持っている」と、同氏は付け加えた。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相は4日、毎週の閣議を前に、「デルタ株が猛威を振るう中」、イスラエルは伝播を抑制するため、先月解除された一定の制限を再導入しなければならなくなる可能性があると、警鐘を鳴らした。
バリサー氏は、更なる制限を再び課さずにイスラエルが感染者数の増加を抑え込むことはできないだろうと述べながらも、症状が軽く済み、接種を終えたイスラエル国民の「ワクチンの壁」が更なる感染拡大の減少に寄与することを期待していると口にした。
AFP通信