
カルバラ、イラク:イラク南部の複数の町や国営の発電所で9日、酷暑が続く中で停電が長期化していることに対する激しいデモが行われ、数百人が参加した。
カルバラ近郊のハイラト発電所の外で行われたデモに参加したディアー・ワディさんは「私たちは電気の復旧を望んでいる。復旧しないなら、この発電所から去らない。ここにとどまり、つぶすつもりだ」と話した。
主に男性から成るデモ隊は、関係者の車両を取り囲んで攻撃し、後部の窓をたたき割って叫び声を上げていた。
デモに参加したサジャド・アウン・アル・キリティさんはいらいらした様子で「私たちは、権利だけを求めてここで平和的に抗議している。私たちが求めているのは電気の復旧。復旧しなければテントを持ってきて野営する」と話した。
最高気温が連日摂氏50度を超え、9日には南部のマイサン州やワシト州、クートなどでも数十人が抗議デモを行った。
電力省は、先週南部で始まり他の地域にも広がった停電は、送電線への謎の攻撃が原因だとしている。
「何者かがこの国を不安定にして混乱を引き起こそうとしている」と同省のアハマド・ムサ報道官はテレビで語った。
マジド・ハントゥーシュ電力相は6月下旬、イラン政府が電力供給の削減を発表する前日に辞任した。イラクの電力相が夏季を乗り切れずに退任したのは18年連続だ。
イラクでは夏季に、酷暑のさなかの停電が頻発するが、今回の危機の背後には別の要因がある。
イラクは支払いが滞っている理由として、イランに米国が制裁を科しているために送金が規制されていること、原油価格の下落による深刻な金融危機、そして新型コロナウイルスの感染拡大の影響を挙げている。
イラク政府はまた、公共料金を支払っている消費者はほとんどおらず、多くの人が違法に電線を接続して電気を盗んでいると説明している。
酷暑の中、停電が頻発したことで、大きな貧富の格差が顕在化した。
バグダッドの比較的裕福な住民は発電機を買う余裕があり、全国電力系統網が機能しなくなったときにそれを使うことができるが、他の住民は何日もエアコンなしでやっていくのに苦労している。
公務員のサディク・サドカンさんは、停電中に中流階級地区に電気を供給する発電機を利用するために毎月約200ドルを支払っている。「私は、24時間稼働する自家発電機の最高水準のものをサブスクリプション方式で利用している……いつでも使うことができる」とサドカンさんは話した。
バスラに住む映画監督セイフ・タリブさん(29)は、屋外シーンの撮影を春に行い、屋内シーンの撮影や編集作業を夏にすることで酷暑に対処しようとしている。
タリブさんによると、彼の家では6月中旬以降、毎日12時間以上停電しているという。1歳の娘は苦しくて夜泣きし、タリブさんはますますストレスがたまっているという。「気温が50度を超えるのは、私たちにとっては当たり前のことだ。だが、電気もか? これはとても複雑な問題だ」と彼は話した。
AFP/ロイター