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米国による制裁の回避を目指すイラン、見据えるのは戦略的海峡の先

イランのハサン・ローハニ大統領(右上)がジャースクの石油ターミナルを落成させている様子を示す、イラン大統領府公開写真。(AFP)
イランのハサン・ローハニ大統領(右上)がジャースクの石油ターミナルを落成させている様子を示す、イラン大統領府公開写真。(AFP)
2018年12月21日、ホルムズ海峡を通過する石油タンカー。(ロイター)
2018年12月21日、ホルムズ海峡を通過する石油タンカー。(ロイター)
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23 Jul 2021 07:07:14 GMT9
23 Jul 2021 07:07:14 GMT9
  • 制裁の只中で、米国戦艦がパトロールする難所の回避を目指した動き
  • イランの主要な石油輸出ターミナルは、ホルムズ海峡の内側にあるハールク島の港に位置している

アラブニュース

ロンドン:米国による制裁に違反して石油輸出の拡大を目指すイランは、ホルムズ海峡を通過することなくタンカーが行き来できる、初の石油輸出ターミナルを開設した。

ターミナル開設にあたり、イランのビージャン・ナームダール・ザンゲネ石油大臣はこのプロジェクトが輸出を支援するだろうと宣言し、またこれは、「制裁破綻の兆候」であると付け加えた。

IRNA(イスラム共和国通信)公式は21日、この新しい輸出経路とターミナルは、テヘランが「競合諸国から石油市場を取り戻す」のに役立つだろうと報じた。

イランの他の主要石油ターミナルは、ハールク島の港湾に位置している。そこへ入るには最も狭い地点で幅が40kmに満たないホルムズ海峡を利用しなければならず、米国とイランの海軍艦艇は過去、海峡内で睨み合いになったことがある。

イランは2018年5月より、米国からの過酷な制裁を受けている。ドナルド・トランプ前大統領が、2015年の重大なイラン核合意から一方的に離脱して以来のことだ。この制裁は、イランのエネルギー輸出に多大な影響を及ぼしてきた。

「ターミナルはあったものの、そこで問題が起これば我が国の石油輸出は断ち切られるところであった」とイランのハサン・ローハニ大統領は述べ、次のように付け加えた。「今日はイランにとって、素晴らしい、歴史的な日だ。」

「石油産業は我々にとって大変重要であり、敵国にとっても同じである」と、ローハニ大統領はテレビ放送されたコメントで述べた。

イランは、自国の石油を南西部のブシェール県ゴレーから南東部に新しく作ったターミナルへと運搬するために、1,000kmのパイプライン建設も実施した。(ロイター/ファイル)

イランは、自国の石油を南西部のブシェール県ゴレーから南東部に新しく作ったターミナルへと運搬するために、1,000kmのパイプライン建設も実施した。

ローハニ大統領は、この新規プロジェクトの価値を20億ドルと推定した。イランのメディアによると、このプロジェクトはおよそ2年をかけて進行してきた。

米国は、中国やベネズエラ、シリアを含む国々へ石油を輸出することで制裁措置の回避を試みているとしてイランを非難している。

ワシントンは、イラン産石油を運搬していたとされるタンカーの押収を繰り返し発表してきた。

イラン当局者によれば、イスラム共和国はこのパイプラインを通しての最終目標として、「1日当たり100万バレル」の出荷を目指しているという。

このプロジェクトは目下、イランに1日当たり35万バレル(bpd)の輸出を可能にしている、と彼らは述べた。

OPECから入手可能な最新数値によれば、イランは247万bpdを6月に産出した。

「新しいパイプラインは、イランにとって不可欠な戦略的要素になっています。アラビア湾での、サウジアラビアとイスラエルとの緊張の高まりを考慮すれば特にそうです。」と、S&P グローバル・プラッツの石油アナリスト、ハーマン・ワン氏は語った。「ホルムズ海峡の迂回によって、どのような理由であれ、この航路が閉鎖される出来事が起こった場合にもイランは輸出販路を確保することができます。

「制裁が解除されるまで、このパイプラインとターミナルは容量未満にとどまる可能性が高いでしょう」と、ワン氏は付け加えた。

ワシントンによる制裁があるために、テヘランは原油の出荷について慎重である。制裁を恐れず購入する、限られた顧客のみを相手にしている。

制裁下にあるイランおよびベネズエラ産石油の供給で中心的プレーヤーとして浮上したのは、中国の物流会社だ。イラン産原油を取り扱ったとして、ワシントンは2年前に同社をブラックリストに載せている。それにも関わらず、取引について知る7つの情報源からロイターへ知らせが入った。中和石油有限公司(China Concord Petroleum Co.、略してCCPC)のより大きな役割と、同社によるベネズエラとの取引拡大は、ワシントンによる制裁システムの限界を目立たせるものだ、とアナリストは指摘する。

この1年で、イランやベネズエラから中国へ石油を運ぶために、CCPCは少なくとも14隻のタンカーを取得した、と情報源のうちの2人が語った。

ワシントンは2019年、イラン産石油の運搬および取引に関する規制違反を理由に、CCPCを制裁下の事業体リストに加えている。CCPCは制裁について公式コメントを発表しておらず、米国によるブラックリストへの掲載が同社へどのような効果をもたらしたのか、ロイターは見極めることができなかった。

CCPCは、中国の小規模独立系(ティーポット)製油業者6社にイラン産石油を供給している、と中国に拠点を置く3つの情報源は語った。

この件に通じるイラン当局者は、テヘランの中国との石油取引において中心的役割を担っているのはCCPCであることを裏付けた。

リフィニティブ・オイル・リサーチによると、中国は11月から3月の間に1日平均55万7,000バレルのイラン産原油を受け取っている。これは世界最大の輸入国による合計輸入量のおよそ5パーセントに相当し、トランプ前大統領がイランへ改めての制裁措置を下した2018年以前の水準に戻っている。

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