死に物狂いでタリバンの支配から逃れようとするアフガニスタン人を米軍は支援している。米軍兵士13人を含む85人が死亡した、カブール空港ゲート外で発生したダーイシュの自爆テロを受けて、8月27日、米軍はさらなる攻撃を警戒している。
目撃者によると、8月26日夕刻に発生した2回の爆発や銃撃で、空港のすぐ外のエリアは振動に見舞われた。
アフガニスタン人ジャーナリストが撮影したビデオでは、空港のへりにある溝付近に数十体の死体が散乱している。
保健当局者とタリバンの高官は、アフガニスタン人の死者は72人に増えたことを明らかにした。うち28人がタリバンのメンバーだ。米軍は、兵士13人が死亡したことを発表している。
タリバンにとっても欧米にとっても敵であるダーイシュは、1人の自爆テロ実行者が「アメリカ軍の通訳や協力者」を標的にした、と発表している。米当局の側でもダーイシュを非難し、報復を誓った。
米中央軍司令官フランク・マッケンジー将軍は、米軍の指揮官たちはダーイシュによるさらなる攻撃を警戒していると述べた。ロケット砲や自動車爆弾で空港が狙われる可能性などが考えられるという。
将軍は、「準備できることはすべて行っている」と述べ、若干の情報をタリバンと共有していることも明らかにした。「タリバンがいくつかの攻撃を阻止した」と考えているという。
米軍は大急ぎで、ジョー・バイデン大統領が定めた8月31日の期限までにアフガニスタンからの撤退を完了させようとしている。米国は2001年にアフガニスタンに侵攻した本来の理由をはるか昔に解決している、とバイデン大統領は語っている。それは、アルカイダの兵士を根絶やしにし、米国への9・11攻撃の再現を防止する、というものだ。
バイデン大統領は、犯行声明を出しているダーイシュの一勢力、ダーイシュ・ホラサン(ダーイシュK)への攻撃計画を練るように国防総省に命じたことを明らかにした。
「私たちは赦さない。私たちは忘れない。おまえたちを追い詰め、罰を与える」。バイデン大統領はホワイトハウスからのテレビ演説でそのように語った。
攻撃後に撮影されたビデオでは、空港のフェンス脇にある排水溝に死体が浮かんでいた。一部の死体は引き揚げられ、うず高く積み上げられている。市民が泣き叫びながら、愛する人を探している。
「人間の体や体の一部が空中を飛んでいくのを見た。まるで竜巻がプラスチック袋を吹き飛ばすような感じだった」と、あるアフガニスタン人が証言した。「あの排水溝を流れる水が血に染まった」
土木技師のズバイル氏(24)は、爆弾を爆発させた自爆テロ犯の近くにいたという。
ズバイル氏は、「男性も女性も子供も悲鳴をあげていた。男性、女性、子供、多くの負傷者が出て、その人たちは一般人の車に乗せられて、病院に運ばれていった」と述べた。
「混乱の中の脱出」
米中央軍の広報担当官は、この攻撃で負傷した兵士18人は、「外科部隊が搭乗した特別装備のC-17輸送機でアフガニスタンから航空医学的に退避している最中だ」と発表した。
タリバンの高官は、ダーイシュの攻撃によるタリバン構成員の死者数を明らかにしつつ、悲嘆に暮れた。
タリバン高官は、「空港での爆発で、我々の死者数はアメリカ人の死者数より多い」と語り、タリバンは「外国が準備した混乱の中の脱出計画に何の責任もない」と付け加えた。
カブール駐在のあるNATO加盟国外交官は、外国軍はどこも8月30日までに自国民や大使館職員を退避させようとしている、と語った。
匿名を条件としたこの外交官は、タリバンは空港周辺の警備を厳重にするだろう、と述べた。
「タリバンは治安に責任がある」として、タリバンはダーイシュ・ネットワークを捜査すべきだ、と見解を明らかにした。
欧米諸国は、かつてオサマ・ビン・ラディン氏のアルカイダを保護したタリバンが、アフガニスタンを再び武装勢力にとっての安住の地にすることを恐れている。タリバンは、アフガニスタンをテロリストに使わせないと述べている。
ダーイシュ・ホラサンは当初パキスタンとの国境地帯に封じ込められていたが、アフガニスタン北部に第二戦線を開くことに成功した。ウェストポイント米陸軍士官学校のテロリズム対策センターによると、ダーイシュ・ホラサンにはアフガニスタン人以外に、他の武装勢力出身のパキスタン人や、ウズベキスタン人過激派も含まれる。
空輸作戦は続く
マッケンジー将軍は、さらなる攻撃の恐れがあるものの米国は退避をどんどん推し進めると語り、アフガニスタンにはまだ千人程度のアメリカ市民が残っている事実を指摘した。
退避のためのフライトは27日にペースが加速し、米国パスポートの所持者は空港内への入場を許されたと、空港内に駐留する欧米の治安当局者が明らかにした。
この12日間で、欧米諸国はほぼ10万人を退避させた。だが、それらの国々は、今月末に米軍部隊が撤退した時点で数千人が置き去りにされることを認めている。
欧米のいくつかの国は、航空機による民間人の大量輸送は終わりに近づいていると表明しており、最後まで残っていた軍隊が既にアフガニスタンを離れたことを発表している。
26日の攻撃によるアメリカ人犠牲者数は、30人の死者が出た2011年のヘリコプター撃墜以来、アフガニスタンで一度に殺害された米軍人数として最多だと考えられている。
短兵急な撤退を命令して、ようやく手に入れた安定した現状を無思慮にも捨て去ったとバイデン大統領を非難する勢力は、18カ月ぶりにアフガニスタンで米国人に死者が出たこの事実を引き合いに出すことだろう。
ロイター