
ワシントン:米国防長官とイスラエル国防相は12月9日に、外交が失敗に終わり両国の指導者の求めがあった場合にイランの核施設を破壊するという最悪のシナリオに備える軍事演習の可能性を協議する予定である。米国の高官がロイターに語った。
米国を訪問するイスラエルのベニー・ガンツ国防相との間で予定される米イスラエル間協議は、10月25日に米国防総省の高官がホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官に行った、イランの核兵器製造を不可能にするために採りえるすべての軍事オプションについてのブリーフィングを受けてのものである。12月8日に匿名を条件に当局者が語った。
イランは核兵器の保有を目指していることを否定して、平和目的で核技術を会得したいと表明している。
これまで報じられていなかった米国とイスラエルによる準備は、ジョー・バイデン大統領が願う、前任者のドナルド・トランプ氏が葬り去った2015年の核合意の復活に向けた、イランとの困難な核協議に対する西側諸国の懸念を浮き彫りにしている。
米国と欧州の当局者は先週行われた協議の後に、イランの強硬派新政権による広範な要求に失望の意を表明している。欧米諸国は、イランは核開発を進めながら時間稼ぎをしているのではないかという疑念を強めている。
米当局者は想定される軍事演習の詳細を明かすことを拒んだ。
「イランの核開発が通常の合理的根拠を持つようになる地点まで進展しようとしているため、私たちは窮地に立たされている」と、当局者が協議への期待を示しながら語った。
在ワシントンのイスラエル大使館と、イランの国連代表部にコメントを求めたが、すぐに回答はなかった。
ガンツ氏は米国に向けて出発する際のツイッターへの投稿で、「核の領域に入り、地域での活動の拡大しようとする(イランの)試みを中止させるために採りえる行動様式について協議する」と述べている。詳細には言及していない。
核協議の議長を務める欧州連合の関係者によると、核交渉は9日に再開され、週末には米国のイラン担当特使も参加する予定である。
国際原子力機関(IAEA)は先週、イランが、山の中に掘られ攻撃が困難なフォードウ・プラントで、高度なIR-6型遠心分離機166機からなる1カスケード(クラスター)で、最高純度20パーセントのウラン濃縮プロセスを開始したことを発表している。
2015年合意では、イランは制裁を緩和されたもののウラン濃縮活動には厳しい制限が課され、その選択をした場合に、核兵器に必要な核分裂性物質の製造に要する時間が、従来の約2、3カ月から1年以上に延長された。ほとんどの核専門家は、現在ではその期間はかなり短くなったとしている。
核合意ではイランはフォードウでのウラン濃縮を認められておらず、高度な遠心分離機などもってのほかであり、核合意がどれだけ蝕まれたかが際立っている。
この合意における核兵器の利点は大きく損なわれてしまい、一部の欧米政府当局者は、合意の基礎が修復不能なほどに破壊されるまでにほとんど時間が残されていないと語っている。
元米政府高官で中東問題専門家のデニス・ロス氏らが、米国とイスラエルはイランの核兵器獲得を阻止することに今でも真剣であるという明白なシグナルをイランに送ることを呼びかけているが、米国とイスラエルによるこの演習はその呼びかけに応えるものかもしれない。
先月、ロス氏は、「バイデン大統領は、米国が軍事的行動をとることはなく、イスラエルによる軍事行動も止めるだろうという見解が誤りであることをイランに示す必要がある」と意見を発表している。
ロス氏は、米軍のバンカーバスター弾である3万ポンドの大型貫通爆弾(MOP)を米国がイスラエルに供与する意思があるというシグナルを送ることも必要だろうとさえ提案している。
こうした抑止策の意見について問われた米政府高官は、「バイデン大統領が、イランは絶対に核兵器を獲得しないと表明するとき、本気で言っている」と述べた。
12月6日、中央情報局(CIA)のビル・バーンズ長官は、CIAではイランの最高指導者が核武装へと踏み出す決定をしたとは考えていないと述べながらも、核爆弾のための核分裂性物質の獲得に向けた道筋の一つであるウラン濃縮の能力を向上させていることを指摘した。
バーンズ氏は、イランが核武装へと踏み出す決定をしても、核兵器をミサイルや他の運搬システムに取り付ける以前に、核分裂性物質を兵器化するのに多くの作業が必要になると警告した。
「しかし、イランは核燃料サイクルの習得をさらに進めており、この種の知識は制裁で排除したり、消滅させたりするのがきわめて困難だ」とも述べた。
米国政府は、イランが核爆弾に必要な核分裂性物質を製造した後には、分散されたイランの核兵器開発の構成要素を米国が発見して破壊できるかどうかについての懸念を、長きにわたって抱き続けている。
ロイター