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英国の新首相、中東との関係強化でどのような利益を得ることができるか

果たして、英国の新首相であるリシ・スナク氏は国や国民に安定をもたらすことができるのだろうか。(AFP)
果たして、英国の新首相であるリシ・スナク氏は国や国民に安定をもたらすことができるのだろうか。(AFP)
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28 Oct 2022 02:10:06 GMT9
28 Oct 2022 02:10:06 GMT9

数週間にわたり激動が収まらない英国では、2カ月で2回首相が交代し、数え切れない閣僚が辞任し、多くの人から愛された君主が崩御した。インフレが高まり金利も上昇する中、新型コロナウイルス感染症とブレグジット(EU離脱)の影響がビジネスに打撃を与え、企業が四苦八苦しながらも生き残る能力が試される一方で、生活費増加の危機に直面している国民は気を引き締め、支出を制限している。

同時に、人手不足により、企業は働いてくれる人材探しに苦労しており、移民頼りに戻る方向へと進んでいる。これは、基本的なサービスを維持するためには移民の労働者が必要であると国が認識しているためである。

果たして、英国の新首相であるリシ・スナク氏は国や国民に安定をもたらすことができるのだろうか? 元財務相、ゴールドマン・サックスの金融アナリスト、ヘッジファンドのパートナーという経歴が市場に信頼感をもたらしているようで、その結果、1ポンド1.15ドルに上昇し、1カ月以上ぶりの最高値となった。

本当に安定が国際投資を取り戻すための最良の方法なのだろうか。スナク首相は財務相の時に、コロナ感染症の世界的大流行の期間、深刻な失業や倒産を防ぐために一時帰休制度を導入したが、彼のこの経験や自信に裏打ちされた安定感こそ、英国が必要としているものと思われる。馬鹿げたことをしたり、リスクを伴う可能性にかけたりせずに、人々を導くことができる人物である。誰が首相になっても、簡単にはこの事態を乗り切ることはできないだろう。巨額の赤字があるため、スナク首相は、国がこれ以上債務を増やすことに反対している。つまり、国民からの徴税または海外投資の呼び込み、おそらくその両方で資金を用意しなければならないのである。

これは、スナク首相が英国と中東の関係構築に尽力することを意味するのだろうか。裕福なロシアのオリガルヒが退場したことで、別のルートで経済的利益をもたらす必要がある。米国と湾岸諸国との経済関係はいまだに揺らいでいる。これは、バイデン政権がイランの攻撃から守るためにイエメンに駐留しているサウジの軍用機の整備継続を拒否し、米政府から原油増産の要請があったにもかかわらず、サウジ王国が原油減産のOPEC(石油輸出国機構)の決定に断固としてこだわったためである。

実際、OPECは、価格変動を抑えるために、1日あたり200万バレルの追加減産の決定を発表した。ウクライナ侵攻によりOECD(経済協力開発機構)の石油備蓄が5年平均を8%下回り、エネルギー価格が上昇している中、サウジアラビアとOPECへ対応するスナク首相の能力が極めて重要となる。

英国経済が打撃を受け続けている中、必要とされているのは、財政をしっかりと理解している人物である

バシール・アル・マジェド

さらに、ウクライナによる諜報報告が事実で、イランがロシアに自爆型ドローン「シャヘド136」やその他軍需品を供給しているとすれば、サウジ王国や中東とより強固な関係を構築することは、賢明な選択と思われる。スナク首相は8月の時点で、イランに関して次のように述べていた。「新たな取引の強化と、より厳しい制裁措置が緊急に必要であり、もし結果が得られない場合は、包括的共同行動計画(JCPOA)が暗礁に乗り上げているのかどうかから、問い始めねばならない」

2015年にイランとの間で取り交わしたJCPOAでは、イランはウラン備蓄を削減し核施設の利用を制限することに同意したが、スナク首相は核以外の制裁を導入すべきだと考えている。英国がイランへのさらなる圧力を支持すれば、サウジアラビアでは間違いなく歓迎されるだろう。

スナク首相は、テロリズムと繋がっている宗教的過激主義に対し強硬路線を取っていることで批判を受けているが、一人たりともテロリズムから恩恵を受けることはないと、すべての国が賛成するだろう。英国の新しいリーダーは、テロ組織から狙われる可能性のある脆弱な若者の過激化防止を目的とした英国政府の対過激派戦略「防止」をより強力に実施すると誓っていた。この政策は理論上、正しい。実際に過激化した100人の子供が紛争地域に送られるのを防ぎ、2,000人以上の脆弱な個人を支援している。

しかし、この戦略は、イスラム教徒の個人情報を調査したりレッテルを貼ったりすることとなり、イスラム教社会や人権保護団体から批判を受けている。スナク首相は、テロ組織が資金洗浄を行うあらゆる機会を抑え込むために、一部のアラブ諸国に対して金融の安全性強化の圧力をかけることを支持する可能性が高い。

経済の分野で経験を積んだスナク首相は、財政的に有益と思われるところには注意を向けそうである。このような姿勢が国際政治と外交の世界でどのような形で現れるのか、興味深いこととなるだろう。全世界が安定せず、食料と燃料の価格が上昇し、世界同盟が新たに形成される可能性がある中、政治的な理解を深めることが鍵となるかもしれない。しかし、英国経済が打撃を受けているいま、必要とされるのは、財政に明るい人である。英国は、スナク首相がこの嵐を切り抜け、国の安定を保つことができると希望を見いだせるだろう。

  • バシール・アル・マジェド氏は、クウェート大学法学部教授であり、オックスフォード大学の客員フェローである。Twitter:@BashayerAlMajed
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