
ハゼム・バルーシャ
ガザ市:12月28日、パレスチナのマフムード・アッバース大統領が珍しくイスラエルを訪問し、同国のベニー・ガンツ国防相と会談した。
ガンツ氏は29日、パレスチナとの関係改善を目的とする多くの措置を承認した。
両者の会談は2回目で、前回の8月はラマッラーにあるパレスチナ大統領府で行われている。この会談では、イスラエルの報道機関が「日常的な安全保障問題」と表現するものに重点が置かれた。
パレスチナの一部の派閥は28日の会談を、「内部分裂の強化」と非難した。
しかし、アッバス氏が率いるファタハはこの会談について、「パレスチナ国民へのエスカレートする行為に終止符を打ち、国際的な正当性に基づく政治的道筋を切り拓く真剣な試み」と述べている。
アッバス氏に同行したパレスチナのフセイン・アル・シェイク民政相は、会談では「国際的に正統性のある決議に基づく政治的解決策につながる政治的地平を見出す」ことの重要性に焦点が当てられたと述べた。
アル・シェイク氏は、双方が「入植者の行為や攻撃による緊迫した現地の状況や、多くの安全保障、経済、人道上の問題」も話し合ったとツイートしている。
ガンツ氏側が発表した声明によると、2時間の会談を通じて、民政・経済問題に加えて、「安全と安定の維持や、テロと暴力の防止」が話し合われた。
ガンツ氏はアッバス氏に対し、安全保障面での協調の強化に取り組むと述べた。
会談後に、イスラエルのテレビ放送であるKANチャンネルは、パレスチナ高官の次のような発言を引用している。「ギャップは非常に大きく、現時点では政治的なブレークスルーの見込みはない」
「なにより政治的な安定が必要だ。これがなければ、何をやっても瞬時に破裂してしまう恐れがある」
今回の会談は、アッバス大統領との関係が良くなかったと報じられている、ドナルド・トランプ前米大統領の下での何年にもわたる政治的な膠着状態を経て行われた。
パレスチナ首脳部は、ジョー・バイデン大統領は違うと見ており、大統領が選挙キャンペーンの際に打ち出した公約を果たすことを求めている。これには、二国家解決策の実現に向けた政治的道筋を開くこと、イスラエルに入植停止の圧力をかけること、2018年にトランプ氏が閉鎖した東エルサレムの米領事館を再開することが含まれる。
米政府は既にパレスチナ当局への財政・経済支援を再開しており、12月14日の合同経済会議の後には新たなプロジェクトパッケージを発表している。
アッバス・ガンツ会談に先立って、パレスチナ大統領は米国のジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官率いる一団と会合を持ち、それとは別に米国のヤエル・ランパート近東担当国務次官補代行とも会談している。
パレスチナ当局は、会談の目的は政治的解決策への道筋をつけることであると述べていたが、観測筋の中には、会談はパレスチナ自治政府の崩壊を防ぐために行われたに過ぎないと注意を促す者もいる。
11月に、イスラエルのハアレツ紙は、イスラエル政府がバイデン政権に対して、ヨルダン川西岸地区の治安の悪化を防ぐために、危機に瀕しているパレスチナ自治政府への財政支援を増額するようアラブ諸国と欧州諸国に圧力をかけることを要請していたと報じている。
パレスチナ解放機構の執行委員であるワセル・アブ・ユースフ氏は、パレスチナ首脳部は「二国家解決策と国際的な正統性」に基づく政治的解決策が見つかることを信じていると強調し、「経済路線は政治路線の代わりにはならない」と訴えた。
同氏は、「トランプ前米大統領は、経済的な解決策を促して、パレスチナの政治的大義を終わらせるために数十億を上回る大量の資金を投入しようと試み、そのためにバーレーンで会議を開催したが、失敗に帰した」と語った。
「公平な政治的解決策がなければ、イスラエルのナフタリ・ベネット首相による、紛争解決ではなく紛争管理の試みのように、いかなる動きも時間の浪費であって、失敗に帰し、この地域に安定をもたらすことはない」
ヨルダン川西岸地区にあるヘブロン大学の政治学教授ビラル・アル・ショバキ氏は、アッバス・ガンツ会談が「政治的解決策を伴わない、経済・安全保障路線」に基づいている、と述べた。
米国とイスラエルの両政府は「パレスチナ自治政府の救済や、同自治政府の崩壊を防ぐための財政・経済支援に躍起になっているが、そこにはパレスチナ国家の樹立につながる可能性のある政治的解決策がいっさい伴っていない」と同氏は述べた。