ハゼム・バロウシャ
ガザ:1日未明にガザから発射されたロケット弾2発がテルアビブ沖の地中海に落下し、イスラエルは報復としてハマスの拠点を攻撃した。現在のところ双方から負傷者の発表はされていない。
事態の悪化を防ぐため、ハマスとイスラエルは、エジプトを通じて間接的にメッセージを交換した。
ハマスの軍事筋は、発射は意図的なものではなく、悪天候による誤作動が原因だと述べている。
イスラエル軍によると、ガザからテルアビブ沖に向けてロケット弾2発が発射されたが、サイレンは鳴らず、同国の防空システム、アイアンドームもロケット弾に向けて迎撃ミサイルを発射しなかったとのことだ。
イスラエル軍の声明によると、イスラエル警察は市民から爆発音を聞いたとの通報を受けたが、被害や負傷者は報告されていないという。
パレスチナおよびイスラエル双方のメディアによると、エジプトは事件がガザでの緊張をエスカレートさせることがないよう、直ちに両者の仲介に乗り出したという。
ハマスの軍事部門「エヅツ・エル・ディン・アル・カッサム」(Ezz El Din Al-Qassam Brigades)に近いウェブサイトは、匿名の情報源を引用して、2発のミサイルは天候条件により発射されたもので、試射の予定等もなかったと述べている。
この発射に対してイスラエル軍は1日夜に反撃し、「ガザ地区のテロリストの拠点」を攻撃した。
イスラエル軍は声明で、軍の戦車がガザ南部ハンユニスのロケット弾製造施設とハマス陣地を攻撃したが、攻撃はハマスのロケット弾発射への対応として慎重に考慮されたものだと述べている。
ハマス·ラジオによると、イスラエル軍の航空機と戦車が、ハマスの警備施設と訓練キャンプを攻撃したという。今のところ死傷者が出たという報告はなされていない。
ここ数日、ハマスは海に向けて実験用のロケット弾を頻繁に発射していた。
イスラエルのチャンネル13は、仲介役を務めているエジプトが、ハマスに対し「ロケット弾の発射は天候条件を要因とするものだという証拠が提供されてはいるが、イスラエルは、従来通りのこうした説明にはもう納得していない」と伝えた、と報じている。
イスラエルがテルアビブ沖でガザからのロケット弾を探知したと発表したのは、2021年5月の軍事衝突以来、今回が初めてとなる
昨冬にも、ガザからロケット弾が発射され同様の事態が発生したが、その際もハマスは悪天候によるものだと説明していた。
先週29日には、イスラエル人がガザからの銃撃で負傷したとの発表を受けて、イスラエル軍戦車がガザ北部のハマスの拠点を爆撃し、治安情勢が緊迫の度を増していた。
今回の 2発のミサイルの落下後、イスラエルの治安・軍事レベルの諸部門は「治安評価会議」を開いた。イスラエルのニュースサイト「Walla」のアミール・ブフブット軍事担当特派員によれば「イスラエルの治安当局にはハマスの釈明を信じる者もいるが、(釈明を信じて)弱い対応をすればイスラエルの弱さを示すことになってしまうし、かといって強く反応すればそれに対するまた別の反応を引き起こしてしまいかねない」という懸念があるとのことだ。
2発のロケット弾発射について、パレスチナ側のどの派閥からも実行声明は出されていない。
イスラエルのチャンネル14は「ナフタリ·ベネット首相率いるイスラエル現政権の対応力が試されている。反応するか、先週の狙撃事件のように無視を続けるかのどちらかだ」と伝えている。
パレスチナ情勢の観測筋は、イスラエルが対応策を取るとしても、その内容は限定的なものになるだろうと見ている。
ガザのアル・アズハル大学のイブラヒム・アブラッシュ教授(政治学)は、停戦に向けた協議が続いていることや、ガザでのいかなるエスカレーションもワシントンから承認されないことを考慮すると、イスラエル政府が「大規模な対応」をするのは難しいだろうと指摘する。
アブラッシュ教授は、パレスチナのどの派閥もロケット弾発射の実行責任を認めていないことは、イスラエル政府は、強い対応策を取らないことを国民に納得させる大きな理由になり得る、と述べた。一方、ガザのパレスチナ諸派閥も、「また新たな戦争を始めることになれば、非常に高い代償を払うことになる」ことを理解しているという。
今回の事件は、ハマスとその同盟組織·イスラム聖戦機構が、包囲戦略と再建プロセスに関連する問題について、またイスラエルの刑務所における囚人の扱いに対して、怒りの感情を抱いている中で発生したものだ。
前回の軍事衝突の終結以来、ガザ地区の復興に向けたプロセスは滞っており、ハマスとイスラム聖戦機構はますます頻繁に、イスラエルや支援国に対し復興プロセスの加速を迫ろうと、脅迫的な行動を取るようになっている。
(ロイター通信との共同記事)