
ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノンのサアド・ハリーリ元首相は24日、次期総選挙に出馬せず政治活動を休止すると宣言した。
不機嫌な表情でハリーリ氏が宣言したことにより、支持者や仲間の政治家たちはショックを受けた。
ハリーリ氏は、2005年に父親のラフィーク・ハリーリ元首相が暗殺された後に急きょ政界入りした。首相を3期務め今年51歳になるハリーリ氏はベイルートで記者会見を開き、自らの決断を発表した。
さらに党首を務める「未来運動」に対し、自分と同様に次期総選挙には出馬せず、代理候補も指名しないよう求めた。
ハリーリ氏が今回の決断を正しいと確信する理由は「イランの影響力・国際社会の困惑・国内の分断・宗派間の緊張の高まり・国家の劣化が明らかな現状では、レバノンが前進する見込みが全くない」からだという。
イランの影響力・国際社会の困惑・国内の分断・宗派間の緊張の高まり・国家の劣化が明らかな現状では、レバノンが前進する見込みは皆無だ。
サアド・ハリーリ
ハリーリ氏はこう述べた。「我々は政治権力・立法・従来ながらの政治の世界で、あらゆる役割や責任を担うことを一時中断すると決意した。今後は国民としての立場から、ラフィーク・ハリーリ元首相の抱いたビジョンに忠実に従い、内戦を回避し全レバノン国民の生活を向上させるため汗を流していく」
「我々は引き続きレバノンとレバノン国民のために活動する。我が党は善意・レバノン中の同志や最愛の人々に対し、今後とも協力の手を差し伸べる」
ハリーリ氏は今回の決断により「個人資産・国外の仲間の一部・国内の友党の多く・同志や兄弟さえ失う結果に至った」と述べた。
ハリーリ氏は涙を流し不快感をあらわにして、17年前父親が総選挙不出馬を決めた際に述べたセリフを口にした。「私は愛する祖国レバノンとその国民を、全能の神の手に委ねる」
ハリーリ氏率いる未来運動は最後の瞬間まで、ハリーリ氏が目的達成のため立ち回っていると信じて疑わなかった。
今回の決定により、5月に予定される次期総選挙には大きな影響が出るとみられる。スンニ派の有力政治家が一切出馬しないからだ。
ハリーリ氏の決断と時を同じくして、タンマーム・サラーム元首相も次期総選挙への不出馬を決めた。サラーム元首相は他の首相経験者も出馬しない可能性があるとコメントした。
ハリーリ氏はレバノンの政治的均衡を保つ上で極めて重要な役割を果たしてきており、ミシェル・アウン氏を大統領に選出する際には最大の立役者となった。これにあたりハリーリ氏は自由愛国運動(FPM)と協定を結ぼうとしたが、後にFPMは協定内容に対し不快感を示した。
この時は「レバノン軍団」のサミール・ジャアジャア党首が、FPMと和解して自らアウン氏の立候補に支持を表明したため、協定が発効するに至った。
ハリーリ元首相の記者会見は、約3か月ぶりの閣議実施と同時に開かれた。
閣議ではナジーブ・ミカティ首相が「総選挙まで残された時間があまりにも短い」と述べた。
さらにミカティ首相は「主に国民の日常生活に関わる根本的な問題にけりを付けるため最大限努力する。電気供給・予算・ガスや石油の輸入といった問題だ」と述べた。
アウン大統領が司会しミカティ首相が同席した閣議では、2021年予算案が承認され、これには複数の社会保障給付も含まれた。
さらに閣議では、民間や公共部門・軍隊・治安当局の職員の通勤手当増額も承認された。ただし2022年予算案を議会に送付する前に、毎日の閣議で議論することが条件となっている。
こうした決定を受け、アッバス・ハラビ教育相は公立学校に対し、25日から授業を再開して「ストライキや学校閉鎖で、1学期丸々潰れてしまった埋め合わせをする」よう求めた。
閣議では、国家腐敗防止委員会の委員6名の任命手続きを完了した。
ナイラ・リアチ・アサケル行政開発担当相は、この手続きに対し「期待される改革を実現するため、政府が具体的に動くという方向を反映したものだ」と述べた。
閣議が終了して数時間後に、レバノン政府は国際通貨基金(IMF)代表団との予備交渉を開始した。
テレビ会議で焦点となったのは、レバノンが支援計画の対象となる資格を得るために着手すべき改革だった。