Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • タリバンの権力掌握以降殺害された元アフガン政府軍兵士・職員が100名超え、国連事務総長

タリバンの権力掌握以降殺害された元アフガン政府軍兵士・職員が100名超え、国連事務総長

カブールのアフガニスタン陸軍士官学校の卒業式で行進する政府軍新兵たち、2020年11月29日。(AP Photo/資料写真)
カブールのアフガニスタン陸軍士官学校の卒業式で行進する政府軍新兵たち、2020年11月29日。(AP Photo/資料写真)
Short Url:
31 Jan 2022 05:01:21 GMT9
31 Jan 2022 05:01:21 GMT9
  • 犠牲者のほとんどは、タリバンや関連組織により即決処刑されたとみられる
  • さらに国連ミッションの記録によると、一時的な身柄拘束・むち打ちの刑・脅迫事件が44件

国連:アントニオ・グテーレス事務総長によると、タリバンが昨年8月15日にアフガニスタンを掌握して以来、100名を超える元アフガニスタン政府職員・兵士・多国籍軍の協力者たちが殺害されたとの「信頼できる情報」が国連に寄せられているという。

グテーレス事務総長の出した報告書を、AP通信が30日に入手した。タリバンは旧政府とアメリカ主導の多国籍軍と関係する「すべての人に恩赦を与える」と発表したが、報告書では犠牲者の「3分の2以上」がタリバンや関連組織により、司法手続きを経ずに殺害されたとみられるという。

国連の駐アフガニスタン政治ミッションのもとには、アフガニスタンで活動するダーイシュ(IS)傘下の武装組織「ダーイシュ・ホラサンとの関係が疑われる少なくとも50名が司法手続きを経ず殺害されたとの信頼できる情報」が寄せられた、とグテーレス事務総長が国連安保理に宛てた報告書で述べた。

さらに事務総長は、タリバンが安全を保証したにも関わらず、国連政治ミッションのもとには元政府職員や多国籍軍スタッフの「強制失踪など生命や身体の安全性を脅かす違反行為」に関する情報も寄せられていると述べた。

グテーレス事務総長は、人権擁護家や報道機関職員も引き続き「攻撃・脅迫・嫌がらせ・恣意的逮捕・虐待・殺害にさらされている」と述べた。

市民社会活動家8名が殺害され、そのうち3名はタリバン、3名はダーイシュ過激派の仕業だった。さらにタリバンにより10名が一時的な身柄拘束・むち打ちの刑・脅迫を受けたと、事務総長は述べた。ジャーナリスト2名が殺害され、うち1名はダーイシュが殺害した。さらにジャーナリスト2名が、身元不明の武装集団により負傷した。

事務総長は、国連ミッションが記録した一時的身柄拘束・むち打ちの刑・脅迫事件は44件にのぼり、うち42件がタリバンの仕業だと述べた。

アメリカ軍とNATO軍が駐留開始20年後に混乱の中で撤退した際、タリバンはアフガニスタンの大部分を制圧した。タリバンは8月15日にカブールに侵入したが、アフガニスタン政府軍の抵抗はなく、アシュラフ・ガニ大統領は逃亡した。

タリバンは当初、旧政府と多国籍軍に関与したすべての人々に恩赦を与え、女性や少数民族を寛容に扱い受け入れると約束していた。

しかし、タリバンは女性に対する行動制限を復活させ、男性のみで構成される政府を任命した。そのため国際社会の落胆を招いた。

タリバンが権力を掌握した時点で、アフガニスタンの援助依存型経済はすでにつまずいていた。国際社会はアフガニスタン政府の海外資産を凍結し、経済支援を停止した。タリバンがアフガニスタンを統治していた1996年から2001年にかけての残虐行為に関する悪評と、少女の教育と女性の就労を拒否していた点を思い起こしたからだ。

グテーレス事務総長は「アフガニスタンの国内状況は、タリバンの権力掌握から6カ月が過ぎた現時点でも不安定であり、ショッキングな政治的・社会経済的・人道上の事件が全土で多数起きている」と述べた。

 

アントニオ・グテーレス国連事務総長。(AP/資料写真)

事務総長によると、今日のアフガニスタンは多くの危機に直面しているという。人道的緊急事態の増加・経済の大幅な縮小・銀行や金融システムの崩壊・27年ぶりの大干ばつ、さらにタリバンが全国民の声を反映する政府を発足させず、少女が教育を受け女性が働く権利を復活させていない点だ。

「2022年3月まで2280万人が『危機』または『緊急』レベルの食糧危機にさらされると見込まれる」と事務総長は述べた。「うち約900万人が『緊急』レベルの食料危機にさらされるだろう。これは世界でも最悪の数字だ。5歳未満の子供たちの半数が急性栄養失調に陥っている」

肯定的な面として、グテーレス事務総長はタリバンの権力掌握以来、紛争関連の治安事件の総数と民間人死傷者数が「大幅に減少」したことを報告した。国連では8月19日から12月31日までにかけ、985件の治安関連の事件を記録したが、2020年の同時期と比較して91%減少したという。

記録された全事件の75%を東部・中央部・南部・西部が占めており、ナンガルハール・カブール・クナル・カンダハールの各州で最も紛争の被害が大きかったという。

グテーレス事務総長は、戦闘は減少したが、タリバンは構成員に対する武力攻撃の増加など複数の問題に直面していると述べた。

「その一部は、アフガニスタンの反タリバン勢力や旧政府とつながる勢力で構成される『民族レジスタンス戦線』によるものだ」と述べた。「定期的に武力衝突が起き、住民の強制退去や通信の遮断も起きている」が「主にパンジシール州とバグラン州のアンダラブ地区で活動しているこれら勢力は、支配領域の大幅な拡大には至っていない」という。

グテーレス事務総長は、タリバン内部での民族間の敵対意識や仕事の奪い合いも武力衝突の引き金になっているとし、11月4日にバーミヤン市で発生したタリバン部隊同士の武力衝突を例に挙げた。

報告書で事務総長は、現状において国連政治ミッションが取るべき優先事項を提案し、国際社会に対しては広範囲に渡る飢餓とアフガニスタン経済の崩壊を防ぐため援助を要請し、タリバンには女性の権利や人権を保証するよう要請した。

AP

特に人気
オススメ

return to top