• アラブ社会では7つの犯罪組織が活動しているが、警察と市民の間の不信感が取り締まりを困難にしている

モハメド・ナジブ

ラマッラー：イスラエルに住む約150万人のパレスチナ人は、彼らのコミュニティの広範囲にわたり、好き勝手に活動する組織犯罪集団に翻弄されている。ギャングの活動により、2021年には125人が死亡した。そのうち62人は30歳未満で、今年に入ってからもさらに14人が死亡している。

イスラエル警察によると、アラブ系コミュニティでは7つの犯罪組織が活動している。以前はユダヤ系犯罪組織の「請負人」として働いていたメンバーもいたが、2016年までにその多くが解体された。そしてアラブ系ギャングがその空白を埋め、数万個の武器を自由に使えるようになったという。

アラブ系コミュニティ内で組織犯罪と、それに伴う暴力を煽る要因はいくつもある。例えば、イスラエルの銀行は、イスラエル当局の建設許可証を持っていない人には融資をしない。その代わりにアラブ人は闇市場や犯罪組織や家族から融資を受ける。そして、借金を期限内に返済できなければ、暴力の対象になる。

16歳から18歳の若者にとって、犯罪に手を染めることは、手っ取り早く金を稼ぐ手段として、魅力的な選択肢のひとつとなっている。

資金の流れは、収益性の高い武器の売買にも及ぶ。ピストルの価格は3086ドルから6173ドル、M16アサルトライフルは約2万1605ドルである。売りに出される武器は、通常、イスラエル軍の倉庫から盗まれたものだ。

組織犯罪に関連して逮捕・起訴される容疑者の大半は末端の「契約者」であり、ギャングのリーダーや犯罪に資金を提供する者たちではない。

組織犯罪に取り組む上で決定的な障害となっているのは、パレスチナ人コミュニティーの中にあるイスラエル警察に対する不信感と、彼らがアラブ地域の犯罪に対し、適切に対処していないという考えである。警察もまた、コミュニティーが犯罪撲滅に協力的でないことを非難している。

アラブ人は、犯罪者を通報しても報復の対象にされ、警察も守ってくれないという。さらに、警察は武器を没収するなどの措置はとるが、容疑者を逮捕することはほぼ無く、逮捕しても裁判にかけることはほとんどないという。

警察は、容疑者を起訴するためには十分な証拠が必要だが、十分な人員、予算、技術がないため、それを得ることは困難だという。

警察を支援するためにイスラエル内部安全保障機関「シンベット」を利用することを求める声もあるが、同機関が民事に介入することには強い抵抗がある。

一方、イスラエルのナフタリ・ベネット首相とオメル・バーレフ公安相は、組織犯罪と違法兵器を厳しく取り締まると公約したが、暴力の勢いはほとんど衰えていない。イスラエル警察は、パレスチナ人コミュニティ内の暴力に対処するためにサイフという部隊を設立している。

アラブニュースが入手した警察の声明によると、今年に入ってから銃撃の件数は36％減少している。

イスラエル警察アラブ部門防犯課の責任者であるイガル・エズラ大佐は、次のように述べている。「イスラエル警察は今年に入ってから、いくつかの殺人事件を取り締まった。主犯格とされる122人の容疑者を起訴し、そのうち102人を逮捕した」

150万人のパレスチナ人を含む人口900万人のイスラエルは、現在3万2000人からなる部隊で取り締まりを行っている。警察当局は、5000人以上の増員、予算の増加、より良い技術の利用を望んでいる。

アラブ人の村に隣接するユダヤ人の町へアラブ人が移り住み始めており、警察にとっても無視できない問題になっている。このため、アラブ人コミュニティーの組織犯罪に対する活動を強化することが期待されている。

一方、パレスチナ人コミュニティーでは、当局が組織犯罪の減少を主張しているにもかかわらず、組織犯罪とそれに付随する暴力は続いている。実際、ギャングが武器として自動車爆弾を採用したことで、ギャングがもたらす危険性は著しく増している。

アラブ人コミュニティーの組織犯罪と暴力を監視しているアマン・センターのリダ・ジャベール所長は、アラブニュースに対し次のように述べた。「警察のパフォーマンスには改善が見られるが、要求されるレベルには達していない。アラブ人コミュニティーの犯罪と暴力に対抗する努力をさらに強化すべきだ」