
ベイルート:レバノンでは、長期にわたる経済破綻が生徒や教師に大きく影響し、教育が「緊急事態」に陥っていると、国連当局者が述べた。
「私たちは今、緊急事態にあります。レバノンの教育の危機的状況は、国自体の危険な状態を反映したものです」と、ユネスコ(UNESCO、国連教育科学文化機関)のメイスーン・シェハブ氏は述べた。
シェハブ氏のコメントは、2020年の爆発事故で被害を受けた280の教育センターを修復する総額3500万ドルをかけたユネスコによるプロジェクトの完了を祝うイベントの際になされたものだ。
ベイルート港に無造作に置かれていた肥料による爆発で、200人以上が死亡し、付近一帯が破壊され、少なくとも8万5000人の若者の教育に支障をきたした。
ユネスコのオードレ・アズレ事務局長は事故の数週間後にベイルートを訪れ、文化遺産や被害を受けた学校の復旧作業を推進した。
生徒と教師たちは、今は真新しい教室を使えるようになっているが、レバノンにおける前例のない経済危機とコロナウイルスの大流行という2つのマイナス要素の影響に依然として苦しんでいる。
毎日20時間以上続く停電やガソリン価格の高騰により、多くの学生には授業に出る余裕も、自宅で勉強する余裕もなくなっている。
「学校には本来の運営をするための十分な資金がなく、教師には豊かに暮らすための十分な給料がなく、学生には燃料価格の高騰により移動手段がありません」と、ユネスコのレバノン担当教育主任官を務めるシェハブ氏は指摘している。
「こうした問題のすべてが教育の質に悪影響を及ぼしているのです。」
かつて450ドル相当の水準にあった最低賃金は、現在28ドル相当にまで落ち込んでいる。
この危機的状況により、学生たちは生活費を稼ぐために学校や大学を辞めざるを得なくなった。
教育機関への入学率は、昨年の60%から今年度は43%と大幅に下がっていることが、国連児童基金(UN Children’s Fund)の報告で明らかにされている。
一方、レバノンのナジーブ・ミカティ首相は、5月15日に予定されている議会選挙を遅らせる口実を誰にも与えないために、首相の座に留まるつもりだと述べた。
この選挙は、レバノンの2019年の財政破綻と、数十年にわたる浪費と汚職に責任があるとされるエリート支配層に怒る数千人の人々が街頭で声を上げた抗議行動以来、初めてのものである。
「無理に辞任することはありません。私の辞任が議会選挙を妨げる口実になってはいけないからです」と、ミカティ首相は議会での討議の合間にテレビ放映された発言の中で述べた。
「これ(議会選挙への影響を避けること)が、私が辞任しない理由です」とミカティ首相は述べた。首相はまた、自身が政府の信任投票を要求したが、ナビ・ベリ議会議長に拒否されたことを明らかにした。
ミカティ首相が信任投票を要求したのは、一部の関係者による政府への批判的な発言を受けてのものだったとのことだが、具体的な説明はなかった。
首相は苛立ちを見せながら、一部の政党の選挙への思惑が、レバノンを1975~90年の内戦以来最も深刻な危機から救い出そうとする政府の努力に水を差している、と批判した。
ミカティ政権は「共に救おう(Together to the Rescue)」と名付けられているが、レバノンが支援を得ようとしている欧米の援助国や国際通貨基金(IMF)が要求する財政・改革措置に合意することはできていない。
ミカティ氏は莫大な資産を持つ大物実業家で、現在3度目の首相の座にある。今月初めには、128人の議員からなる議会の選挙に今回は出馬せず、後進に場所を譲りたいと語っていた。
ロイター / AFP