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トルコ紙ハリエット トルコはシリアとの対話の機会を検討

シリア北西部アフリンの田舎にあるジンダイリス村の西側、シリア国境近くのトルコ軍の陣所。(ファイル/AFP)
シリア北西部アフリンの田舎にあるジンダイリス村の西側、シリア国境近くのトルコ軍の陣所。(ファイル/AFP)
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07 Apr 2022 05:04:10 GMT9
07 Apr 2022 05:04:10 GMT9
  • トルコに住むシリア難民の帰還をめぐり、二国間協議が行われるとする新たな報道
  • トルコとシリアは近年、それぞれの情報機関を通じて低レベルの接触を継続

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコ政府は、シリア政府との対話チャンネルを確立する機会を検討していると、親政府系のハリエット紙が報じた。

匿名の情報源を用いて、同トルコ日刊紙は次のように述べた。「トルコが最近とっているバランスのとれた政策、そして政府がここ数ヶ月、特にウクライナ戦争の解決に向けて果たしている役割を踏まえると、シリア危機を解決するのは今が最適であることを示している」

二国間協議は3つの重要な問題に焦点を当てると記事は述べている。クルド労働者党(PKK)の活動に対するシリア国家の統一構造の保護、シリアの領土保全、そして、現在トルコに住んでいるシリア難民の約半数の安全な帰還を認めることである。

このハリエット紙の報道について、シリア、トルコの両政府いずれからもまだコメントは出ていない。

カーネギー・ヨーロッパのシニア・プログラム・マネージャーであるフランシスコ・シカルディ氏はアラブニュースに次のように語った。「トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、シリアのバッシャール・アサド大統領と和解する可能性があり、その政治的機会を掴んでいる」

「ロシアとウクライナの仲介役を演じた後の今であれば、シリアのシナリオでも慈悲深い指導者を演ずることができるだろう。この2つの構想が実を結ぶかどうかは二の次で、こうした姿勢を示すことが、国内外での彼のイメージアップにつながるのだ」

シリアとの外交関係の改善は、高騰するインフレと購買力の低下の中で、国内に370万人の難民を受け入れているトルコの政治的・経済的負担を軽減することにもつながるかもしれない。同国を圧迫している経済問題は、しばしば制御不能な数の難民の存在に起因するとされている。

シカルディ氏によれば、現在トルコにいるシリア難民の一部がシリアに帰還することが認められれば、この構想はエルドアン大統領にとって素晴らしい利益を生む可能性があるという。

ハリエット紙はまた、トルコはアサド氏の先月のUAE訪問を、国の安定化を望む同氏が新たなイニシアティブを取り、新たな支持を集める意志を示したと見ている、と主張する。

一方、トルコとエジプトの関係正常化も視野に入っている。約9年ぶりにエジプトのトルコ大使が任命されるとの未確認情報もある。

専門家は、トルコが現在進めている中東・湾岸諸国との国交正常化には、必然的にシリアとの関係再開が必要となると指摘する。

ロンドンに拠点を置く英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のサミュエル・ラマニ准研究員は、トルコは危機外交の領域でますます重要なアクターになっていることを自認している、と指摘する。

「トルコはロシアとウクライナの対話促進・仲介役を務めており、その経験をシリアに生かそうとしている。アサド氏の最近のUAE訪問は、彼がアラブ諸国と関係を正常化しつつあることを強調している。トルコのアサド氏に対する反感にもかかわらず、同国は彼がシリアにおける唯一の指導者の選択肢であることを認識している」と彼はアラブニュースに語った。

ラマニ氏によれば、トルコがUAEやエジプトといった地域の大国との緊張を緩和しようとしていることを考えると、緊張の源であるシリアの課題を排除することはその意図にかなうものだという。

シリアで内戦が始まって以来、トルコは、同国がPKKと関連付けているシリアのクルド人武装勢力に反撃するため、シリア北部で何度も軍事作戦を実施した。

1998年のシリアとトルコで交わされたアダナ合意によると、両当事者はシリア国境からPKKの戦闘員を排除するために必要な措置を取ることが要求されている。

トルコ政府はシリアに数千人の軍隊を配備し、数十の軍事拠点と基地を設置しており、シリア側はこれを自国の主権の侵害と考えている。

3カ国会合「アスタナ・プロセス」の下、トルコ、ロシア、イランによる最後の会合は12月に開催された。トルコの親ウクライナ中立政策をめぐるロシアとの不和が、シリアの力学にどのような影響を及ぼすかはまだわからない。

ラマニ氏によれば、トルコはウクライナをめぐるロシアとの意見の相違を、シリアにおけるモスクワとの関与に区分けしようと腐心している。

「ロシアとトルコの間のパトロールはシリア北部で続いている。ロシアの戦車はトルコが反対している戦争への支援の象徴である「Z」マークを掲げて走りまわっている。トルコのイブラヒム・カリン大統領報道官は、トルコがシリアなどの舞台でロシアと関わりを持ちながらも、ウクライナでの行動には反対していることを、西側諸国が参考にできるモデルとして挙げている」

ラマニ氏は、トルコは欧米の対ロ制裁には加わっていないため、ロシア政府がシリアにおけるトルコとの対話に異論を唱えることはないと見ている。

「トルコとアサド氏の対話も歓迎するだろう」

シカルディ氏にとって、トルコはシリアで失うものが多く、両国国境のイドリブでの現状変更はトルコに破滅的な結果をもたらす可能性があると見ている。

「300万人以上の市民がそこに避難している。ロシアの支援を受けたアサド政権の攻撃によって、多くの人々がトルコに流入する可能性がある。トルコにはすでに400万人近いシリア人が避難している。これは、現在トルコに住んでいるシリア人の大部分を安全に帰国させるために活動しているエルドアン大統領にとって、非常に大きなダメージとなるだろう。このような結果を防ぐために、トルコはロシアとの関係を非常に注意深く扱い、守り続けるだろう」

昨年、エルドアン氏はシリア北部のクルド人勢力に対する新たなトルコの軍事作戦の可能性を提起したが、今のところそのような攻勢は国内の議題にはなっていない。

「しかし、2023年の議会選挙と大統領選挙を見据えた場合、シリアでの新たな軍事作戦の計画は、エルドアン大統領が民族主義的な有権者とつながり、支持を集めるのに役立つだろう」と、トルコとロシアの関係に詳しいアイディン・セザール氏はアラブニュースに語った。

「昨年、ロシアはシリアに軍事攻勢をかける計画にゴーサインを出さなかった。しかし、ウクライナ紛争をめぐるロシアとアメリカの現在のバランスを考慮すると、ロシアは米軍を新たな混乱に巻き込むために、クルド人武装勢力に対するシリアでの軍事攻勢を推し進める可能性がある」

セザール氏によると、選挙前にトルコとシリアの和解が実を結べば、難民の送還は政治的な相殺を伴って行われる可能性があるという。

「シリアはトルコに、シリア難民の送還に協力する変わりに、ほとんどがトルコ国籍を持つシリア国民軍の戦闘員の引き取りを要請することができる」と述べ、さらに次のように付け加えた。「トルコがシリアに関してUAEと協調策を取るなら、ロシアとも戦略を合わせるべきだ」

トルコは過去4年間、情報機関を通じてシリアとの低レベルの接触を維持してきた。

しかし2019年、エルドアン大統領は「100万人以上のシリア人の死に責任がある」アサド大統領とは絶対に対話をしないと断言していた。

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