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水の使い過ぎと気候変動でイラクのサワ湖が枯渇

「この湖は石灰岩の上に形成されており、湖を囲む石膏バリアによって隔離されている。その水質化学は珍しいものである」と、湿地の保存に関するラムサール条約では述べられている。(AFP)
「この湖は石灰岩の上に形成されており、湖を囲む石膏バリアによって隔離されている。その水質化学は珍しいものである」と、湿地の保存に関するラムサール条約では述べられている。(AFP)
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27 Apr 2022 03:04:31 GMT9
27 Apr 2022 03:04:31 GMT9

イラク、サワ湖:イラク西部の砂漠の端にある「釣り禁止」の標識は、この場所がかつては多様な生物が生息する湿地で、レクリエーションのメッカであったサワ湖を示す数少ない手がかりの1つだ。 

人間の活動と気候変動がタッグとなって、この場所は塩で覆われた不毛の荒れ地に変わってしまった。

ここにある廃墟となったホテルや観光施設は、砂地の岸に囲まれた塩湖が絶頂期には、泳ぎやピクニックを楽しむために訪れた新婚夫婦や家族で賑わっていた1990年代を思い起こさせる。

しかし現在、首都バグダッドの南にあるサマワ市に近いこの湖は完全に干上がっている。

かつて湖岸であった場所にはボトルが散らばり、ビニール袋が枯れた低木にぶら下がり、そして2つの浮桟橋は錆びついている。

「今年、初めて湖が消失しました。これまでは、乾季に水域が狭くなっていましたが」と環境活動家のフサム・スビ氏は語った。

現在、塩を含んだ砂地には、湖と地下水面をつなぐ水源に池が残るだけで、そこでは小さな魚が泳いでいる。

この5平方キロメートル(2平方マイル)の湖は2014年以降干上がってきたと、ムタナ州のユーセフ・ジャバー環境局長は話す。

その原因は「気候変動と気温の上昇」であると彼は説明した。

「ムタナは砂漠地帯であり、干ばつと降雨量の不足に苦しんでいます。」

また、先週発表された政府の声明では、この地域の農業用に「1,000か所以上の井戸が違法に掘られた」と指摘された。

さらに、近くのセメント工場と製塩工場は「湖に水を供給する地下水からかなりの量の水を枯渇させた」とジャバー氏は語った。

サワ湖を生き返らせるのは奇跡にほかならない。

砂漠化に見舞われ、気候変動に対する最も脆弱な5か国の1つと見なされる国において、帯水層の利用は抑制されなければならず、3年間の干ばつを経た今、この地域は数シーズンにわたる豊富な降雨を必要としている。

湿地の保存に関する世界的な条約であるラムサール条約では、サワを「水の出入り口のないサブカ(塩類平原)にある閉鎖水域であるため貴重な存在」と認めている。

「この湖は石灰岩の上に形成されており、湖を囲む石膏バリアによって隔離されている。その水質化学は珍しいものである」と、ラムサール条約のウェブサイトでは述べられている。

渡り鳥の立ち寄り地であるこの湖は、かつてカタシロワシ、フサエリショウノガン、ウスユキガモといった「複数の世界的な危急種の生息地」であった。

干ばつの危険に直面しているイラクの水域はサワだけではない。

イラクのソーシャルメディアは、ユネスコに登録されている南部のハウエイザ湿地や、中部のカルバラー県にあるラザザ湖など、グロテスクにひび割れた地表の写真であふれている。

イラク水資源省のアウン・ディアブ上級顧問は、現在サワでは、この地域におけるかつての平均降雨量の30%まで降雨量が急減したため、地下水位が低下し、その地下水も井戸のせいで枯渇していると述べた。

そして、気温の上昇が蒸発を加速させた。

ディアブ氏は、当局が新しい井戸の掘削を禁止し、全国の違法に掘られた井戸を閉鎖する取り組みを行っていると述べた。

故郷のサマワと養子となったスウェーデンを行き来するラティフ・ディベス氏は、過去10年間、環境意識を高めるために尽力してきた。

この元自動車教習所のインストラクターは、ユーフラテス川のほとりを清掃し、自宅の広大で緑豊かな庭園を公共の公園に変えた。

彼は、子どもの頃の遠足や家族でサワに泳ぎに行った休暇のことを覚えている。

「当局が関心を持っていたら、湖がこんなに早く消失することはなかったでしょう。信じられません」とディベス氏は語った。

「私は60歳で、この湖で育ちました。湖がなくなる前に私は居なくなると思っていたのですが、残念ながら私より湖は先になくなりました。」

AFP

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