
イスタンブール:タイイップ・エルドアン大統領は、トルコの経済の景気動向を左右する大規模プロジェクトであるとして、何百人もの請願者とイスタンブール市長の反対にもかかわらず、イスタンブールの端に運河を掘る計画を復活させた。
昨年、トルコは経済が後退に傾き出したことから、この推定750億リラ(126億ドル)のプロジェクトは事実上中断した。しかし、ここ数週間の間に、エルドアン氏は、45km(28マイル)の「イスタンブール運河」の建設を国内政策のトップに上げた。
イスタンブール西部に計画された400m幅の運河は、黒海とマルマラ海北部とを結ぶものである。トルコ最大の都市を横切る天然の海峡である風光明媚なボスポラス海峡の船舶の混雑を緩和するものである。
金曜日には、世界で最も往来の多い水路であるボスポラス海峡で貨物船が座礁した。稀な事故であるが、エルドアン氏は、運河があれば防ぐことができると述べている。
政治的分裂:
エルドアン氏は、「環境救済」と呼び、ボスボラス海峡の通行量を軽減し歴史的構造物を保護するために必要であると述べている。
彼は、2011年に初めてこの考えに言及し、「クレージー・プロジェクト」と呼ばれた。しかし、2018年の通貨危機により、トルコは大型プロジェクトへの投資を凍結することになった。
イスタンブール運河は、11月に大統領の政策に復活することになり、主要野党出身のエクレム・イマモール新イスタンブール市長との対立に拍車をかけることになった。
将来の首相候補とみなす人もいるイマモール氏は、今年選出された時には、エルドアン氏の与党に手痛い敗北をもたらした。彼は、運河はお金がかかり過ぎ環境を破壊すると警告し、同プロジェクトの主たる反対者となっている。
環境リスク:
イスタンブールの急成長と緑豊かな空間が不足していることが主要な社会的関心事となっており、2013年には市内の公園に建造物を作る計画が全国的に抗議を引き起こした。
トルコ技術者建築家会議所組合(TMMOB)によると、運河案は、海洋動物と渡り鳥にとって重要なエコシステムとなっている潟を通過し、破壊することになるという。
それは、市の3分の1近くの真水を提供する2つの流域を破壊することなり、地下水の塩分を増加させ、西側の農地にも害を与え、黒海の酸素量も増加させることになると、同グループは述べている。
財源についての疑問:
運河は、エルドアン氏の17年にわたる統治下での好景気を主導してきた廉価な外国からの融資で活性化された一連の大規模建設プロジェクトの最新のものである。
運河用の資金がどのように調達されるのかは不明である。中央政府は、建設・運営・譲渡方式(BOT)を推奨しているが、それができない場合は、政府予算で賄う旨述べている。
銀行家は密かに、トルコの大手の貸し手がプロジェクトに融資するかどうかにつき疑問を呈している。
9月には、トルコの6銀行は、融資を提供する前にプロジェクトの社会的ならびに環境的影響について評価することを義務付ける国連イニシアティブ(UNEP FI)に署名した。
黒海の懸念事項:
ロシア、ウクライナ、その他黒海諸国にとって、運河は、運輸および海軍の通路に関しやっかいな問題を引き起こす。
1936年のモントルー条約で、トルコは国境内の運河については管轄権が与えられており、平和時には民間の船舶のアクセスが保証されている。同条約はまた海軍の軍艦のアクセスを制限し、黒海が軍事化するのを防ぐのに役立っている。
しかし、トルコの政府当局者は、木曜日、モントルー条約は運河には適用されないと述べた。
「イスタンブール運河は、米国の軍艦に黒海に入る道を開くことになりうる。それは、モスクワにとっては恐怖である」と、トルコの元外交官でブリュッセルのカーネギー・ヨーロッパの客員研究員であるシナン・ウルゲン氏は述べている。(1ドル = 5.9343 リラ)
ロイター