
ウクライナ·ザポリージャ:ロシアは火曜日、ウクライナの港湾都市マリウポリの最後の砦(とりで)である製鉄所へのロケット弾攻撃を再開、一時停戦の合意が破られた。国連の仲介による退避は中断し、広大な地下エリアには一部の市民が閉じ込められたままである。
先週末には、数週間にわたってアゾフスタリ製鉄所の地下で身を潜めていた数十人の避難民が、国連と赤十字の支援の下でウクライナ領ザポリージャの比較的安全な場所に辿り着いている。
「もっと多くの人が避難し、この地獄から抜け出すことができていたなら……。我々は複雑な心境を抱いている」。赤十字国際委員会(ICRC)のパスカル·フント氏は、オンラインのインタビューで記者に語った。
子どもや高齢者を含む、憔悴した様子の人々は、ロシアが現在支配権を主張しているウクライナ南東部の故郷の廃墟を脱出した後、バスに乗り込んだ。
「私たちが地下にいることは誰も知らないと思っていた。私たちは人生に別れを告げていた」と、息子と10歳の孫娘とともに2カ月間製鉄所に避難していたというヴァレンティーナ·シトニーコヴァ氏(70歳)は語った。
ロシアは、3月に首都キーウの占領に失敗して以来、ウクライナの東部と南部に最も強力な兵力を注いでいる。
また、穀物や金属の輸出に不可欠なウクライナの黒海へのアクセスを制限し、ウクライナ軍への欧米の軍事援助の供給を妨害するために、さらに西側の目標も攻撃している。
ロシア国防省は火曜日、ロシア軍がオデーサ港近くの軍事飛行場をミサイルで攻撃し、米国とそのヨーロッパの同盟国からウクライナに供給されたドローン、ミサイル、弾薬を破壊したと発表した。
「ウクライナの輝かしい時」
数千人が死亡し、都市を荒廃させ、500万人のウクライナ人を海外に非難させたこの戦争が始まってから10週間近くが経過した。ロシアのプーチン大統領は火曜日、主要なロシアの原料の輸出を阻止する計画を発表した。ウクライナを支援する西側諸国への経済的圧力を高める狙いだ。
EUは、ロシアの石油産業と銀行を対象とした新たな制裁を発表した。これは2022年末までにロシア産ガス使用量の3分の2を代替する計画であり、モスクワの軍資金を枯渇させる努力の一環であるとしている。
米国議会は330億ドルの軍事支援を検討している。英国のボリス·ジョンソン首相は電子戦装備や対砲兵レーダーシステムなど、さらに3億ポンド(3億7500万ドル)の支援を発表した。
ジョンソン首相はウクライナ議会で、「これはウクライナの輝かしい時であったと、後世に記憶され語り継がれることだろう」と述べた。これは、1940年、イギリスがナチス·ドイツに侵略され敗北する危機に直面したときの、ウィンストン·チャーチル首相の言葉を引用したものである。
フランスのエマニュエル·マクロン大統領は火曜日、プーチン大統領に電話で、ウクライナでの即時停戦と、ロシアによる黒海経由のウクライナ産品輸出の禁輸措置を解除するよう要請した。プーチン氏は、ロシアは対話に前向きであると述べたとロシア側は伝えている。
ドイツのオラフ·ショルツ首相は、プーチン氏の政策は「帝国主義的」であると述べた。また、フィンランドとスウェーデンが現在検討しているNATOへの加盟を決定した場合、両国を支持するとした。
「ロシアの大統領と政府が、他の機会に再び暴力を用いて国際法を破ることがないとは誰も考えていない」と、ショルツ首相は語った。これまではモスクワに甘すぎると非難されてきた同氏であるが、現在はロシアの石油輸入を禁止するEUの計画に対し、ドイツの支持を表明している。
研究機関「エネルギーとクリーンエアに関する研究センター(CREA)」によると、ロシアがウクライナに侵攻して以来、EU諸国はガスと石油のために470億ユーロ(474億3000万ドル)以上をロシアに支払っているという。
プーチン氏が火曜日に署名した法令に基づき、ロシア政府は10日以内に「非友好的」な国の特定の人物や団体をターゲットとした制裁リストを作成することになっている。
ウクライナへの侵攻をめぐって現代史上最も厳しい制裁を受けたロシアは、1兆8000億ドルの経済規模で、1991年のソビエト連邦崩壊以降最大の収縮に向かいつつある。
「強力な攻撃」
ウクライナの国連人道調整官オスナット·ルブラニ氏によると、幼い子どもや高齢者を含む101人の避難民が、火曜日にマリウポリからザポリージャに到着したという。
数週間にわたる地下での避難生活の中、荷物をまとめて脱出のチャンスを待っていたアリーナ·コジツカヤ氏は、「脱出できたことが信じられない。今はただ休みたい」と語った。
マリウポリは、ロシアが2月24日に侵攻を開始する前は人口40万人の都市であった。数週間の包囲と砲撃に耐え、この戦争で最も激しい戦闘が繰り広げられ、廃墟と化した街には、いまだ10万人ほどの市民が暮らしている。
ウクライナのアゾフ連隊、スヴャトスラフ·パラマール大尉は、製鉄所内から投稿したSNS「テレグラム」上で、ロシアが夜通しアゾフスタリを砲撃し、飛行機からは重爆弾を投下したと述べた。
ロイターはパラマール氏の証言を独自に確認することはできなかった。しかし、ロイターは月曜日に、ロシアのトラック搭載型ランチャーからアゾフスタリに向けて発射されたロケット弾の数々を撮影した画像を確認している。
「現時点では、装甲車、戦車、ボートでの上陸の試み、多数の歩兵による、アゾフスタリ製鉄所への強力な攻撃が進行中だ」とパラマール氏は述べた。
ロシアはその行動を、ウクライナの武装解除とファシストからの保護を目的とした「特別作戦」と呼んでいる。ウクライナと西側諸国は、ファシストの主張は根拠がなく、この戦争はいわれのない侵略行為だとしている。
ウクライナ東部のドネツク州アヴディフカ市のコークス工場に対するロシアの砲撃により、少なくとも10人が死亡、15人が負傷したと、同州知事が発表した。ウクライナ大統領府は、ドネツク州の他の地域も絶え間なく砲撃を受けていると発表した。
ウクライナのイリーナ·ベネディクトワ検事総長は火曜日、キーウ近郊の廃墟となったイルピンの町を訪問し、ロシアが戦争の戦術としてレイプを使用していると非難した。また、同氏はプーチン氏を「プーチン大統領は21世紀の主要な戦争犯罪者である」と評した。
ロシアは民間人を標的にしたことを否定し、自国軍が戦争犯罪を犯したという告発を拒否している。
ロイター