
アラブニュース
ロンドン:国連は水曜、資金供与者から8000万ドルを調達し、イエメン沖で停泊したままになっている超大型タンカーに積まれた100万バレル以上の石油を船体から降ろそうとしている。
腐食が進む全長376メートルのFSOセイファーには、合計で約114万バレルが船内に保管されていると見られる。船体は浮体式保管施設に改造された後、イエメン内戦の最中で6年間、錆が進行するまま放置されている。
国連の支援を受けた技術士らは、現在首都サヌアを占拠し、船とその積荷の所有権を主張しているフーシ派によって、建造から45年を経ている船の検査を妨害されている。イランの支援を受けるフーシ派は、船と積荷を、連合軍との交渉材料に利用している。イエメンにおける正統性回復のための連合軍が支持するのは、国際的に認められた政府である。
船が漏水を始めるか、戦争の結果として武器弾薬の打撃を受けることがあれば、紅海において前例のない環境災害を引き起こしかねないという不安が募っている。その被害は多様な海洋生態系を破壊し、20万人もの地元漁師たちの生計に影響を及ぼす可能性があるのだ。
サウジアラビア、エリトリア、ジブチ、ソマリアの海岸も影響を受ける可能性がある。そして石油が流出すれば、イエメンのホデイダ港とサリフ港に大変な混乱をもたらし、さらには港の閉鎖さえ招くかもしれない。そのような事態は同国の商業活動、そして人道支援を受ける能力を大幅に妨げることになるだろう。
石油の除去には、200億ドルを超える費用がかかりかねない。国連のイエメン人道問題調整官、デイビット・グレスリー氏による新しい構想は、そのような災害の回避を目指している。水曜に開催される会議で、国連資金供与者から8000万ドルの資金調達を試みる計画だ。
国連は、反乱軍と連合国の両方がこの計画を支持していると主張する。フーシ派は3月5日に、セイファー号から石油の荷下ろしを行うという覚書に署名した。石油は安全な船へ移した後に新しいタンカーへ移送され、反乱軍は引き続き、貨物の管理と販売を行えることが保証されている。
FSOセイファーは曳航され、廃棄される。船についての責任がフーシ派に生じることはない。
この覚書は、10年の任期を務めたアブドラッボ・マンスール・ハーディ大統領が退任してラシャド・アル・アリミ氏率いる大統領指導評議会に権限を移譲した後、イエメンで6年ぶりに始まった全土停戦の最中に締結された。
停戦のタイミングは、FSOセイファーの今後に極めて重大な意味を持つ。グレスリー氏は、超大型タンカーが「急速に腐食を進行させている」と述べ、次のように付け加えた。「漏れや爆発によって大量の石油を流出させる危険が目前に迫っている」
環境活動家団体のグリンピースはオブザーバー誌に対し、「風と海流による危険が高まり救助活動の妨げになる」10月までに、石油の荷下ろしを完了する必要があると解説した。
紛争・環境監視団(Conflict and Environment Observatory)で研究・政策責任者を務めるダグ・ウィアー氏 は、オブザーバーへ次のように語った。「FSOセイファーの脅威に対処するため国連が仲介する計画について、8000万ドルという費用見積もりに疑問を持つ人もいるかもしれない。だが大規模な石油流出の結果に対処するなら、その不作為のコストは最低でも200億ドル以上。はるかに大きな費用がかかることになる」
「世界は、月を追うごとに状況がますます危険になっていくのを見るだけだった。この緊急計画を今夏前進させるために、資金供与者から必要な金額を得られることが不可欠だ」