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GCCは2024年の挑戦に対処する態勢を整えている

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01 Jan 2024 08:01:23 GMT9

2023年中、湾岸協力会議(GCC)は世界情勢において大きな役割を果たした。その経済規模は40年間で12倍以上に成長して2兆3,000億ドルに達し、加盟国、企業、人々の収入を増大させ、成長と、世界経済へのより効果的な関わりを可能にした。

GCCはまた、この1年間で活動範囲を拡大し、戦略的パートナーシップの中身を多様化させて、特にグローバルサウスの主要国や組織との関係を構築した。1981年の設立以来、GCCは長年、加盟国間の内部統合を重視した内向きな組織だったが、2008年の世界金融危機に際し、従来の欧米との関係から始めて、対外関係の拡大に踏み切った。2020年初頭から2022年後半にかけては、新型コロナ感染症などの要因により、対外的拡大のペースを維持するのは難しくなった。

パンデミック規制が緩和されるやいなや、GCCと中国は、2019年にさかのぼる提案を復活させた。2022年12月、史上初のGCC・中国首脳会議がリヤドで開催され、約20年続いてきた両国の経済上の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすることが模索された。つまり範囲を広げて、より緊密な安全保障と政治的協調を含む、相互利益のあらゆる分野を包含することである。首脳たちは野心的な5年間の共同行動計画に合意し、中国は初めて、同地域を不安定化させるイランの行動に公に反対を表明した。

両国の経済パートナーシップは2023年に強化され、中国は引き続きGCCの最大の貿易相手国であり続けた。双方向の商品貿易規模は2300億ドルを超え、GCC貿易総額の20%以上を占めた。中国が輸入する石油輸入の30%、ガスの10%がGCCからのものである。中国は、GCCの化学製品および石油化学製品の輸出先の25%以上を占めている。2023年中、自由貿易交渉は妥結まであと一歩に迫り、双方向投資は新型コロナ感染症時の減速から回復した。

3月には前年12月の首脳会議での決定が実行に移され、中国政府は、サウジアラビアとイランが7年間の断交の後に、国交回復合意書に署名するのを見届けた。その後、中国は両国間のフォローアップ会議を主催し、新たな合意を強固にして、同地域に希望の新風を吹かせた。

さらに2023年中、中国とGCCは原子力協力に関する協議を開始し、原子力の平和利用、核セキュリティ、原子力施設の安全に注意を向けた。中国はこれらの分野における訓練、能力構築のための無制限の支援を申し出た。

中国との関係強化は、戦略的多様化に向けた大きな動きの重要な部分だった。GCCは7月、中央アジア諸国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)との初の首脳会議をジェッダで開催した。10月には、東南アジア諸国連合10か国との同様の首脳会議をリヤドで開催した。いずれの首脳会議でも、各国首脳は今後数年間の政治および安全保障対話、貿易および投資、人的交流などの指針となる共同プログラムに合意した。

9月下旬には、GCC各国外相がカリブ海諸国連合の25か国の外相たちと初めてグループで会談し、政治対話、投資、観光を包含する共同プログラムに合意した。この閣僚会議は、2024年に開催予定の首脳級会議の先触れとなった。

11月、サウジアラビアはカリブ海を拠点とする別のカリブ共同体との首脳会議をリヤドで開催したが、こちらも初めてのことだった。

こうした新しいパートナーシップを模索しながら、サウジアラビアとGCC諸国は従来の同盟関係の強化にも努めた。5月にはジェッダでアラブ首脳会議が開催され、12年におよぶシリア紛争の解決に向けた新たな試みがなされた。数か月にわたる交渉の末、シリアのアサド大統領がアラブ連盟に復帰するよう招かれた。これは、国連安保理決議2254に基づく国連の仲介による政治的解決につながる、沈静化に向けた段階的なロードマップに関するアンマンでの合意に続くものだった。

GCCと米国は、バラク・オバマ大統領時代の2015年に発表された戦略的パートナーシップの具体的な要素について話し合うため、さまざまな形式で対話を続けた。GCC諸国の外相はリヤドおよびニューヨークで米国務長官と会談し、地域・国際問題に関する政治的見解の調整を図った。

例えば、イスラエルとパレスチナの和平交渉再開の必要性や、その結果は1967年の国境線や国連決議に基づく、2つの国家の実現であるべきとの見解で合意した。

中国との関係強化は、戦略的多様化に向けたGCCの大きな動きの重要な部分だった。

アブデル・アジズ・アルワイシェグ博士

これらの閣僚会議に加え、GCCと米国の専門作業部会も開催されて再び活気づき、イラン、海洋安全保障、ミサイルおよび防空、テロ対策、貿易および投資といった問題を扱った。

9月には、サウジアラビア、EU、アラブ連盟が、エジプト、ヨルダン、その他のGCC諸国の支援を受けて、中東和平交渉の再活性化に向けた新たなイニシアチブをニューヨークで立ち上げた。続いて10月にはオマーンでGCC・EU会議が開催され、両ブロックの加盟国外相たちが、2022年2月にブリュッセルで発表された戦略的パートナーシップの進捗を確認した。EUは地域統合の成功モデルとして最も際立ってきたことから、1981年のGCC設立以来、EUとGCCは緊密な関係を維持してきた。

オマーンの首都マスカットでのGCC・EU会議は、ハマスによるイスラエル攻撃の2日後の10月9日に開催されたため、会議の大半が紛争についての話し合いとなった。白熱した議論が続いた後、2つのグループは、この問題に対するEU内の見解の多様性を考えると奇跡的ともいえる、つぎはぎだらけのコンセンサスに合意した。それは多分に、新たに確立された戦略的パートナーシップの反映だったのだろう。

GCCとEUのパートナーシップにおける新たな要素には、安全保障協力、気候変動の緩和、より深い政治的関与などがある。中東和平プロセスの復活におけるEUのパートナーシップは、海洋安全保障、サイバーセキュリティ、テロ対策、組織犯罪との戦いに関する先進的な議論と同様、新たなダイナミズムの一部だ。

ガザにおける戦争は、GCCとEUがいくつもの点で協力する必要性をさらに高めた。停戦、人道問題、そしてマスカットとニューヨークでの合意事項、すなわちこの戦争およびより広範なパレスチナ問題の政治的解決への道筋を見つけることなどだ。マスカット会議で、閣僚たちは支援調整に関する勧告を承認した。ガザでのニーズが高まり、イスラエルが支援を行き届きにくくしていたため、非常にタイムリーだった。

ガザでの戦争の影響に対処するため、GCC諸国の外相は10月17日にオマーンで緊急会議を開催した。戦争と人道支援に関する共通見解が示され、多額の新規支援が約束された。

サウジアラビアは11月、アラブ連盟とイスラム協力機構の緊急合同会議をリヤドで開催し、アラブ・イスラム諸国の首脳が出席して、戦争に関する統一見解を示した。サミットではまた、追加支援や、国際人道法違反を国際刑事裁判所に告発するための文書の作成など、ガザに対する包括的な現実的対策が打ち出された。

おそらく、アラブ・イスラム首脳会議で採択された最も重要な措置は、閣僚委員会の設置だろう。サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣が率い、エジプト、インドネシア、ヨルダン、カタール、パレスチナ、トルコの閣僚も参加する同委員会の目的は、ガザとパレスチナ問題に関する首脳会議の決定をフォローアップすることである。これまでに国連安保理常任理事国5カ国すべてや他の国々と会談し、停戦および人道的アクセスの改善を求めてきた。

GCC諸国はまた、GCC地域外の紛争調停においても重要な役割を果たしている。たとえばサウジアラビアは、米国、政府間開発機構、アフリカ連合とともに、ジェッダでのスーダン内部協議を主導した。このプラットフォームはまだ和平合意には至っていないものの、紛争の沈静化や、他国への波及防止に役立っている。

GCC諸国の経済的役割には、自らの経済成長と市場の繁栄だけでなく、世界が混乱とエネルギー不安を抱える状況下で、エネルギー市場を安定させる役割も含まれている。ドバイが2020年万博を主催し、カタールが国際園芸博覧会を開催中で、サウジアラビアがリヤドで2030年万博を主催しようとしていることは、これらの国が果たす経済的、戦略的役割の増大が国際社会に認められていることの表れだ。

大きく二極化した世界で、GCC諸国はあらゆる国々と協力関係を維持することに成功している。ロシアとウクライナの戦争についていえば、GCC諸国の外相たちはリヤド、モスクワ、キエフ、ニューヨークなどで、ロシアおよびウクライナの閣僚と個別に、またグループで会談した。GCC側は戦争調停への協力を申し出、当事国が拘束していた人質や抑留者の一部解放に成功した。GCCはまた、これらの国が穀物輸出を継続し、彼らに依存する発展途上国の食糧不足を防ぐべきことを繰り返し強く主張した。

同様に、米国がインド・中東・欧州経済回廊を提案すると、GCC加盟国のサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、先に中国の一帯一路構想に参加したのと同じように、この新しい事業にも参加した。超大国間の健全な競争は同地域に利益をもたらし、2つのイニシアチブの同居は紛争防止に貢献するだろう。

来年は、手ごわい政治的および安全保障上の挑戦がこの地域や他の地域を待ち受けていると思われるが、組織としてのGCCとその加盟国は、そうした挑戦に効果的に対処する態勢を整えている。その行動によって、GCCは平和と安定という結果のモデルを提示しており、近隣諸国はそこから学ぶことができる。イスラエルであれイランであれ、武力によって生きる道を選んだ2つの国は平和も安定も手に入れられなかったのだから。GCC諸国は、当事者すべてに関わり、調停する用意があるので、問題を抱える土地に手を差し伸べることができるのだ。

  • アブデル・アジズ・アルワイシェグ博士はGCCの政治問題・交渉担当事務次長補である。この記事に記載されている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を示すものではない。X:@abuhamad1
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