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レバノン市民とシリア難民の間で緊張が高まっていると警告 国連難民高等弁務官事務所

4月12日火曜日、ベイルート南部郊外で、パンをパン屋の前で求めて列を作るレバノン人とシリア人たち。(AP)
4月12日火曜日、ベイルート南部郊外で、パンをパン屋の前で求めて列を作るレバノン人とシリア人たち。(AP)
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31 Jul 2022 10:07:38 GMT9
31 Jul 2022 10:07:38 GMT9
  • レバノンには推定150万人のシリア難民が滞在しており、そのうち90万人はキャンプで生活する難民として国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に登録されている

ナジャ・フーサリ

ベイルート:最近の数週間、レバノンではレバノン人とシリア難民の間で暴力行為等の犯罪が相次いで発生している。

こうした衝突により、レバノンのシリア難民を標的とした差別的な論調が増加する一方、シリアの状況が難民の帰還を認めて良いほどには改善されたとの認識が広がっていることから、難民のシリアへの帰国を支持する人々の声も勢いを増してきている。

実際、レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は最近、「(もし)国際社会からの協力がないのならば、難民を不法に送還し、西側諸国に対して好ましくない姿勢をとる」と警告している。

レバノンの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はこれまで、難民を強く擁護してきている。

UNHCRは声明の中で、「難民やその他の社会的弱者の集団に影響を与える、国籍に基づく制限的慣行や差別的措置に対する重大な懸念」を表明している。

UNHCRは、「異なる集団の間の緊張の高まり、特に難民に対する暴力が、多くの地区や地域の現場において暴力行為のエスカレートに繋がっています」と指摘する。

UNHCRはまた、レバノンの経済危機は「すべての人々、特に最も弱い立場にある人々に大きなマイナスの影響を与えて」いるとし、レバノン当局に 「難民を受け入れているレバノンに国際社会が現在提供している支援は、食料の確保やその他の必要なニーズを満たす、非常に重要なものです」と警告している。

さらに、UNHCRはレバノン当局に対し「法の支配を確保し、レバノン領内に居住する人々を標的とした暴力や差別を速やかに停止すること」を要請した。

レバノンには推定150万人のシリア難民が滞在しており、そのうち90万人はキャンプで生活する難民としてUNHCRに登録されている。レバノンにいるシリア難民の大多数は、キャンプにいるか、同国内で生活・就労しているかを問わず、極めて厳しい生活環境に直面している。

その状況もさらに悪化する傾向が見られる。レバノン当局は、国内の深刻なパン不足の一因は、補助金支給の小麦を大量に消費しているシリア難民にあると主張し始めたのだ。

シリア難民がいる地域のパン屋の中には、難民に身分証明書を提示させ、他の客とは別の長い列で待たせるという隔離的な方法に頼っているところもある。順番が来ても、難民たちは1家族あたり1袋のパンしか購入することができない。一部のシリア難民がパンを買うために子どもをパン屋に行かせ、そのパンを闇市場で転売していると非難されているためだ。

レバノン北部ベカー地方のシリア国境付近の町アルサルの難民キャンプのコーディネーター、マヘル・アル・マスリ氏は、明るい展望を抱きつつ、次のように語った。「受け入れ先のレバノン人の皆さんとは食料を共有していますし、難民たちの身に何か悪いことが起きれば、アルサルの住民の皆さんが駆けつけて事態に対処してくれます」

しかし、キャンプの関係者の一人はこう漏らしている。「私たちはもうパンを買いにパン屋まで行くことはしないようにしています。今はレバノン人の怒りに触れないように、小麦粉を買ってキャンプ内でパンを焼いているのです」

レバノン進歩社会党は、「このような問題のエスカレートは憂慮すべきものであり、社会格差の拡大、貧困と人種差別を悪化をもたらす危険な方向性につながりかねません」と警告した。

その方向性はすでに現実化しつつあるように見える。29日、ベイルートのジュナーで、レバノン人男性が口論の末、複数のシリア難民に刺されて死亡した。7月19日には、やはりベイルートのミルナ・チャロウヒで別のレバノン人男性が殺害された。被害者男性は体を19回刺されていた。殺害したのは「男性がシリア難民の女性と肉体関係を持ったとして非難するシリア難民たち」だとされた。

ソーシャルメディアには、シリア難民の本国送還を求める扇情的なコメントが殺到した。しかし、後に、犯人が実は被害者の友人のレバノン人で、家族間の争いが原因で殺害したと伝えられていることが判明した。

7月21日には、南部のサラファンド地方で、13歳のシリア人少年ハレド・ハムード・アル・サレー君がレバノン人男性とその息子たちから暴行を受けた後、殺害された。

続いて7月24日、北部アッカールの難民キャンプが放火された。火が放たれたのはディアブ・ホウウェイリッドさん(43)の家で、7人の子供の父親であるホウウェイリッドさんは、2日間行方不明になった後、クラヤート(Qlayaat)の海岸で遺体で発見されていた。家族は、この難民キャンプの住人の誰かがホウウェイリッドさんの死について知っているのではないかと疑っていたという。

放火による火災はキャンプ内の90のテントのうち85に及び、キャンプの住人たちはさらなる暴力を避けるために退去を余儀なくされた。住人たちのほとんどは所持品を失ってしまった。

レバノンのイッサム・チャラフェディン暫定難民担当相は、シリア難民の送還計画について話し合うため、ダマスカスを訪問する予定だ。同相は、毎月1万5千人の難民を送還する計画を明らかにしている。送還された難民に対する多数の犯罪が報告されているため、国際機関が強制的な送還に警告を発しているのに逆らう形だ。

レバノンの難民を支援するシリアの活動家は、声明で次のように述べている。「受入地域の難民は緊張を避けようとするものです。シリア難民は、レバノン人と同様にレバノンの経済危機に苦しんでいます。送還に関する問題には、現実的な解決策が必要です。私たちはレバノン当局からの呼びかけや発言は聞いていますが、UNHCRからはまだ何も聞かされていません」

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