




キーウ:ウクライナとトルコの当局者によると、月曜日に穀物を積んだ船が安全航路協定に基きウクライナのオデーサ港からレバノンに向けて出港した。これは、5ヶ月前にロシアの侵攻によって黒海の航路が遮断されて以来、初めての出港である。
ウクライナの外相はこれを「世界の救いの日」と呼んだ。特に、輸送が中断されたために食糧不足と飢餓の危機に瀕している国にとって救いである。
この出港が可能になったのは、トルコと国連が先月、ロシアとウクライナの穀物輸出協定を仲介したためであり、これは、解決策が見えないまま悪化している紛争において珍しい、外交による突破口となった。
インフラ大臣であるオレクサンドル・クブラコフ氏は、 「ロシアによる侵略以来、最初の穀物貨物船が出港した」と語った。「今日、ウクライナはパートナーと共に、世界の飢餓を防ぐための新たな一歩を踏み出した」
シエラレオネ船籍のラゾーニは、26,527トンもの穀物を積んでボスポラス海峡を通過した後、レバノンのトリポリ港に向かう。
2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、世界的な食糧・エネルギー危機を招き、国連は今年に入って何度も飢饉が起こる危険性を警告している。
ロシアとウクライナは世界の小麦輸出量の3分の1近くを占めている。しかし、ロシアに対する西側の制裁とウクライナの東海岸沿いでの軍事行動によって、穀物船の安全な出港が妨げられていた。
今回の協定は、オデーサ、チョルノモルスク、ピブデニに出入りする穀物船が安全な通航できるようにすることを目的としている。
ウクライナのドミトロ・クレーバ外相はツイッターで、「数ヶ月に及ぶロシアによる封鎖の後、ウクライナの穀物が初めてオデーサから出荷され、世界中の、特に中東・アジア・アフリカの友人たちにとっての安堵の日となった」と述べた。
ロシア政府は食糧危機の責任を否定しており、輸出が滞ったのは西側の制裁によるものであり、港に近づくことを妨害したのはウクライナであると非難している。ロシア政府はラゾーニの出港を「非常にポジティブな」ニュースであると述べた。
トルコのフルシ・アカル国防相は、ラゾーニが火曜日の午後にイスタンブール沖に停泊し、ロシア、ウクライナ、国連、トルコの代表からなる合同チームによる検査を受けると述べた。
「その後、問題が生じない限り続行されます」とアカル氏は述べた。
ラゾーニの出港に先立ち、ウクライナ大統領官僚は、黒海の港に17隻の船が停泊しており、その約60万トンの積荷のほとんどが穀物であると発表した。クブラコフ氏によると、さらに多くの船舶がそれに続くという。
ラゾーニの見習いエンジニアであるアブドラ・ジェンディ氏は、オデーサでの長期滞在が終わり移動できることを乗組員全員が喜んでいると語った。シリア人のジェンディ氏は、1年以上家族に会っていないという。
「包囲攻撃と砲撃による危険にさらされた後、母国に戻れることになった今、何とも言えない気持ちです」と彼は語った。「空爆によっていつ何が起きるかわからない状態でいるのは、非常に恐ろしいものです」
ジェンディ氏はこれからの航海について、「海軍の機雷があることが怖いです。海域を出るのに2、3時間かかります。何も起こらないこと、いかなる過ちも犯さないことを望みます」と述べた。
キーウの米国大使館は航行再開を歓迎して、「閉じ込められていた何百万トンものウクライナの穀物を世界中の人々に供給するために、この協定が引き続き実行されることを世界中で見守っていきます」と述べた。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、今回の輸送が大量輸送の第一歩になることを期待すると述べた。
ウクライナの穀物輸出が大規模に再開されるのではないかという期待から、シカゴの小麦とトウモロコシの価格が月曜日に下落した。
南部と東部での爆撃
穀物輸送が回復したにもかかわらず、他の地域では消耗戦が続いた。
ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事によると、ロシアの砲撃によってドネツク州ではこの24時間で民間人3人(バフムトで2人、ソレダル近郊で1人)が死亡した。
工業都市であり交通の要所であるバフムトでは、クレムリン軍がドネツク全域を占領しようとしているため、この1週間ロシアの砲撃を受け続けている。
そこは、ロシアにほぼ占領されているルハンスク州のリシチャンスクとシエビエロドネツクの町につながっている。ルハンスク州のセルヒイ・ガイダイ知事は、この道路はシエビエロドネツクで戦っているウクライナ人に武器を届け、その地域から人々を避難させるために不可欠だと述べた。
オレ・シネグボフ地方知事は月曜日に、ロシアとの国境近くにあるウクライナ第2の都市ハリコフ市もロシア軍の攻撃を受けたと述べた。民間人2人が負傷したという。
ロシアは戦争初期に首都キーウの早期攻略に失敗した後、ウクライナの東部と南部に軍を向け、ドネツクとルハンスクからなるドンバス地方の占領を目指している。
ロシアのミサイルは日曜日、ミコライウを攻撃した。ミコライウは、黒海のバグ川河口にある港であり、大半をロシアが占領しているケルソン地方に接している。
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアがドンバスから、南部のケルソンとザポリージャ地方に、一部の軍を移動させていると述べた。
ロシアは2014年にクリミアを併合したが、ウクライナ政府によると、ロシア政府はドンバスで同じことを行い、南部のクリミアにつなげようとしているという。ロシアの支援を受けた分離主義者は、侵攻前にこの地域の一部を支配していた。
同じく月曜日、ウクライナの国防相は、ウクライナ政府が米国製の高機動性火砲用ロケットシステム (HIMARS) 4基をさらに米国から受領したと発表した。3基目の多連装ロケット砲(MARS II MLRS)もドイツから到着した。
今回の紛争で形勢を逆転させようとしているウクライナは、より射程距離の長い武器を供給するよう西側諸国に懇願している。
ロシア政府は、西側諸国がウクライナにさらに多くの武器を供給することで紛争を長引かせていると非難しており、より射程距離の長い武器を供給することは、ロシアが自国の防衛のためにウクライナ領土の支配を拡大しようとすることを正当化するものだと述べている。
ロシアは、隣国を非武装化させるための「特別作戦」と称してウクライナに侵攻した。ウクライナと西側諸国はこれを、戦争の根拠のない口実として退けてきた。
ロイター