ウィーン:イランの核開発を抑制することを目的とした2015年のイラン核合意を救うための協議において、欧州連合(EU)が「最終文書」を提出したのを受け、イラン政府は8日、その提案の見直し作業を行っていると述べた。
英国、中国、フランス、ドイツ、イラン、ロシア、さらに間接的に加わる米国は4日、ウィーンで協議を再開した。協議はそれまで数ヵ月間、中断したままとなっていた。
欧州の高官は同日、EUがこの核合意復活のための協議の場で「最終文書」を提出したと明かした。同高官は匿名を条件に、「我々は4日間作業を行った。本日、その文書は審議中となっている」と報道陣に述べた。
「文書についての交渉は終了し、最終的な内容となった。再交渉は行われない」(同高官)
「ボールは既に各政府のコート上にあり、我々は何が起こるかを見守ることになる」。同高官はこう付け加えた。「もう誰も、ウィーンには留まっていない」
また、同高官は、「この質の高い内容の文書が、数週間以内に」受け入れられることを望んでいる、とも述べた。
一方、イランは、この25ページにわたる文書を精査中だと述べた。
イラン国営通信「IRNA」は、同国外務省関係者の発言を匿名で引用し、「我々はその提案を受け取ると直ちに、我々としての最初の反応と考察を先方に伝えた」と報道した。
加えて、「ただし、当然ながらそれらの項目については総合的な検討が必要であり、追加的な見解や考察を今後、伝えていくことになる」とも報道した。
7日、イランは国連の核監視団に対し、未申告施設にある核物質に関する疑問を「完全に」解消するよう要求した。
イランの関係筋は、同国の未申告施設で発見された核物質の痕跡に関する国際原子力機関(IAEA)の調査が、主な障害になっていると示唆した。
前述の欧州の高官は、この調査は、2015年のイランの核問題に関する共同包括行動計画(JCPOA)の合意、いわゆるイラン核合意とは「何の関係もない」と述べ、次のように続けた。
「イランとIAEAが合意に達することを望んでいる。そうなれば、多くのことが容易に進むからだ」
国連保護下にあるIAEAの理事会は6月に決議を採択し、イランの未申告の3ヵ所の施設で濃縮ウランの痕跡が見つかった際、十分な説明をしなかったとして同国を非難した。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は7日、「我々は、IAEAが無関係で非建設的な政治的問題から距離を置き、技術的な見地から残りの保障措置問題を完全に解決すべきだと信じている」と述べた。
軍備管理協会(Arms Control Association)の専門家であるケルシー・ダベンポート氏は、JCPOAを復活させるためにIAEAの調査を放棄することに対して警告した。同氏は調査について、「イランの核兵器への道を検証可能な形で阻止するための最も有効な方法」だとした。
また、同氏はツイッターに、米国と2015年合意の他の署名国が国連機関であるIAEAを支持しない場合、それは「IAEAの任務とより広範な核不拡散の目標を毀損する」ことになる、と書き込んだ。
EUが調整して行うJCPOA復活のための交渉は2021年4月に開始され、今年3月に膠着状態に陥った。
2015年の核合意は、イランが核兵器を開発できないことを保証するため、イランの核開発プログラムを抑制することと引き換えに、イランへ制裁を緩和する内容となっていた。イランは核兵器の開発について、これまで常にその願望はないとしてきた。
しかし、2018年、米国が当時のドナルド・トランプ大統領の決断により核合意から一方的に離脱し、再び厳しい経済制裁を課したことで、イランは自らの誓約を反故にし始めた。
AP