Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • エジプトの教会火災、世界から悲しみと同情の声が相次ぐ

エジプトの教会火災、世界から悲しみと同情の声が相次ぐ

コプト正教会によると、火災が発生したのはギザ北部のこの教会で聖体礼儀が行われていた時だった。(AFP)
コプト正教会によると、火災が発生したのはギザ北部のこの教会で聖体礼儀が行われていた時だった。(AFP)
Short Url:
16 Aug 2022 06:08:41 GMT9
16 Aug 2022 06:08:41 GMT9
  • ギザ県のアブ・シフィン教会で日曜日の礼拝中に火災が発生し、41人が死亡した
  • エジプトだけでなくアラブ世界・イスラム世界全体から哀悼が寄せられた

アラブニュース

カイロ:日曜日、カイロのインババ地区(ナイル川の西にある労働者階級が多く住む地区)のアブ・シフィン教会で火災が発生した。現場には濃い煙が立ち込め、叫び声で騒然となった。

このコプト教の教会には5000人以上が厳かな礼拝のために集まっていたが、彼らの多くは窓から通りに飛び降りなければならなくなった。

救急隊が駆けつけ鎮火した時点で、15人の子供を含む41人が死亡し、14人が負傷していた。

その日のうちに、カイロのギザ県の2つの教会とその周辺に数百人が集まって哀悼の意を示し、聖職者が犠牲者に祈りを捧げた。

コプト教会は中東最大のキリスト教コミュニティーだ。(AFP)

棺を担いだ人々が、泣きながら棺に触れようと手を伸ばす弔問客をかき分けて進んでいった。アブ・シフィン教会の司祭であるアブデル・メシフ・ベクヒト神父の棺もあった。

コプト正教会の先の声明によると、火災が発生したのはギザ北部のこの教会で聖体礼儀が行われていた時で、数人の礼拝者がインババとアグーザの病院に搬送された。

翌朝、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、火災を受け「国家機関を全て動員した」と述べた。その後、コプト正教会の長である教皇タワドロス2世に「電話で哀悼の意を伝えた」ことを明らかにした。

また、大統領府の声明によると、大統領は軍工学局に対し、教会の「再建・修復を引き受ける」ように指示した。

火災の目撃者によると、複数の階があるこの教会内に残された人たちを助けるために駆け込んだ人たちもいたが、すぐに熱と凄まじい煙に圧倒されてしまったという。

「皆が子供たちを建物から運び出していました」と、教会の隣に住むアーメド・レダ・バイユーミーさんは話した。「でも、火が大きくなっていって、入ると窒息してしまう状態になりました」

別の目撃者のサイード・タウフィクさんはAFP通信に対し、「火から逃れるために窓から飛び降りる人もいました」と話した。彼はへこみのある自動車を指差し、「あそこに飛び降りた人は、腕と背中を骨折して入院しています」

検察庁の声明によると「目立った外傷が見られない」ことから、死因は窒息とみられる。

エジプト内務省は、「法科学的な証拠から、教会の2階の空調設備から出火したことが判明した」と発表した。この教会には社会福祉サービスの事務所もあった。

近くの教会のファリド・ファーミー神父によると、火災の原因は電気系統のショートだという。

「停電中だったので発電機を使っていました」と彼は言う。「電気が復旧した時に過負荷になったのです」

数百万人が非公式の居住区に住む雑然とした都市であるカイロでは、事故による火災は珍しくない。昨年には、首都郊外の衣服工場で火災が発生し、少なくとも20人が死亡した。

死因は窒息だった。(AFP)

アブ・シフィン教会の火災を受け、ギザ県知事は「犠牲者の遺族に5万ポンド(約2600ドル)、負傷者に1万ポンドの緊急支援」を提供するよう指示した。

ハマダ・エル・サウィ検事総長は、検察当局による火災の調査が完了し、犠牲者の死因が煙の吸引による窒息であったことが判明したと発表した。

内務省は、教会2階の空調設備の電気系統のトラブルが出火原因であることを確認した。教会には多数の教室があった。

エジプトのモスタファ・マドゥーリー首相は社会連帯相に対し、犠牲者の遺族に10万エジプトポンド、負傷者に最高2万エジプト・ポンドの補償金を支払うよう指示した。

コプト教会は中東最大のキリスト教コミュニティーで、イスラム教徒が大多数を占めるエジプトの人口1億700万人の約10%を占めている。彼らの典礼言語はファラオの言語に直接由来しており、彼らは自分たちが元来のエジプト人であると主張している。コプト教徒の多くは古代エジプトまで系譜を辿ることができる。

当局によると、出火したのは2階の空調設備だった。(AFP)

多くの人にとって、今回の火災はイスラム過激派による攻撃の痛ましい記憶を蘇らせた。2016年にはカイロ最大のコプト教会で爆発があり、25人が死亡した。2017年には別の教会が銃撃され、礼拝者9人が死亡した。

コプト教徒は、エジプトの長い歴史の大半を通して、調和の時代と逆境の時代の両方を生き抜いてきた。20世紀には、多くの人が政治参加から排除された。教会の建築・修復を制限する法律を遺憾に思う人たちもいた。

2014年に当選したエルシーシ大統領は、コプト教会のクリスマス礼拝に毎年出席する初めての大統領となった。2月には、エジプトの司法府の最高機関である最高憲法裁判所の裁判長に、史上初めてコプト教徒の判事を任命した。

エジプトのイスラム教関係者も、悲しみに暮れるコプト教会コミュニティーに哀悼の意を表した。

アル・アズハルのグランド・イマームであるアフマド・アル・タイーブ師は、犠牲者遺族への支援を約束し、様々なNGOと現金給付の調整をしている。また、教皇タワドロス2世に支援のメッセージを送った。

このコプト教の教会には5000人以上が厳かな礼拝のために集まっていたが、彼らの多くは窓から通りに飛び降りなければならなくなった。(AFP)

「この悲劇的な事故に際し、アル・アズハルとその学者や長老たちは皆、兄弟たちと共にある。また、犠牲者の御家族に謹んで哀悼の意を表する」とアル・タイーブ師は述べ、「アル・アズハルの病院が負傷者を受け入れる用意がある」ことを確言した。

今回の悲劇に対し、エジプト全国や世界から支援が相次いだ。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、犠牲者遺族に「心からお悔やみ申し上げる」と声明を出した。

サウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は、エルシーシ大統領と犠牲者遺族に哀悼の意を表した。両者は「深い悲しみと心からの同情」を表明し、負傷者の「一刻も早い回復」を祈ると述べた。

UAEの指導者らは、犠牲者家族とエルシーシ大統領のために祈りを捧げた。シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領とシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム首相は、火災で負傷した人々が順調に回復することを願うと述べた。

バーレーンの首相であるサルマン・ビン・ハマド・アール・ハリーファ皇太子殿下は、エルシーシ大統領とマドゥーリー首相に哀悼の意を表した。

悲劇を受け、アラブ地域の指導者らは哀悼の意を表した。(AFP)

ヨルダンのビシェル・ハサーウネ首相は、エジプト政府、エジプト国民、犠牲者遺族に「哀悼の意と同情」を表明した。

チュニジアのカイス・サイード大統領は事件を受けてエルシーシ大統領に電話して哀悼の意を伝え、負傷者の一刻も早い回復を祈ると述べた。

イスラム協力機構(OIC)のヒセイン・ブラヒム・タハ事務局長は同情を表明した。

同事務局長は、エジプトと連帯して悲劇的な状況を乗り越えるための支援を続けていくことを強調した。

特に人気
オススメ

return to top